androp×Creepy Nutsが語る、ジャンル越えたコラボの意義「普通だと思ってることが新鮮になる」

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2017年08月18日 12:33  リアルサウンド

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 2016年に自身のレーベル<image world>を立ち上げてアルバム『blue』をリリース、今年に入ると映画『君と100回目の恋』への楽曲提供やシングル『Prism』を発表し、全国ツアー『one-man live tour “angstrom 0.8 pm”』を回ったandrop。彼らが8月23日に、Creepy Nutsを迎えた最新シングル『SOS! feat. Creepy Nuts』をリリースする。


 ロックバンドとヒップホップユニットがジャンルを越えてタッグを組んだこの曲は、「夏好き」のandropと「夏嫌い」のCreepy Nutsという2つの立場を登場させることで、「すべては自分の気持ち次第」という普遍的なメッセージを表現したサマーチューン。『one-man live tour “angstrom 0.8 pm”』のセミファイナルとなる7月4日の恵比寿リキッドルーム公演にCreepy Nutsが飛び入りする形で初披露し、その世界観を拡張したユーモア満載のMVも話題となっている。今回はandropとCreepy Nutsのメンバー全員に集まってもらい、コラボレーションに至った経緯や楽曲に込められた様々なアイディア、そして「今の時代にジャンルを越えてアーティストがコラボレーションをする意義」について語ってもらった。(杉山仁)


■「Creepy Nutsと一緒でなければこんな発想にはなっていなかった」(内澤)


――そもそも今回のコラボレーションは、どういうきっかけから始まったものだったんですか?


R-指定:実はCreepy NutsがCDをリリースする前、フリーライブを駅前でやっていたときに、前田くんが観に来てくれたんですよ。


前田恭介(Ba/以下、前田):僕はもともとR-指定を「UMB(ULTIMATE MC BATTLE:R-指定は史上初の三連覇を達成)でめっちゃ強いヤツ」という感じで認識していて。そこから「どんな曲をやっているのかな」と調べる中でCreepy Nutsを知って、家の近所でやっていたフリーライブに行ったんです。そのときに「CDも買おう」と物販に並んだんですよ。高校生がたくさん並んでいる中に、髭を生やしたおっさんがひとり……(笑)。それでCDを2枚買ったんです。


DJ松永:普通に物販に並んでくれたんですよ(笑)。当時はまだCD-Rでした。


――めちゃくちゃいい話ですね。


前田:そのときにちょっとお話して、一緒にご飯も食べに行くような仲になって。「いつか一緒にできたらいいね」という話はしていたんです。


佐藤拓也(Gt/以下、佐藤):andropのメンバーの間でも「いつか一緒にやりたいね」という話はずっとしていて、去年からタイミングが合えばと、具体的に話が進んでいました。


内澤崇仁(Vo&Gt/以下、内澤):とはいえ、飲み会でもそうですけど、「いつか」と言ってもなかなか実現しないことって結構ありますよね。それが今回ちゃんと形になったのは本当によかったです。


――去年というと、andropが自分たちのレーベル<image world>を立ち上げた頃と重なりますね。それも今回のコラボが実現したことに関係があったと思いますか?


内澤:もともと僕らがレーベルを立ち上げたのは、もっと面白いことをしたい、これまでやっていないことにチャレンジしたいという気持ちが強かったからなんです。それに、聴いてくれる人に驚いてもらいたいという想いも強かったので、「Creepy Nutsと一緒にやりたい」というのは、そういう僕らの想いにすごく繋がっていることですね。


――そして今回の「SOS! feat. Creepy Nuts」が完成したわけですが、この曲はまず、「夏好き」と「夏嫌い」によるサマーチューンになっているところがとても面白いですね。


R-指定:最初の打ち合わせのときは「アホなことをやりたいよね」と言ってたんですけど、どういうものになるのかは全然見えてなくて。その中で「サマーソングを作りたい」という話が上がってきて、「いや、俺らは夏はちょっと……」となったんですよ(笑)。


DJ松永:そもそも、Creepy Nutsはサマーソングを作ったことがなかったしね。


R-指定:そうそう。それで、「僕らはあまり夏を楽しむような感じでもなかったんで……」と話したときに、「じゃあ『夏好き』と『夏嫌い』の両方の視点を入れればいいんじゃないか?」という話になって。ただ、「じゃあandropのみなさんは、夏はどうですか?」って聞いてみたら、最初は「いや、俺らもあまり……」って(笑)。


松永:ネアカな人間がひとりもいなかった(笑)。


――つまり、曲を面白くするためにお互いが「夏好き」「夏嫌い」を担当した、と。


R-指定:そうです。ただ、俺の場合は別に夏が嫌いというわけではなくて、浴衣でデートもしたいんですよ。だって、考えてみてくださいよ。夏が嫌いと言ったって、可愛い子に「夏祭り行こうよ」って言われたら、「お、おう……!」ってなるじゃないですか。


DJ松永:その楽しみを知ってるけど味わえないから嫌いだった、という話ですよね。楽しそうだけど、自分は味わえないから「ウンッ!!」みたいになる。


R-指定:(笑)。俺らが中学生ぐらいの頃で言うと、ORANGE RANGE、ケツメイシ、湘南乃風、RIP SLYMEのサマーソングが、「夏は楽しいぞ!」と伝えていて。「夏ってこんなにエロいんや」って、「ロコローション」のMVで思ったりしてました。そうやって「夏はエロいことができる」と信じ込まされたのに、「できへんやんけ! 話が違うぞ!」と。


DJ松永:うん、それはキレるよ。それは。


R-指定:(笑)。それで怒ってるんですよ、この曲の主人公は。


――今回の「SOS! feat. Creepy Nuts」にも、「人によって様々な夏があって、何を選ぶかはその人次第だ」というメッセージが込められていると思いますが、このテーマも話し合いの中で出てきたものだったんですか?


佐藤:歌詞に関しては、内澤くんとRくん(R-指定)の2人が最初にメールでやりとりをしたんです。


R-指定:その中で、「夏で盛り上がる」側と「いや、夏はそんなに……」という側を対比するぐらいのイメージだったものに、内澤さんが「(S)サウンズ(O)オブ(S)サマー」みたいに「SOS」のイニシャルで遊ぶフレーズを入れてくれて。そこに僕が(夏を擬人化して)「夏が思い上がってる」という視点を加えました。あいつは自分がみんなに好かれてると思ってて「俺、到来!」みたいな感じでやってくるから、「それに対して文句を言いますね」とすり合わせていった感じです。


――「サウンズオブサマー」以外にも、「(S)サルで陽気なサウンズ(O)お腰振り(S)サマー」など、色んな歌詞が「SOS」とかかっていて、細部まで工夫されていますよね。


内澤:実は「SOS」という言葉自体にもともと意味はないらしくて、モールス信号で打ちやすいから「SOS」が広まったそうなんです。だったら、「SOS」は助けを求めるために使う言葉だけど、そこに真逆の意味をつけるのも面白んじゃないかと思ったんです。「サウンズオブサマー(=夏の音)」が「SOS」の略語になっていたら面白いな、と。そこから、他の部分も「SOS」ではじまる言葉で構成していきました。


――Creepy Nutsとのコラボだからこそ、韻を意識した部分もありましたか?


内澤;そうですね。歌詞も、冒頭でサンプリング(「ツァラトゥストラはかく語りき」)を使ったこともそうですけど、Creepy Nutsと一緒でなければこんな発想にはなっていなかったと思うので、それはすごく大きかったと思います。


■「Creepy Nutsは自分たちの音楽性やソウルを大切にしている」(伊藤)


――一方、R-指定さんも夏のモチーフをたくさん引っ張ってきています。


R-指定:俺の考える夏感を持ってきました。一見「ウェーイ!!」って楽しむ夏に馴染めないやつが文句を言ってるような構成ですけど、その楽しめないで文句を言ってること自体が、実は「SOS」の信号なんですよね。それで最終的には「誘えよ!」って言うという(笑)。


内澤:Rくんのバースは色んな方向に聴き手を連れて行ってくれるというか、ストーリーや情景が変わっていくような雰囲気で、すごく勉強になりました。僕らは他のアーティストと一緒にやることも少ないですし、僕個人としても歌詞の共作はやったことがなかったので、ストーリーの展開の仕方や言葉のチョイスにものすごく刺激を受けました。


佐藤:最初に2人が書いた歌詞を聴かせてもらったときは、(演奏に対して)「こういう感じで言葉が乗るんだ……!」と衝撃を受けましたね。ちゃんと読みこんでいくと、色んな工夫があって何度も考えさせられるので、なるほどなぁと。しかも、その日のうちに内容がどんどん変わっていって、歌の部分もその場で話し合って変わったんですよ。


R-指定:掛け合いのところは、最後にみんなで考えました。もう夜中だったんですけど、最終的に内澤さんと僕とで「それじゃあ大きな声で、みんな騒げー!」みたいなものも録って、それを聴き返して爆笑したりして。


佐藤:「果たしてこれはいいんだろうか……?」ってね(笑)。そうやって色んなパターンを録ったんですけど、一番勢いがある最初のパターンに落ち着きました。最初は曲の中でラップとメロディが交互に出てくるだけだったんで、「一緒に絡む部分があった方が面白いよね」という話になってできたパートですね。Rくんが、「『(S)さっきから(O)お前(S)シラケてね?』って面白くない?」と言ってくれて。これも頭文字が「SOS」なんですよ。


R-指定:それで最終的に、2組が対峙して、一緒に夏を楽しむ歌詞になりました。


――そしてサウンド面でも、andropとCreepy Nutsの違いが綺麗に表現されています。


DJ松永:歌詞で内澤さんとRの主張が真逆になっているんで、サウンド面でも違いをつけられたらと思ったんです。僕のバースは、andropらしい爽やかで夏っぽいサビの雰囲気から一気に落として、冷たい雰囲気にするためにがっつり打ち込みにしました。実はデモを聴いた時点で、「もう触らなくてもいいんじゃないか」とも思ったんですけど(笑)。


R-指定:最初のデモからよかったよね。僕らは「アホなことをやりたい」というテーマがあったとしても、最初は「andropの世界観での『アホなこと』って、どんなものかな?」と思っていて。それが、デモの再生ボタンを押した瞬間に「ターンターン、タ、ター!!」って「ツァラトゥストラはかく語りき」が流れて「おお、アホや!」と(笑)。俺らはそこから爽やかなメロディが来てからのバースなので、それをどう壊していくか、汚していくかを考えました。松永さんのトラックは、かっこいい爽やかなサビの後に、夏を楽しもうとしているやつの後ろをつかまえてガーッと引っ張るような音の沈み方になっていますよね。


――ファンキーさはあるものの、夏感を出し過ぎない絶妙なバランスで。だからこそ、andropが担当した夏っぽくて爽やかなサビが活きるようにも感じます。


内澤:そうですね。僕らは僕らで、自分たちがこれまでやってきた核もちゃんと伝わるようにしつつ、振り切れていきました。Creepy Nutsが変えてくれたトラックに刺激を受けて、僕らの方でもまた変化させて――。それを繰り返して最終形になったので、タッグを組んでいなければこうはなっていなかったと思います。


――今回の作業は、お互いの魅力をより深く知る機会にもなったんじゃないですか?


R-指定:もちろんです。andropの音楽には、デモを聴いた時点で歌詞が乗っていなくても「いい曲になるだろうな」と分かる、意味や理屈がなくてもかっこいい作曲の素晴らしさを感じたし、バンドで演奏したときに、それが生きた音楽になるのもすごいと思いました。


内澤:お互い畑が違うので、Creepy Nutsの2人が普通だと思っていることが、実は僕らにとって新鮮だったりもして。たとえば、現代の技術だと一行だけを差し替えて歌うことも可能なのに、Rくんは全体のノリを俯瞰して見ていて、納得できない箇所があったら、もう一度全部を録り直すんです。「これは俺たちの今までの考えにはなかったものだな」と感じましたね。「確かに全体のグルーヴってあるよなぁ」と。


佐藤:あと、お披露目としてリキッドルームで「SOS! feat. Creepy Nuts」を一緒に演奏したときは、ぶっつけ本番だったんですよ。でも、2人は「マイクとミキサーさえあれば、現地のターンテーブルでいいよ」という感じで。バンドの場合は楽器と色々なスタッフの支えがあってようやくライブができるので、それもすごいと思いました。ライブも完璧に決めてくれるんですよ。


R-指定:逆に、俺らには生音の迫力は出せないんで。「ジャンッ!」って弾いた音や「ダンッ!」って叩いた音が会場に広がる感じや、その音に負けない歌声は、絶対に出せないんです。リキッドからの帰り道も、ずっとその話をしてました。andropのみんなは「身ひとつでかっこいい」って言ってくれて、俺らは「いやいや、楽器も弾けないですし」って。


伊藤彬彦(Dr/以下、伊藤):Creepy Nutsの2人は音楽からイメージするより物腰が柔らかいし、柔軟なのも印象的でした。僕らはコラボレーションが初だったので緊張していた部分もあったんですけど、本当に話しやすくて。でも、いざ音楽を作るときにはすごく芯を感じたし、自分たちの音楽性やソウルを大切にしていることが、音にも表われていますよね。それに、Rくんのメッセージ性って突き放すだけではなくて、それは僕が内澤くんに感じる魅力とも似ているんですよ。だから、表現方法は違いますけどお互いに似た部分を感じたし、初めてのコラボレーションとして最高の相手だったと思いますね。


■「『事故的な出会い』みたいなものは、より一層大切になっている」(R-指定)


――逆に、「SOS!」を通して、自分たち自身の新たな可能性に気づいた部分もありましたか?


佐藤:それはやっぱり、MVですね(笑)。andropのアートワークはこれまではロゴもフォントも統一されていましたけど、今回はせっかくなので、「突き抜けてアホなことをやってみよう!」と思ったんですよ。


R-指定:その結果、本来破天荒であるはずのヒップホップアーティストの方が「こんなことやっていいんですか?!」と、andropを心配するという(笑)。リキッドで一緒に初披露したときに、お客さんがめちゃくちゃ盛り上がってくれたのはすごく嬉しかったですね。


DJ松永:「サプライズ・ゲストが来てくれました!!」と紹介されて会場が「スンッ」ってなったら「もう死んじゃう……」と思っていたら、お客さんもめちゃくちゃ温かかったんです。


R-指定:今回のコラボは、僕らも普段は開けない引き出しを開けてもらった感じがありました。「夏の曲を作ろう」って言ってもらわなかったら、僕らが夏の曲を作ることはなかったと思うし、それはいつもは踏み入れていない領域に行けたということだと思うんで。サマーソングという、アーティストが誰でも通る道の筆おろしを手伝ってもらった感じですね。「ほら、ここだよ。こうするんだよ」って(笑)。


DJ松永: andropのみんなに筆おろしてもらったニュアンス? 初めてが6Pだった……。


R-指定:(笑)。ヤンチャな先輩に「俺の友達にすぐヤレる女いるで」って紹介してもらった感じかな。その女の子も「何こいつ〜?」みたいな感じで、でも「やってやれよ」みたいな。で、「ここでいいんですか?」「バカ、ちげーよ。こっちだよ」って。


佐藤:何の話をしてるんだよ(笑)。


前田:(笑)。ただ、俺たちも感覚としては一緒でしたよ。これまでブランディングをきっちりして色んなものを守ってきた中で、今回はCreepy Nutsを言い訳にさせてもらって、これまで行けなかったところに行けた。それは、4人だけじゃ絶対にできなかったことなんで。


松永:ああ、嬉しいです。結果、今回のアーティスト写真も、どっちのカラーでもないんですよね。andropの感じでも俺らの感じでもなくて、「これ何だろう?」って(笑)。


――全員がまだ行ったことのない場所に行けたことの象徴かもしれません(笑)。


R-指定:あと、今回のプロジェクトは、めちゃくちゃヒップホップ的だと思いました。MV撮影もまさにそうで、前日に、「明日打ち合わせで、明後日撮影」という感じで、内容がノリで決まっていったんです。「言うても、明日打ち合わせて、明後日はリハーサルで、本番は一週間後でしょ?」と思っていたら、「本当に明日撮ります」って(笑)。


佐藤:松永くん、ずっと嫌そうだったよね(笑)。


DJ松永:いや、マジで寒かったから……。僕はスーツなんで、濡れた長袖が全然乾かなくて、「これは!! 死ぬ!!!!」と思っていたんですよ。(オフィシャルのアーティスト写真を見ながら)これ、MV撮影の最後に撮ったんですけど、僕は笑ってるわけじゃないんです。むしろ表情筋を動かすことで体を温めている……。


R-指定:この写真自体がまさに「SOS」だった、という(笑)。あと、現場についたらandropのみんながあの衣装でノリノリで、めっちゃ笑いました。僕らも撮影しているうちにテンションが上がって、当日はひどい嵐だったんですけど、最後はやけくそで盛り上がりましたね。現場では「寒い」「痛い」って言ってたけど、めちゃくちゃ楽しかった。


DJ松永:いい思い出になったよね。僕は数年ぶりの海がこれですよ!


佐藤:今回は「ひと夏の思い出を作ろう」というテーマでもあったので、撮影自体がまさに夏の思い出になっているんです。勢いがなかったらできなかったよね。一週間考えていたら、「やっぱりやめよう」ってなってたはず。


内澤:自分たちの作品で、映像チェックのときにこんなに笑ったことはなかったと思います。監督も撮影中、「かっこいい方」と「面白い方」なら迷わず「面白い方」を選択してくれて。


佐藤:ちなみに、このMVは全部iPhoneで撮っているんですよ。


内澤:なのに、その撮影風景を記録した(初回盤に収録される)ドキュメンタリーは4Kのカメラで撮っているんです。


松永:ドキュメンタリーのときに「すごいカメラを使っているな」と思っていたら、「本番行きまーす!」と言ってiPhoneが出てきた(笑)。


R-指定:ドキュメンタリーには会議室でのやりとりも記録されていて、スタッフも監督も俺らに内緒でびっくりさせてやろうという魂胆だったんで、何も知らずに僕らが会議室に入ると、みんながヘラヘラしてるんですよね(笑)。


内澤:その様子は全部初回盤に入っているんで、ぜひ観てもらいたいです。


佐藤:セットで全部観てこそ完成するので、その経緯も込みで楽しんでもらえたら、と。


――今回の「SOS! feat. Creepy Nuts」は、andropにとってどんな曲になりましたか?


内澤:今回は本当に、自分たちの殻を破ってくれる経験になりました。これからの音楽性や、活動していくすべてに大きな変化をくれたコラボレーションだったと思います。


R-指定:次のandropの作品がどうなるのか、僕らもすごく楽しみです。


DJ松永:もし仮に今回のコラボが全部なかったことになってたらどうする? 「次の作品は、『Prism』以来のシングルです!」って(笑)。


全員:ははははは!


――今の時代は自分の好きな情報を集めて、それだけに囲まれて暮らすことも簡単にできますよね。最後に、そんな時代にあって、コラボレーションにどんな意義を感じているかを教えてください。


R-指定:情報が選べて、自分だけの箱庭を作りやすい環境にある中で、外に出たときのいい意味での「事故」であるとか、「事故的な出会い」みたいなものは、より一層大切になっていると思うんですよ。自分が何でも選べる時代だからこそ、自分が選んでないものと出会う感覚って、すごく大切だと思う。今はネットで映画も好きなところから観られるし、音楽も自分の好きな曲だけ買える時代で、ふとつけてるラジオで流れた曲がかっこいいとか、TVをつけていたときにふと観た映画がすごく心に残ったとか、そういう事故的な出会いが少なくなっていて。だからこそ、「andropの新曲やん!」と思って聴いたら、「あれ、ラップ?!」ってなったり、「feat. Creepy Nuts」という情報を見た人がこの曲でandropに出会ったり……。そういう出会いをしてくれたら嬉しいと思うんですよね。


内澤:もちろん、その事故的なものを受け入れるも受け入れないも人次第だし、それを楽しむも楽しまないも人次第だし。でも、今回のコラボを通して、andropの音楽を聴いてくれている人たちがCreepy Nutsのことをもっと知ってくれたら、それは僕らとしても本当に嬉しいことなんです。僕はCreepy Nutsは、これからの音楽界を引っ張ってくれるかっこいい人たちだと思っているので、今回コラボレーションができて本当に嬉しかったです。あと、今回の曲で僕らが言いたかったのは、「夏を楽しむヤツ」も「夏をケッ!と思ってるヤツ」もどちらも正しくて、「物事は自分の心持ち次第で、辛いことも楽しく変換させられる」ということで。このメッセージはいつの時代も変わらない普遍的なことだと思うので、そういうことも考えるきっかけになってくれたら、僕らとしてはすごく嬉しいですね。


(取材・文=杉山仁)


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