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【コラム】“気配りの人”興梠慎三…「柔」を体得したFWは日本代表に新しい風を運べるか

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2017年09月14日 19:35  サッカーキング

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写真浦和でプレーする興梠 [写真]=Getty Images
浦和でプレーする興梠 [写真]=Getty Images
「前、見てくれ」

 0−1で迎えた30分過ぎだったか。その一言から浦和レッズの逆転劇は幕を開けた。声をかけられたのはMF矢島慎也。言葉の主はFW興梠慎三だった。

 直後、矢島が左を持ち上がり、助言通りに前線へと目を向けた。興梠は相手センターバック2人の間を浮遊し、注意が外れる一瞬を待っていた。そして、その一瞬は来た。抜け出した興梠に矢島のスルーパスが通る。GKの間合いをずらし、右足の1タッチシュート。右サイドネットが揺れた。「慎也の特長はラストパス。なのに横や後ろへのパスばかりだったから、前を向けと。言ってみるもんですね」

 13日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準々決勝セカンドレグ。アウェイのファーストレグで川崎フロンターレに1−3と敗れていた。2点差以上の勝利が必須。先制を許して土俵際からの4得点でひっくり返した勝利を、背番号30のFWが先導した。

 二つ目の分岐点は38分に訪れた。浮き球を競り合った興梠の頭と、DF車屋紳太郎の左足が接触。サウジアラビア人の主審が間髪入れず差し出したのは赤い札。「あれでレッドはかわいそう。でもACLは、特に中東の人が笛を吹くとすぐにカードが出ちゃうんで。自分たちは気をつけていた」。日本人歴代2位、ACL49試合出場を誇る興梠ならではの経験則だ。

 さあ、1人減った川崎をどう攻略するか。「鉄則というか、サイドから崩すのが有効」。後半、自らは中央に構えて相手守備陣を引きつけ、両翼の隙間をより広げ、圧倒する浦和。スロヴェニア人FWズラタンの2点目につながるCK、ブラジル人FWラファエル・シルバの3点目は狙い通りに右で起点ができた。「逆転」の4点目は興梠自身が2度、くさびのパスを受けてお膳立て。そこから右、左と振ってFW高木俊幸が決めた。

 監督交代から1カ月半近く。チームは攻撃に偏りすぎていた重心を、やや守備に寄せた。衣替えのさなか、波に乗りきれないでいた。「連係がまだまだなのは仕方ない。でも、今日は内容より結果にこだわりたかった。好調の川崎に対して、久々に大量得点を奪って勝てた。みんなにとって自信になる」。90分間を通し、貫かれたのは味方を輝かせるプレー。黒衣のごとく周りの持ち味を引き出せれば、結果、自分に返ってくることを31歳は知っている。

 瞬発力に任せて裏を狙い続けた若き鹿島アントラーズ時代が「剛」ならば、いまの興梠は「柔」。素敵な年齢の重ね方をしている。エゴイスティックな振る舞いほど有利に働くのが点取り屋だけれど、この人はさしずめ、気配りのストライカー。そんな矛盾しそうな形容が当てはまる。

 剛のFWがひしめく日本代表で、異能はどんな化学反応を起こせるのか。例えばFW大迫勇也(ケルン)に有事の際、収めてさばく代役となり得るのか。もう一度、テストを見てみたい気もする。

 最後、試合後の余談に触れておきたい。埼玉スタジアム2002は、監督の記者会見場と選手取材のミックスゾーンがほど近い。ある瞬間、ミックスで質問に答えていた興梠が、ふと会見場に視線を移した。勝利の労をねぎらう拍手に包まれた堀孝史監督の姿が、そこにあった。

 どこか安心したように、柔らかく頬を緩めた興梠。やっぱり気配りの人。

文=中川文如

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