ドリカムは“Jポップの始祖”である 最新作『THE DREAM QUEST』&過去作から伝わる存在感

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2017年10月21日 15:02  リアルサウンド

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【参考:2017年10月9日〜2017年10月15日週間CDアルバムランキング(2017年10月23日付)】(http://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2017-10-23/)


 以前リアルサウンドのコラム(参考:DJ和、最新ミックス『ラブとポップ』ヒットの要因は? “2000年代Jポップ”に感じる音楽的な多様さ)でも触れたDJ和のミックスCD『ラブとポップ 〜好きだった人を思い出す歌がある〜 mixed by DJ和』がしぶとくトップ10にランクイン。先日はDJ和自らが高速道路のサービスエリアでDJをしながらCDを直売するというダイレクトプロモーションを展開していた。フィジカルパッケージを購入することが「特別な消費」になりつつある昨今において、「CDでも買ってみようかなと思う人がいる場所で売る」という活動は非常に重要になっている。「CDが売れない」という話はすでに聞き飽きた感もあるが、そんな状況だからこそCDの売り方には創意工夫の余地が無限に広がっている。


 そういった観点で言うと、今週のチャートで初登場1位を獲得したDREAMS COME TRUE(以下ドリカム)の最新アルバム『THE DREAM QUEST』も、郵便局での販売というとてもユニークな施策が展開されている。あらゆる業界で実店舗が苦しくなる中、いまだに全国津々浦々のネットワークを維持している郵便局は、いわば最強のリアルチャネルである(ちなみにタワーレコードの店舗数は公式サイトによると今年10月現在で66店舗、今回ドリカムのCDを販売する郵便局は約4,500箇所)。「郵便局で販売する」というビジネスアイデアはおそらくいろいろな場面であがっているはずだが、日本全国にファンのいる彼らにぴったりのこの展開を実現させたチームドリカムの手腕は見事。


 さて、作品の中身だが、既発曲のアルバムバージョン、そのオリジナルバージョン、そして新曲という収録曲において、新曲群が特に素晴らしい。許されない恋を想起させる切実な歌詞に無機的なリズムトラックとムーディーな管楽器やアコースティックギターが絡む「秘密」、奥行きのある音の配置が印象的な「堕ちちゃえ」などでは、打ち込みと生楽器をうまく組み合わせて現行のR&Bのトレンドを消化した世界が展開されている。また、三浦大知への提供曲のセルフカバー「普通の今夜のことを ー let tonight be forever remembered ー」では、メロディラインの上を自由に泳ぎ回るかのような「これぞ吉田美和!」というボーカリゼーションを堪能できる。サウンド面での流行を意識しつつ、ボーカルの表現力でそれを普遍的なものに落とし込む、ドリカムらしいバランスを保った音楽を全編にわたって楽しめるのが今作『THE DREAM QUEST』である。


 本作のリリースに先がけて、ドリカムは過去の音源をまとめてサブスクリプション音楽配信サービスにアップしている。ブラックミュージックを換骨奪胎して日本人が聴けるポップスに落とし込むという取り組みの先駆者であり(それこそ90年代初頭の作品群には星野源『YELLOW DANCER』にも通じる感触のものもある)、また『The Swinging Star』(1992年)で日本初のトリプルミリオンを達成してメガヒット時代の到来を呼び込んだ当事者でもある、まさに一時代を築き上げた存在にもかかわらず、意外とこのグループの功績というのはスルーされがちなように思える。ドリカムに有形無形の影響を受けている後進のミュージシャンも多いはずだが、おそらく「その存在が当たり前すぎて意識されていない」というのが実態なのだろう。ドリカムの魅力が端的に描き出されている今作と、参照が容易になった過去のアーカイブを通じて、ドリカムが「単に有名なグループ」ということではなく「Jポップの始祖」であることがより広く伝わってほしい。


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