「ミネラル」を多く含む食品を見ると「体にいい」と感じて、つい買ってしまう……そんな人も少なくないようです。栄養学の用語に「ミネラル」という言葉はありますが、「ミネラル」という名前の栄養成分はありません。「ミネラル」とはどのようなもので、どんなときに必要なのでしょうか?
■そもそも「ミネラル」って何のこと?
|
|
最初に「ミネラル」とは何かを復習しておきましょう。ミネラルとは日本語で「無機質」のこと。栄養素のひとつではありますが、単一の成分ではなく、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄、亜鉛などなど、たくさんの種類があります。ミネラルはエネルギー源になることはありませんが、体内で筋肉や血液、骨といった体の構成成分になったり、エネルギーを作り出す際の代謝の補助をしたりなど、重要な役割を果たしています。
■どのくらい足りないの?
|
|
「日本人の食事摂取基準 2015年版」(厚生労働省)には13種類のミネラルについて必要量が記載されています。このうち成人女性で不足しがちといわれるものは、カルシウムと鉄です。この2つについて見てみましょう。
必要量の考え方はいろいろありますが、最も量が多い推奨量を示して説明しましょう。
実際の摂取量については、厚生労働省が実施している国民栄養健康調査の平成29年10月現在、結果が発表されているもののうち、最新版である平成27年度版の20歳以上の女性の平均摂取量を引用します。数字は推奨量、摂取量ともにすべて1日あたりです。
カルシウムの推奨量は15歳以上の女性で650mgに対して、摂取量は506mg。鉄の推奨量は月経の有無で推奨量が変わりますが、月経のある女性で18〜29歳の人は10.5mg、30〜69歳で11.0mg。摂取量は7.5mgです。
|
|
これを見ると、カルシウムは150mgくらい、鉄は3〜4mgくらいが不足しているという計算になります。ずいぶん不足している印象ですね。他のミネラルも同様に不足しているものが多いのですが、日本人が過剰摂取しているものが1つだけあります。ナトリウムです。
ナトリウムは食塩として摂取することが多いのですが、推定必要量は食塩換算で1.5g(ナトリウム600mg)に対して、20歳以上の女性の平均摂取量は9.2g(ナトリウムで3610mg)です。過ぎたるは及ばざるがごとし。不足だけでなく、摂りすぎによっても病気のリスクが上がることが分かりますね。
■ミネラルウォーターで補給できる?
コンビニなどへ行っても普通に見かける「ミネラルウォーター」。名前に「ミネラル」と入っているのだから、ミネラルの補給になるだろうと思った人もいるのではないかと思います。
その考え方は「正解・不正解」が入り混じっています。なぜなら、ミネラルウォーターにはたくさんの種類があり、含まれている成分も商品ごとに異なるから。
再びカルシウムを例にとります。最もスーパーやコンビニでよく見かける商品Aはカルシウムが100mlあたり0.6〜1.5mg。これでカルシウムの不足分150mgを補充しようとすると、少なくとも10リットル飲まなければなりません。
一方で、便秘解消によく効くと美容雑誌などでもてはやされる商品Bは100mlあたりカルシウムが468mg。商品Bを40mlも飲めばカルシウムは補充できそうです。でも、これで補充できるのはカルシウムのみで、他のミネラルを補充することはできません。
■軟水と硬水はどこが違う?
さらに、ここでもう1つの落とし穴。ミネラルウォーターには「軟水」と「硬水」があり、日本人が水道水などでなじみがあるのは軟水です。商品Aは軟水ですが、商品Bは硬水です。飲みつけない味で、美味しくないと感じる人も少なくないと思います。また、30ml程度であれば問題ない人が多いと思いますが、硬水を飲みすぎると下痢などの副作用が出ることも少なくありません(海外旅行で体調を崩す原因のひとつでもあります)から、ご用心。
そもそも、ミネラルの摂取量を満たしていれば栄養バランスも整っている、わけではありません。まずは1日3食、きちんと食べること、さまざまな食品を摂ることなど、「栄養バランスのよい食べ方」の基本に立ち返って食事を見直してみましょう。