賢明なるcitrus読者の皆さまは「没イチ」という言葉をご存じだろうか?
配偶者の死去によって「ひとり」になってしまった人のことをこう呼ぶのだそう。そして、このバツイチならぬ没イチシーンが今、けっこうアツイ……と、そんな特集記事が9月22日売りの日刊ゲンダイに掲載されていた。
本紙の取材に答える結婚相談室『うさぎ』の高島詔子さんのコメントによると、「昨今の没イチ男性は、身の回りの世話をしてくれる女性が欲しいというよりは、一緒に暮らす伴侶が欲しいという気持ちのほうが強い」という。
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没イチ同士が集まるコミュニティーもあるらしい。やはり本紙の取材に答えている、第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部の小谷みどりさんは、自身が講師を務める『陸橋セカンドステージ大学』の受講生・OB・OGたちと、50歳以上を対象にした『没イチの会』を発足。
「配偶者の死を無駄にしないためにも、彼・彼女の分も人生を楽しむ──人の2倍人生を楽しむ使命を帯びた会」
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……をモットーとしながら「配偶者を亡くした人の気持ちを理解できて、共通の話題を気兼ねなく語れる男女が集まる場所」として重宝され、メンバー間で旅行やゴルフ、ディスコなどに出かけるケースあるんだとか。
とってもポジティブで素敵な話である。素敵ではあるけれど、この没イチが本当に「今アツイ」のかどうかは、正直なところ眉唾モノでもある。だが、その熱量の精度はどうだってかまわない。むしろ私がここで注目したいのは、この「没イチ」なる言葉が、実質購買読者ターゲット層が50代、いや、下手すりゃ60代以上となりつつある日刊ゲンダイから発信されている点にある。
「ちょべりぐ」(古い!)「なう」(古い?)「ワンチャン」「卍」「それな」……ほか諸々、「流行語はネット上で若者たちのあいだから生まれる」のが、もはやお約束となった昨今、熟年層から、しかも紙媒体から流行語が生まれるケースは、至極稀だと言ってよい。
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だが、高齢化が進むこれからの日本において、流行語は「下から上」だけじゃなく、もっともっと「上から下」へと広がっていくパターンも増えて然るべきではないか。
ただ、現状では残念なことに、「上」のヒトたちの多くはネットをフルに使いこなせなかったりする。したがって、せっかく座りも語呂も抜群で、意味合い的にも説得力充分な「没イチ」なんて言葉を思いついたところで、いかんせん拡散しない。熟年層のみにとどまる“陰語”としてしか機能しないのだ。
だから、私は今回こうやってネット媒体を通じ、「没イチ」のSEOを少しでも上位に持っていくため、微細ながら力を尽くしたい。そして、初老の底力ってヤツをあらためて世に問い直したい。以下に記す、前出の小谷さんによる〆の金言をよ〜く噛みしめてみてほしい。
「人は誰もがいつか死ぬ。つまり、配偶者がいれば(いずれ)100%没イチになるんです」
おっしゃるとおり! 没イチは若い世代にとっても、決して“他人事”ではないのである。