こんにちは、よりミク編集部のwadaです。
前回はひのき屋ワタナベさんにはこだて国際民俗芸術祭の運営についてお話を伺いました。それに引き続き、運営に関わっている一般社団法人ワールズ・ミート・ジャパンの代表理事イアン・フランクさんとひのき屋のメンバーでもあるソガさんを加えて、はこだて国際民俗芸術祭を立ち上げたきっかけや苦労話などを聞いてきました。
左からソガさん、ワタナベさん、イアンさん |
函館と、芸術祭と、ひのき屋と。 / ひのき屋ワタナベさんが運営しているコミュニティ
日本大使館主催のコンサートで演奏
TWまずは、ひのき屋さんのことをお聞きしたいと思います。普段どこで活動されていますか?
ソガさん
函館を拠点に活動しています。北海道内であれば札幌、稚内、旭川などいろいろ行きます。
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海外でも演奏するんですね。どんな国に行くのでしょうか?
ソガさんブラジルには4回、クロアチアには3回行きました。ハンガリーにも行きましたね。毎年1〜2回のペースで海外に行きます。
TW海外ではフェスに参加して、演奏することが多いのでしょうか?
ソガさんフェスに参加することもあれば、現地の日本大使館が、街中の劇場などを借りて開催するコンサートに呼ばれることもあります。
ソガさん大使館は予算をとって、日本の文化を紹介することがあるみたいです。予算が少ない場合は、映画の上映や着物の着付け教室を開催することが多いようですが、予算が多く取れるとコンサートといった大きめなイベントをするようです。
TWなぜ、ひのき屋さんはコンサートに招待されるのでしょうか?
ソガさん
我々は、太鼓や笛といった和の楽器とギターなどをミックスして演奏しているので、日本伝統の静かな音楽とは少しちがうコンサートができます。
その結果、声をかけてもらうことがあり、大使館のコンサートで演奏しています。
はこだて国際民俗芸術祭を開催することになったきっかけは何ですか?
ソガさん芸術祭とは、各地域に伝わっている衣装を着て、民俗楽器を使って踊ったり歌ったりする祭りです。日本でもフォークダンスといったかたちで紹介されています。 民俗楽器で演奏をするアーティストを世界中から集めて街に滞在してもらい、市民と交流しながら野外のステージでライブをする。そんなフェスティバルは世界中で行われていて、ルールも決まっているんです。 例えば、「出演するグループは自国でスポンサーを集めて、開催地まで移動する」といったものです。 話を戻しますが、踊りと音楽が集まる海外のフェスティバルにアーティストとして参加したときに「面白いな」と思ったんです。このフェスティバルを函館でもやりたいなというのが最初にありました。 特に参加したアーティストが1つの宿舎に集まって夜中にどんちゃん騒ぎをするんですが、それが面白かった。はこだて国際民俗芸術祭が実現したら、どんちゃん騒ぎしたいと思っていました。 残念ですが日本だとすぐに苦情がくるので、いまだに実現していないです (笑)
寒さと雨で苦労した1回目
TWはこだて国際民俗芸術祭の1年目は大変でしたか?
ワタナベさんめちゃめちゃ大変だったね(笑)
ソガさん色々と失敗したんだけど、まずは時期を間違えた。第1回目は、お盆明けに開催したんですが夕方になるとすごく寒い。毛布をかぶっても寒いぐらいでした。
ワタナベさん北海道って、お盆を過ぎると急に寒くなるんですよ。
ソガさん海外のアーティストに「なんで暑い時にやらないんだ!」ってめちゃくちゃ怒られましたよ(笑) しかも激しい雨が降ってきて、「なんで雨が降らない時期にやらないんだ!」って怒られました。
日本と海外の常識の違いによる騒動
TW他にも苦労したことはありますか?
ソガさん海外のアーティストを高級ホテルに泊める予算はないので、青少年研修センターに泊まってもらってます。先ほども話しましたが、海外のアーティストは「夜はどんちゃん騒ぎをするのが当たり前」だと思って来日しているので、夜になると騒ごうとするんです。 ですが、宿泊場所のルールに抵触するので騒ぐことができない。それを理解してもらうのが大変でした。
TW夜は騒いではいけませんと理解してもらうところから始まるんですね。
ソガさんまた共同お風呂に抵抗を感じる人もいました。非常に恰幅の良いアーティストに「シャワーを3日も浴びてないんだ!」と言われて、個室シャワーを必死に探しに行きました。
イアンさんはこだて国際民俗芸術祭は7日間開催し、海外のアーティストは1週間以上滞在します。ですが、青少年研修センターの定休日は月曜日です。
イアンさんそのため月曜日だけ別のホテルに移動して、火曜日になったら戻らなければなりません。 アーティストの中には「定休日でも泊まっていいでしょ?」と考える人もいて、1日のために違う施設に泊らなければならないというルールに納得しない方もいました。 編集部注:月曜日が使えなかったのは、はこだて国際民俗芸術祭の第1回目のみです。2回目以降からは、改善されています。
1年目に一番個性的なアーティストが集まる
TW1年目のはこだて国際民俗芸術祭で印象に残っていることはありますか?
ソガさん1年目に一番個性的なアーティストが集まりました。いまでも覚えているのは、太平洋のニウエ島からきたアーティストです。アーティスト全員が巨漢で、元相撲力士の曙さんみたいなんです。
ワタナベさんその人たちが一番初めに函館にきたんですが、もう終わっていいと思いました(笑)
ソガさんニュージーランドのオールブラックスのハッカを彷彿とさせる、雄叫びをあげるような歌を歌うんですよ。最初は驚いて、函館の子供たちは泣きました。でも最後には子供たちに大人気になってましたね。 他にもインドネシアのガムランといった竹の木琴みたいな楽器で演奏する、インドネシアビッグバンドが来たんですよ。これもすごく盛り上がりましたね。 ブルガリアのアーティストもきれいな民族衣装とレベルの高いダンスを披露してくれましたし、台湾の少数民族のブヌン族の方も来日して演奏してくれました。 個性豊かなアーティストのおかげで、日が経つごとに口コミで来場する人が増えていったんです。昨日より今日、今日より明日といった形で来場者が増えて最後は満員になりました。 今も同じで、 平日や休日関係なく後半になる程、1日の来場者数は増えています。
TWそうだったんですね。1回目の来場者数は何人だったのでしょうか?
イアンさん1回目に来場したお客さんは1万人です。
音楽に合わせたトータルコーディネートが重要
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衝撃的な1年目から回を重ねるごとに何か変わったことはありますか?
イアンさん2年目のはこだて国際民俗芸術祭が終わったころ、我々スタッフの教育が必要だと感じました。
ワタナベさんスタッフでオーストラリアに研修に行きました。海外のトップレベルの野外フェスティバルを見て意識が変わりましたね。
ソガさん現地のオーガナイザーに連絡をして、どこにでも入ることができるゲストパスをもらって運営の裏側も見せてもらいました。「ここどうやって作ってるんですか?」などいろいろ聞いて回りました。 研修に行ってから、料理や雑貨を1つのコンセプトでやろうと意識が変わりました。食べ物の味と香り、音楽、目に入る装飾、五感すべてで体験できることが重要です。1つでも欠けたらダメだと気付かされました。
イアンさんアーティストの休憩ゾーンも同じです。
TW他にも変わったことはありましたか?
ソガさん最初はこんなにお店を出していなかったです。
ワタナベさん俺、焼きそば焼いてましたよ(笑)
ソガさん民俗音楽を演奏しているのに、たこ焼き、焼きそば、カキ氷じゃないですよね。音楽にあう食べ物を提供して、雰囲気と雰囲気の相乗効果を狙いたいと思いました。 担当の筆助さん(ニックネームです)のおかげで、回を重ねるごとに食べ物や雑貨、会場のデザインも音楽に合うものを提供できるものになり、結果、お客さんも喜んでくれました。 先ほども話しましたが、音楽に合わせたトータルコーディネートが重要だと思っています。
準備期間は18ヶ月。仕事の合間に準備するのは大変です
TW準備に、どのぐらいの期間をかけていますか?
イアンさん準備期間は18ヶ月かけています。もうすでに、来年に参加するアーティストへ招待を送っています。アーティストの招待には時間がかかるので大変です。
イアンさんボランティアで参加しているため、負担が大きいです。GIA,GIAオブザーバーは一年を通して活動し、特に8月に入ると2週間フルタイムで活動しています。
TWなるほど。具体的にはどのような準備をされているのでしょうか?
イアンさん海外のアーティストはインターネットから「ちゃんと運営されている芸術祭」を探して参加を決めるので、事前にさまざまな情報をWEBサイトに掲載しないと集まりません。英語サイトは特に力を入れて更新しています。
ソガさん国内線での移動が大変らしいです。日本の国内情報が代理店に正しく伝わらないようで「東京からどうすればいいの?」といった質問の対応もしています。アーティストが大使館経由で連絡することもあるので、いきなり大使館から連絡が来て驚きました。
イアンさん他にも、アーティストが自国の企業などで補助金を出してもらって参加してくれるのですが、たまに補助金を取る書類を手伝ってくれと言われます。10ページ以上の申請資料を作る場合もあり、忙しいです。
ソガさんみんなボランティアで活動しているので、仕事の合間にやるのはかなり大変です。
イアンさん
私は、大学のサポートのおかげでアートプロジェクトの研究支援や、ボランティア活動への参加を理解してもらってます。毎年大学の採点の締め切りは芸術祭を終えた数日後なので、いつもギリギリの提出になってます……事務局の皆さんすみません!!
※フランクさんは未来大学で働いています。
今年はアーティストを見送ってから、ちょっとビーチに行って採点する余裕があります(笑)
はこだて国際民俗芸術祭には、100人以上のボランティアスタッフが参加されていますが、どのような方法で集めているのでしょうか?
ワタナベさん
毎年携わってくれているGIA,GIAオブザーバーを中心に4月頃から大学でボランティアスタッフの説明会を開催しています。またスタッフを経験した人が「面白いから」といって他の人を誘ってくれる場合もあります。ただ、社会人が少ないため学生が大学を卒業して遠方に就職すると次の年は大変ですね。各大学で芸術祭サークルを作ってくれると助かりますね!
特に去年は中心で動いてくれた学生が大学を卒業したため、ボランティアスタッフが足りなくなり大変でした。
来場者の8割は函館に住んでいる人
TWはこだて国際民俗芸術祭には、どんな人が来場していますか?
ソガさん来場者の8割は函館に住んでいる人です。
ワタナベさんただ、函館に住んでいても来場したことがない人もいますし、民族音楽やダンスにアンテナの高い人は東京や大阪から来る人もいます。あとは北海道の札幌や旭川からも来る人もいます。
ソガさん民俗衣装の写真を撮るためだけに来る人もいます。フォークダンス愛好家などもいます。 こんなに市内に住んでいるんだと思ってしまうぐらい、市内在住の外国人の方も来場してくれますね。 ご近所のお年寄りや家族が夕暮れを楽しみに来たり、音楽好きな人も来たりします。宴会をひらいてお酒や、食事をしている人たちもいます。
来場者の声が嬉しいので、なかなかやめられません
TW準備期間が長く大変なのに、なぜボランティアでも続けられるのでしょうか?
ソガさん毎年お客さんからフィードバックをもらっているんですが、「また来年もやってほしい」「食べたいのがいっぱいあるけど、すべて食べることができないから悩んでしまう」といった声や「このフェスティバルがあるから函館に引っ越しました!」という人もいるので、なかなかやめられませんね。 ただ現実問題、まだまだボランティアスタッフが足りていないのが現状です。これからは函館市外からのボランティアスタッフの募集にも力をいれていかなければ厳しいと考えてます。 あと海外からどんなアーティストが来て、どんな演奏をしてくれるのか、我々も毎年楽しみにしているんです。今年で9回目ですが、いまだにマンネリ化してないので楽しんでいます。
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