クールビズの定着に伴って、ジャケットを着ずにパンツとシャツ姿で仕事が可能な職種は、この10年で大幅に増えた。だから本来なら、もっとパンツのディテールについて意識を持ってもらいたいなぁ……などと私はついつい思ってしまう。ジャケットを着ていれば隠せる部分が結構、露出してしまうのだから。
例えばベルトを通す穴=ベルトループの数が、パンツの種類で結構異なることはもっと知られていても良い気がする。実はメンズのものだけでも以下のように6種類もある! そしてこれに気付くと、どんな種類のパンツを買うべきか・穿くべきかの最適解を、自然に導き出せるようになるからだ。
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A.全くなし:モーニングやタキシードのようなフォーマルウェア的要素の濃いパンツは、本来はベルトの代わりにサスペンダーで吊って穿くものなのでこの仕様が最適解。ベルトを使う際の宿命=ズリ落ちをサスペンダーだと防げると共に、折り目もよりシャープに見せられるからだ。対照的にスポーツテイストの濃いパンツでも、この仕様のものが稀に存在する。こちらは多分腰回りをスッキリと見せたいからだろう。あと、ゴムや紐で固定するパンツもここに入るか。
B.5つ:左右に2対+背中心に1つ付けたもの。ジーンズやチノーズのようなワークウェア・ミリタリーウェア起源のものは、大抵これ。あくまで必要最小限。大量生産が前提のこれらは、ベルトループを1つ足すか否かで生産性やコストが大きく変わってしまうので、この選択には納得できる。また、それが増えるとフィット感が高まると共に腰回りへの拘束性も強まるが、ジーンズやチノーズにそこまで厳密な装着感を求めるのも野暮というもの。
C.6つ:左右に3対付けたもの。今日のドレスパンツで最も多いのが、既製品では恐らくこの仕様だろう。コストと見た目のスッキリさ、それにフィット感とのバランスが取りやすいからかもしれない。
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D.7つ:左右に3対+背中心に1つ付けたもの。私の記憶が正しければ、1990年代前半まではこれが既製品のドレスパンツでは主流だったはず。特にアメリカントラッドを意識したブランドのパンツは9割方これだった。バブル崩壊以降のコスト削減意識の拡大や、その頃から人気が急上昇して来たクラシコイタリア系のパンツが6つだったことで、いつの間に少数派になった感もある。面白いところでは、ジーンズでも米・ラングラーの定番モノは、5つではなくて実はこれ。ラングラーはカウボーイ、つまり馬に乗る人の為のジーンズを起源に持つので、暴れ馬に跨ってもフィット感を維持すべくこの仕様としたのだろう。
E.8つ:左右に4対。今日既製品ではあまり見掛けないが、もともとはこの数が主流だった。その証拠と言う訳でもないが、オーダーメードのパンツでベルトループ仕様を選択すると、何も言わないと普通はこれになる。腰周りをベルトでキチンとホールドするには、ベルトループはやはり多い方が有利だからだ。
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F.9つ:左右に4対+右の前腰に1つ付けたもの。これは恰幅の良い方のパンツに結構見られる。腰と言うより腹部のホールド感を高めるための、ありがたい工夫である。
ということで読者のみなさん、いま穿いているパンツのベルトループの数を早速チェック! どの数が多いかで、自分のファッション嗜好も見えて来る筈ですよ!