【弓月ひろみのデジタル課外授業】なぜ若者はオジサンのFacebookを「ウザい」と言うのか?

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2017年09月22日 21:00  citrus

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少し前のこと。「若者が嫌うFacebookおじさんの特徴」という記事がネットで話題になった。10代・20代へのアンケートをもとに、「嫌われる」「ウザがられる」投稿を紹介する内容だ。それなりにセンセーショナルだったのか、私のタイムラインに40代前後の男性陣のさまざまな反応が流れてきた。「気をつけなくちゃ」と襟を正す人、「これってウザいんだ」とハッとする人、反省する人。でも、一番目立ったのは「若者に好かれるためにFacebookやってるわけじゃない」という意見だ。言い分はごもっとも。得体の知れない「ワカモノ」という抽象的な塊に向けて、SNSをやってるわけじゃない。私だって、私の仲間、私のいる業界、好きな人たちのためSNSをやっている。ただ、この記事に対しある人の発した言葉が、気になった。

 

「若い頃は、おじさんやおばさんって違う世界の生き物だと思ってた。だからウザいと思うことすらなかったよ。今の子は違うのかな」

 

 

■「ウザい」の一言に隠された若者の素顔

 

そう言われて、ふと気づいた。今と昔の大きな差。それは、私たちが集まる場所に"世代の境"がなくなっているということだ。ステレオタイプな例えだが、今まで「学生が使う居酒屋」と「洗練された大人が使うバー」は交わらなかった。「大人が楽しめるスナック」に学生が入り込むことも、そうそうなかった。使えるお金が違うからだ。

 

けれど、今は違う。SNSは誰もが無料で使える社交場、誰でも入れるカフェみたいなもの。投稿を「友達限定公開」にすれば個室に近いけれど、基本的には、世界中の人が広い会場に入り乱れている状態だ。そこから見える景色は、どんなものだろうか。大人は「学生が騒いでいて、うるさいなぁ」と思うかもしれないし、学生は「おじさんが集まって、意味不明な話をしている」と思うかもしれない。

 

1979年生まれの私は、今年38歳。30代も後半に入ると、耳をふさぐのもそれなりに上手くなる。「自分が受け入れがたい世代」など、気にしなければいいし、見なければいい。でも、若者はそうしない。ジェネレーションギャップを感じてもなんとかうまくやっていこうと努力するほど、真面目なのだ。「こういうオジサンはウザい」というフレーズは、そんな姿勢の裏返しなのかもしれない。まったく別の生き物だと思っていれば、不快にならない。ただ、「ああはなりたくない」と思ってしまうほど、その姿に自分の未来を重ねざるを得ないほど、若者とオジサンは「近い」のだ。

 

 

■オジサンなら「背中で語る」SNSも悪くない

 

自分が10代の頃、SNSの代わりはラジオだった。投稿という形で、日本中の意見と日常が流れる。トレンドもニュースも無作為に、選ばずとも耳に入ってきた。SNSのタイムラインとよく似ている。ラジオには気持ちを代弁してくれるDJがいて、彼らは常に兄貴的存在の「尊敬する大人」で「僕たちの味方」だった。つまり、何が言いたいかというと……もしかしたら若者はSNSのタイムラインに、そうした「尊敬する大人」や味方を探そうとしているかもしれない、未来のモデルとなるような大人を探しているのかもしれない。だからこそ、失望するスピードも早いし、ダメな大人も目についてしまう。

 

「若者の目を気にしてSNSをやっているわけじゃない」。それは確かにそうだけれど、ふと、私自身が思ってしまったのだ。世界中の人が集まる社交場で、若い世代の人に「この人の振る舞いはカッコイイ」と、そう思われる人になりたい、と。もちろん、SNSはラジオのようなマスメディアと違う。メディアで発信しながらSNSを活用する人はいるが、ほんの一握りだ。だけど、私の知る「カッコイイ大人」は、メディアの中にだけいるわけじゃない。20歳を迎えたばかりの頃、背伸びして行った「大人の場所」で見た、誰かの振る舞いはカッコ良かったし、今でも私より少し年上の、ずっと年上の人の、何気ない仕草を見て「ああいう大人になりたい、ああやって年をとりたい」と思う。

 

若者はオジサンも、オバサンも嫌いだ。私たちだって「オバサン」と言われることを、「オジサン」と言われることを、どこか怖がっている。言葉の意味や捉え方はさておき、それらがネガティブワードとして使われがちだから。「ウザい、なんて言う若者のためにやってるわけじゃないSNS」だけど、もしもそういう中から自分に憧れてくれる若者が出てきたら、少しぐらい日常が報われないだろうか。

 

古臭いかもしれないけれど「背中で語る」ようなSNSのあり方があってもいい。「オジサンで結構、わかってもらえなくて結構」と思うより、未来に良い影響を与えるかもしれない、何気ないスマートな発信とコミュニケーションの方法を模索してみるのもありじゃないか。ちょっとは真面目に、未来の子どものために、カッコつけたっていいんじゃないか。そんなことを考えつつ「ちょっと憧れられる未来の大人」のためのアレコレを、綴っていきたいと思う。

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