内田彩、エンターテイナーとしての多面性  幕張メッセワンマンで見せた”アップデート”した姿

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2017年10月23日 14:13  リアルサウンド

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「失敗あれば成功あり、成功あれば失敗あり。何度でもいろんなことに挑戦していける自分でありたい。どんなわたしにも『Hello』、『Goodbye』って言ってもらえる存在に!」


参考:『ラブライブ!』プロジェクトにおける、Aqoursの音楽的な“独自進化”ーー2ndライブを機に紐解く


 内田彩が、10月14日と15日に千葉・幕張メッセイベントホールで行なったワンマンライブ『AYA UCHIDA LIVE 2017 ICECREAM GIRL』は、内田のエンターテイナーとしての多面性を存分に見せられた一夜だった。


 2017年の声優楽曲シーンを語る上で欠かせない快作『ICECREAM GIRL』を世に放ったタイミングでのライブということもあり、会場には2日間で1万人を動員。内田も負けじとスウィートに、ビターに、エネルギッシュに、セクシーにと、目まぐるしく変わる幅広い表現で観客を魅了した。本稿では、そのなかから15日に行なわれた公演について記したい。


 ライブの冒頭は、アルバムにちなんだアイスクリーム上の球体から内田が登場し、『ICECREAM GIRL』の1曲目「What you want!」からスタート。キュートなシンセポップに合わせ、アイスクリーム形のマイクを手に、甘々な歌声とユルいラップで、一気に観客の心を溶かしてしまう。そこからさらにキュートさの密度が濃い「Party Hour Surprise!」、「いざゆけ! ペガサス号」と、過去作からも甘めの曲を披露。花道へ向かう合間では、観客のTシャツを指差し「ICECREAM GIRLって書いてある、BOYなのに!」と触れ合う一幕も。


 4曲目に反対側のステージで披露された「Sweet Rain」は、ここまでと雰囲気を変えて切なさを含んだミドルバラード。同曲を歌い終え、舞台に隠れていた東タカゴー(Gt)、宮崎京一(Gt)、野崎洋一(Key)、黒須克彦(Ba)、SHiN(Dr)が登場し、「Holiday」へ向かおうとしたその瞬間。内田の姿が消えた。


 一瞬ヒヤリとしたが、昇降装置でマイクスタンドが上がってくるところにハマり、転倒してしまったという。楽曲を終えたところで、内田は靴が壊れたと明かし一旦舞台裏へ。その間も信頼のおけるバンドメンバーがセッションで会場を盛り上げる。戻ってきた内田が「わたしね、ライブでよく靴壊すの(笑)!」(一度目はTDCホール)と話し、観客はひと安心。


 一度訪れた不安な空気を振り払うかのように、「どん底を知った女は強いよ! カラフルでキラキラでみんなが大好きな曲をやるよ!」と元気いっぱいに叫んだ内田。彼女はかつてソロ活動を打診された際、かなり迷った末にデビューすることを決断したことは有名な話だが、その頃の彼女の面影はどこへ行ったのかと驚くほどに、観客を楽しませようと素早く切り替える内田の姿が強く胸を打った。


 その後に披露された「Merry Go」は、内田のライブでは初めてとなるダンサー(しかも8人も!)を迎えた楽曲。おなじみになった客席のカラフルなペンライトに合わせ〈悲劇なら喜劇とカフェオレ〉と歌われる歌詞は、ついさっきの、そして今現在の内田を表しているようで、さらに効果的に響く。


 その後は「最近生まれたんだって! お久しぶり、去年の武道館以来かな?」と前置きし、ライブアレンジの「泣きべそパンダはどこへ行った」と、バンドメンバーも前に出て観客を煽る、内田にとって”はじまりの曲”「アップルミント」で勢いを完全に取り戻し、さらに加速するようにメドレーコーナーへ。「Growing Going」「ドーナツ」「Ruby eclipse」と立て続けに披露し、ラウドなバンドサウンドに合わせ、内田の力強い歌声が響き渡り、「絶望アンバランス」で一つのピークを迎えた。かと思いきや、「身体が溶けそうに熱いけど、まだ終わりません! アルバムを作るときに、ライブでもっと盛り上がりたいと思って制作した曲を!」と語り、『ICECREAM GIRL』の裏テーマである「SCREAM(叫び)」を担う「Under Control」、そして「キリステロ」へ。Bメロでは、客席から一斉にスクリームが巻き起こり、内田も狙い通りと言わんばかりの悪戯な笑顔を浮かべてみせた。


 再びダンサーが登場した「Breezin’」を挟み、ここからは”新たな内田彩”を見せるパートへ。「今までの勢いある曲もそうなんですけど、スタッフさんに『新しい内田さんの魅力を咲かせてほしい』と言われて、迷ったけど勇気を出して挑戦した曲」と前置きしたあとに歌った「Close to you」は、アーバンなギターカッティングや重心を後ろに置いたリズムが特徴的なシティポップス。続けて内田がアルバム制作時に「絶対に歌いたい!」と希望したhisakuniによる和風エレクトロスウィング「カレイドスコープロンド」と、セクシーな内田彩がどんどん顔を出す。


 シンフォニックなロック曲の「EARNEST WISH」と「Frozen」でスタジアムスケールのライブに相応しい雰囲気を演出して始まった後半にも、早速ハイライトが訪れる。硬質なブレイクビーツと切ないメロディが特徴の「Blue Flower」を終え、客席がピンクに染まった「ピンク・マゼンダ」と“作曲・坂部剛ゾーン”が訪れたあと、最新アルバムのキラーチューンである、声優フューチャーベースの最高峰「Yellow Sweet」がついに披露された。その後も「with you」→「color station」→「Floating Heart」→「with you」と、「with you」で挟むメドレーへ。このパートはこれまで築き上げてきた『内田彩とクラブミュージック』を総括するような痛快さを感じさせるとともに、内田のディスコグラフィーにおけるhisakuni・坂部剛の存在感を改めて思い知らされることとなった。


 そこから冒頭のMCを挟んだのち、「Say Goodbye,Say Hello」へ。東と宮崎を引き連れて花道に出た内田が、何かが吹っ切れたかのような勢いでこの曲を歌い上げる。彼女のここまでとこれからを総括するような歌詞は、聴き手も迷いのあったデビューや喉の手術など、様々なトピックを思い出すくらいなので、歌う側もやはりグッとくるものがあるのだろう。以降の「Blooming!」も一層エモーショナルに聴こえたし、「みんなとの笑顔でわたしも笑顔になれて、今ここで歌えます」と語って披露した「SUMILE SMILE」は、ある種の決意表明のようにすら感じられた。


 トロッコに乗り、会場を所狭しと回りながら涙を浮かべた「Sweet Dreamer」を終え、「あらためて歌の良さ、音楽の良さ、ライブの良さを実感することができました、ありがとう!」と叫び、最後は〈当たり前じゃなくなって 当たり前に気付いた〉という、喉の手術を乗り越え、改めて気付いた歌う喜び、ファンへの気持ちを存分に詰め込んだ「Ordinary」で本編は終了した。


 アンコールは、内田が「最後は賑やかに元気に行きたいなと思います!」と叫び、「Everlasting Parade」、そして2度目の「Say Goodbye,Say Hello」を披露。歌詞を引用しながら「何度でも何度でもさよならって言うけど、また逢いにきてね!」と観客に語りかけ、この日のライブは幕を閉じた。


 「Say Goodbye,Say Hello」の〈わたしがわたしをアップデートしてく〉という歌詞のように、内田彩とそのチームは、慢心することなく新たな音楽に挑戦し続ける。その化学反応が生んだ『ICECREAM GIRL』とこの日のライブを経て、次は一体どんな素敵なトライが待っているのだろうか。ライブが終わった直後から、そんな期待でいっぱいにならずにはいられない一夜だった。(中村拓海)


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