シリアで流行した皮膚が溶ける「奇病」のワクチン開発に光が!?

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2017年09月14日 18:43  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<リーシュマニア症を防ぐワクチン開発に向け、アメリカの研究チームがマウスを使った実験で一定の成果をあげた>


2015年にシリアで感染が拡大した奇病、リーシュマニア症のワクチン開発に希望の光が差し込んだ。アメリカでも発生が報告され、予防法の確立に期待が寄せられていた。


熱帯・亜熱帯・南ヨーロッパなどでみられるこの病気は、寄生原虫の一種リーシュマニアが小さなサシチョウバエ類によって媒介されるもので、治療せずに放置すると数週間から数年で死亡することもある。有効な予防手段はサシチョウバエに刺されないことだけで、ワクチンは存在しない。アメリカの科学ニュースサイト「サイエンス・デイリー」は、マラリアに次ぐ致命的な感染症としている。


Leishmania Disease spread in #Syria. Vaccines urgently needed in #Aleppo & other cities under attack. See Photo. pic.twitter.com/Bt27VgaNaw— Mouhanad A. Al-Rifay (@MouhanadAlrifay) 2013年3月13日


(リーシュマニア症のシリアの子供たち)


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この病気が注目されたのは、ISIS(自称イスラム国)が支配していたシリア国内の感染が拡大した2015年。世界保健機関(WHO)は、内戦の影響で医療サービスが破壊され、住民の免疫力が低下したと指摘していた。


英誌デイリーメールによると、ISISによって処刑された大量の遺体は、まともに処理されることなく放置されたという。最悪な衛生環境で死肉を好むサシチョウバエが大量発生したことが感染拡大の原因とみられる。


Movement of horses in rural Brazil a possible cause of #leishmania spread. https://t.co/tOIQpO1zfP— Federica Giordani (@fedegio3) 2017年8月27日


(リーシュマニアを媒介するサシチョウバエ)


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当時のクルド人戦士は、ハサカ県タル・ハスミはじめ、複数の戦闘地域で蔓延したリーシュマニア症を目にし、「これまで4年も(シリアで)闘ってきたが、こんな致命的な病気とは知らなかった」と語っている。


マウスを使った実験で光明


リーシュマニア症は発症した時の症状によって、出現頻度が高く感染部位に瘢痕(はんこん)を一生残す「皮膚リーシュマニア」、致死率の高い「内蔵リーシュマニア」、鼻、口、咽喉の粘膜を破壊する「粘膜性リーシュマニア」の3つに分類される。シリアで感染が拡大したのは、皮膚リーシュマニア。アメリカで発生したのは内蔵リーシュマニアだ。


DNDi(顧みられない病気のための新薬イニシアチブ)によると、リーシュマニア症による年間の死亡者数は2〜3万人。一部では5万人という見方もある。アメリカでは症例数の増加が懸念され、研究者らがワクチン開発を急いでいたが、その完成に一歩前進する成果が発表された。


ジョージア工科大学の研究チームは、ACS Central Science誌に掲載された論文で、「実験用マウスは、皮膚リーシュマニアおよび内臓リーシュマニアの原因菌に対する免疫力があることを示した」と報告。Newsweek米国版サイトによると、実験では、ワクチンを打ったマウスと打っていないマウスをそれぞれ12匹用意し、リーシュマニアに感染させた。すると、ワクチン接種を受けていない12匹すべてがリーシュマニア症を発症したという。


As 'flesh-eating' Leishmania come closer, a vaccine against them does, too https://t.co/ec5k8TkIRc pic.twitter.com/Sy0251VUno— Science (@scienmag) 2017年9月13日


(リーシュマニア予防のメカニズム)


しかし、マウスは人間ではない。人間にワクチンを使って安全で効果があることが十分に証明されるまで、どのくらいの時間がかかるかわからない。さらにお金の問題もある。研究チームは、現在確保している研究資金ではこれからの研究を進めるには足りないと嘆いている。


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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


このニュースに関するつぶやき

  • リーシュマニア症なんて知らんかったで。今のところワクチンや予防薬はない…んか���顼�áʴ��。サシチョウバエには気を付けよう。って、日本にはいないみたいだけど������������ӻ�����
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