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「保活」「小1の壁」「中学受験」の次に来る子育ての高い壁とは?

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2017年09月13日 11:32  AERA dot.

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写真部活や塾で忙しくなる時期。菅原教授は「『土曜日は必ず家族で夕飯を食べる』など、我が家のルールを決めて話をするのも有効」と話す(撮影/鈴木愛子)
部活や塾で忙しくなる時期。菅原教授は「『土曜日は必ず家族で夕飯を食べる』など、我が家のルールを決めて話をするのも有効」と話す(撮影/鈴木愛子)
 仕事と子育ての両立は、どうしてこんなにつらいのか。そう感じながら、毎日必死で走り続けている人は少なくない。待機児童のニュースを聞くたびに、上司や同僚に気を使い、後ろ髪をひかれながら会社を後にするたびに、いつになったら楽になるの?と思ってしまう。小学生になっても、ティーンエイジャーになっても新たな「壁」があらわれると聞けば、なおさらだ。AERA 2017年9月18日号は「仕事と子育て」を大特集。親の言うことを素直に聞いてくれなくなる思春期の子ども。でも、実はけっこう、「働く親」の背中を見ている。

*  *  *
 手のかかる幼少期を乗り越え、中学校入学でほっと一息。なかには、このタイミングで「自分自身のキャリアを見直そう」という親たちも少なくない。しかし、思春期には、友人とのSNSトラブルや反抗期、学習や進路の問題など、一筋縄ではいかない新たな壁が待ち受けている。心身ともに成長し、社会に出る前の準備期間ともいえる重要な時期、子どもと過ごす時間の限られる働く親は、どう向き合っていけばいいのか。

●理解を得られず転職

 医療機器メーカーに勤める中川洋子さん(仮名=52)の長男は、小学校低学年で先生との折り合いが悪く、不登校気味に。学習の難易度が上がる中学や高校に上がってもその傾向は続き、進級可能な出席日数ギリギリで登校する日々が続いた。

「私が働いているから、愛情が足りていないのかな……」

 と、自分を責める思いに駆られたことは一度や二度ではない。でも、相手は反抗期真っ盛りの息子。常に一緒にいるだけが解決策ではないと割り切った。退職してキャリアが途切れてしまうことへの不安もあった。

 中川さんは2人の子どもの成長に合わせて、柔軟に仕事や働き方を変えてきた。幼少期や長男の不登校が出始めたころ、長女の小学校受験など、子育てに手を掛けたいタイミングには、自宅勤務を織り交ぜて対応した。

 今でこそテレワークも珍しくないが、当時は約20年前。状況は全く違う。中川さんはこれまで5度の転職を経験。仕事内容に惹かれたのが主な転職理由ではあるが、うち2度の転職は、長時間残業ができないことなどを責められ、上司との関係が悪化したことも要因となった。

 それでもキャリアを積み重ねてこられたのは、中川さん自身が職場になくてはならない存在となったから。長女を出産する際も、職場で3人同時に妊娠が発覚したこともあり、いち早く産前産後含めて1カ月で仕事に復帰し、会社に貢献した。

 エン・ジャパン「エン転職」の岡田康豊編集長によると、5千人以上対象のアンケート調査(複数回答可)で、「退職を考え始めたきっかけ」について聞いたところ、「給与」(46%)、「評価や人事制度」(37%)、「残業や休日出勤が多い」(28%)と待遇や働き方に関する不満が多い。「結婚・子育て・介護などの家庭の事情」を挙げたのは10%と、育児だけが要因の転職は多くはない。ただ、中川さんのように、育児をきっかけに長時間労働や職場の理解不足など、両立をはばむ要因が顕在化し、転職に至るケースは珍しくない。

 さらに、中学受験で子どもが塾に通いだしたり学童保育が終了したりする「小4の壁」といった、思春期特有の問題を機に、働き方を考える動きもあると岡田編集長は指摘する。

●突然の“SNSいじめ”

 会社員の小山奈津子さん(仮名=44)もこの問題に直面した。小山さんが長女の異変を感じたのは、中学に上がってまだ間もないころ。仲良し4人グループだったはずが、突然いやがらせを受けるようになった。

 ある日、4人のLINEグループから、長女だけ突然「強制退出」させられ、学校でも仲間外れや、陰口を言われるように。別のSNSには、他の3人がテーマパークで遊んでいる満面の笑みの写真が、これみよがしにアップされていた。

 上司に話し、担任の先生に相談するため、仕事を抜けさせてもらった。ただ、それで仲間外れは解決しない。自己主張が強い長女の性格を考えると、100%相手が悪いわけではないのも分かっていた。ただ、何もしないわけにはいかなかった。

 ある日、先生との面談後、教室を出ると、刺すような視線で睨まれるのを感じた。視線の先に目をやると、長女を仲間外れにしている、件の3人組の姿。「先生にチクリに来た」と警戒したのだろうか。「母親が介入することでエスカレートするのでは……」。そう思うと、胃がきりきりと痛んだという。

「小学生のころは、親同士で話したり、担任の先生に相談すれば、ある程度問題が解決できました。でも、中学生になるとそうはいかない。親って無力なんだと痛感しました」

 その後1年程度、仕事を抜けて、先生と週1回面談。当時、小山さんは経営戦略の重要なポストを担い、職場を抜けるのは容易なことではなかった。

 ただ、幸いだったのは、上司の理解があったことだ。仕事には厳しかったが「結果がすべて」という考え。その分、自宅での仕事など残業は増えたが、仕事で成果をきっちり出していたこともあり、働き方は自由にさせてもらえた。

 長女の言葉も後押しになる。

「私のせいで仕事を休まないで。そのほうがプレッシャーだよ。働くママが好きなんだから」

●親の仕事を「評価」

 お茶の水女子大学の菅原ますみ教授(発達心理)は、思春期は心身ともに大きく成長する一方、精神的に不安定になりがちで、幼少期とは異なる目配りが必要だと指摘する。

「適度な距離感で、対人関係や行動、学習の進捗などを見守って。頭ごなしの『親モード』ではなく、一人の人間として尊重する、職場の『新社会人教育』のような心構えが大切です」

 さらに、自分や親に対して客観的な視点を持ち、働く親を「社会人の先輩」として評価するようになるのもこの時期だ。小山さんの長女のように働く親に一目置いてくれるようになる。

「親が心配するほど、思春期の子どもの親への評価は、低くないんです」

 と、菅原教授。キャリアや将来を考え始めるこの時期だからこそ、親の仕事ぶりを見せてあげることが大切だという。共働き夫婦なら、父と母、二つの働き方を提示することができる。

 一方で、思春期になると母親以上に距離を置かれてしまいがちなのが父親だ。ある父親は思春期の娘との距離をアクロバティックな方法で縮めたという。ウェブメディア「経営ハッカー」編集長の中山順司さん(46)だ。

 小学生時代はわんぱくだった長女。中山さんと野原に行ったり、虫捕りをしたり。遊びながらコミュニケーションが取れた。だが中学生になった途端、娘との間に高くて厚い壁を感じるように……。お風呂も一緒に入らなくなるなど、会話量も激減した。中山さん自身、男兄弟で育ったので、成長した娘とどう接していいのか分からず、戸惑った。

「このままだとまずいぞ、と。『ダサイ』『キモい』と、まったく話をしてもらえなくなる前に、偏見を持たずに接してもらいたいと思いました」

 そこで、連載していたウェブメディアで、父と娘の対談連載を企画。当時中1だった長女の機嫌がいいタイミングを見計らい、それとなく外に誘い出し、好物のアイスを買い与えたところでボソッと提案した。

「とりあえず、実験でやってみない?」と伝えると、しぶしぶ了承してくれた。

●あえて常識から外す

 週末の1時間半、近所のファミレスで、父娘が膝をつきあわせて、じっくり語った。長女が他の家族の視線を感じて照れてしまわないよう、対談場所はあえて自宅以外を選んだ。

 テーマは「恋愛」「仕事」「いじめ」……と、どれも思春期の娘と語り合うにはハードルが高い話題。できるだけ聞き役になり、説教めいたことも言わないよう心がけた。

 あえて「勉強しないで高校中退も悪くないんじゃないの?」というような、勉強や仕事の在り方を問うような、世間の常識とは異なる質問もし、長女の興味を引く問いかけを心掛けた。

 回を重ねるごとに徐々に娘も心を開き、本音を話してくれるように。父娘の「対談」は3カ月間にも及んだ。対談の中で、長女の考え方にも変化が表れた。人生の意味について聞いた時のこと。深い答えは期待していなかった中山さんの予想に反し、「次の世代や未来に貢献するような仕事をしたい」と、およそ中学生とは思えないような回答が返ってきた。

「『この対談を通じてそう考えるようになった』と言ってくれて。自分の考え方を学んでくれたんだ、と嬉しくなりました」

 初対談から約4年が経ち、長女は高校2年生に。残念ながら「キモい」と言われてしまうことはあるようだが、当時じっくり話をしたことで、今でも「何かあったらお父さんに相談できる」と言ってもらえるようになった。

 長女の変化はまだある。学校の先生を目指しているが、小学校で放課後教育のボランティアもするように。自分自身で地元の市役所に問い合わせて見つけたという。ボランティア先を探す長女に「市役所に聞けば」と助言したのは中山さんだが、実現する行動力に驚いた。

「仕事で培った情報は、子どもにすべて還元し、問題解決のヒントとして提示したい。そういうところは自分の出番。大事なのは、子どもの自主性は尊重しつつ、手助けはする、いやらしくない距離感だと思いました」

(編集部・市岡ひかり)

※AERA 2017年9月18日号

【おすすめ記事】難しい長男・長女の“しつけ” やりがちな間違いと接し方とは?


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このニュースに関するつぶやき

  • 「私が働いているから、愛情が足りていないのかな……」←人類の親の醜悪さの最たるもの。子供は大人が思うほど盲目じゃない。親の本質を見極め魂や遺伝子の低俗っぷりに嫌悪しているというのに。
    • イイネ!0
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  • 平日は遅くて、家族で食事というわけにはいかないが、土日だけはどんな誘いがあっても断って、家族で長い食事をする。…俺のクソくだらないボケに中二の娘がツッコんでくれるのが至高の時�Ԥ��Ԥ��ʿ�������
    • イイネ!57
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