ホテルのチェックイン、記入用紙に「金田一」や「コナン」…偽名を書いたら犯罪?

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2017年10月13日 10:53  弁護士ドットコム

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ホテルのチェックインで求められる氏名や連絡先の記入。順番待ちは別として、レストランやテーマパークなどでは不要なのに、なぜホテルでは書かないといけないのかと、不思議に思ったことはないでしょうか。


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特に現代はネットで予約もできるのに、なぜ手書きも必要になるのでしょう。そのくせ、身分証明証などで本人確認されることは、ほとんどないようです。


どうせ分からないからと、偽名で泊まってしまったらーー。たとえば、ちょっと不吉ですが、イタズラ心で「金田一一」や「江戸川コナン」など名探偵の名前を書いたら、何か問題になるのでしょうか。金子博人弁護士に聞きました。


●旅館業法違反や私文書偽造罪の可能性…偽名の本物っぽさもポイントに

旅館業法6条1項には、旅館やホテルの営業者は、宿泊者名簿を備え付け、それに宿泊者の氏名、住所、職業等を記載しなければならないとあります。また、自治体の担当職員の要求があれば、それを提出しなければなりません。


同条2項では、宿泊者に対し、営業者から請求があれば、これらの事項を申告しなければならないと定めています。宿泊者名簿を作成するのは、営業者側なので、宿泊者が書き込む必要はありませんが、少なくとも求められれば、口頭でも申告する義務があります。


違反すると、11条で、営業者は5000円以下の罰金、12条で、「偽って告げたもの」には、拘留または科料(1000〜9999円)の制裁(刑事罰でなく行政罰)。したがって、申告を拒否すると、泊まるのを拒否されてもやむをえないわけです。


なぜ、ホテルや旅館にこのような規制があるかというと、ホテルや旅館は、賭博や売春、ドラッグなどの違法取引に使われやすいし、犯罪者が逃亡のために利用するからです。また、感染症発生時の感染経路特定にも重要な役割を果たします。ただ、法的には宿泊者に身分証明書を出すなど証明義務までないので、偽名はありえるのです。


しかし、偽名だと、旅館業法に違反するだけでなく、刑法の私文書偽造罪に問われる可能がでてきます。私文書偽造罪は、他人の氏名を冒用することですが、冒用される相手が実在する必要はなく、実在すると誤信される場合も、成立すると解されています。


今年5月、仮名で宿泊していた逃亡中の中核派の活動家が、有印私文書偽造・同行使の罪状で逮捕されましたが、これは冒用される相手が実在しなかったようです。


逆に実在しないことが明らかな、「江戸川コナン」などと書いても、偽造にはなりません。ただ、「ふざけないでください」と注意されるでしょう。申告したことにはならないからです。


●法律上、ラブホテルは別扱い…「偽装ラブホ」なるものも

ところで、ラブホテルには、以上の旅館業法は適用されません。


一般のホテルは、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)の管轄で、許認可は保健所に提出します。


これに対し、ラブホテルは「風俗適正化法」が適用され、風俗営業として国家公安委員会へ営業開始届けを出して、営業します。営業場所が厳しく制限されるなど、規制の内容は一般のホテルとまったく異なりますが、宿泊者名簿の制度はありません。


また、どう見ても、ラブホテルなのに、受付に宿泊者名簿が置いてあるというケースもあります。これは、「偽装ラブホ」です。ラブホテルを建てられないところで、まず一般ホテルの営業許可を得た上、こっそりとラブホテルとして営業するのです。この場合、受付の宿泊者名簿は形だけなので、書けとは言われないはずです。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
金子 博人(かねこ・ひろひと)弁護士
「金子博人法律事務所」代表弁護士。国際旅行法学会の会員として、国内、国外の旅行法、ホテル法、航空法、クルージング法関係の法律実務を広く手がけている。国際旅行法学会IFTTA理事。日本空法学会会員。
事務所名:金子博人法律事務所
事務所URL:http://www.kaneko-law-office.jp/


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