【中年スーパーカー図鑑】40年ぶりに日本の納屋で発見され2億円超で落札! 今なお根強い人気を誇る「デイトナ」

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2017年10月31日 00:00  citrus

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今年の9月になって、1台のスーパーカーの車名が自動車界およびマスコミ界を賑わわせた。フェラーリが1968年に発表した365GTB/4だ。このクルマのプロトタイプスポーツで、レース参戦用にアルミ合金製ボディを纏ったモデルが5台製作されたのだが、このうちの1台は公道走行が可能だった。長年、希少なアルミボディのロードバージョンはその行方が不明だったが、何と日本の納屋で眠っていたことが発覚。これがサザビーズのオークションに掛けられ、180万7000ユーロ(約2億3000万円)で落札されたのである。今回はいまなお高い人気を誇り、折に触れて話題を提供する“デイトナ”こと365GTB/4で一席。

 

【Vol.6 フェラーリ365GTB/4】


1968年開催のパリ・サロンにおいて、フェラーリは新世代のスーパースポーツを発表する。それまでの275GTB/4の実質的な後継を担う「365GTB/4」が雛壇に上がったのだ。車名は従来のフェラーリ車の慣例に則り、365が12気筒エンジンの単室容量(cc)、GTがグランツーリスモ、Bがベルリネッタ(クーペ)、4がカムシャフト本数(V12の片側バンクに2本ずつ、計4本でDOHCヘッドを構成)を意味していた。


365GTB/4の基本骨格は、楕円チューブをメインとした鋼管スペースフレームに、カロッツェリア・ピニンファリーナのレオナルド・フィオラヴァンティがデザイン、スカリエッティが製作したスチールと一部アルミによるボディを組み合わせる。ホイールベースは275GTB/4と同寸の2400mmに設定。懸架機構は前後ともにダブルウィッシュボーン/コイル+スタビライザーで構成する。制動機構にはボナルディ製サーボの4輪ベンチレーテッドディスクブレーキを組み込み、タイヤ&ホイールには200×15G70または215/70VR15+センターロック軽合金製ホイールを装着した。

 

 

■究極のフェラーリ製FRベルリネッタの登場

 


FRらしいロングノーズに短めのテールセクション。4灯式のヘッドランプが特徴的だった

フロントに搭載するエンジンはボア×ストロークを81.0×71.0mmとした4390cc・V型12気筒DOHCユニットで、燃料供給装置にはウェバー40DCN20キャブレターを6連装。圧縮比は8.8:1に設定し、352hp/7500rpmの最高出力と44.0kg・m/5500rpmの最大トルクを発生した。オイル供給の安定化を狙って、潤滑方式にはドライサンプを採用する。組み合わせるトランスミッションには、フルシンクロの5速MTをセット。前部のエンジン/クラッチと後部のギアボックス/ファイナルは太いトルクチューブで結ばれ、シングルユニットとして4カ所でマウントする、いわゆるトランスアクスルに仕立てる。公表された性能は最高速度が280km/h、0→1000m加速が24秒と、超一級のパフォーマンスを誇った。


エクステリアに関しては、FRレイアウトらしいロングノーズに流れるようなルーフライン、短めのテールセクションで基本プロポーションを構成。4灯式のヘッドランプは初期型がアクリル樹脂のプレクシグラスで覆った固定タイプで、1970年より米国の安全基準に合致したリトラクタブル式に順次切り替わった。ボディサイズは全長4425×全幅1760×全高1245mm、トレッド前1440×後1425mmと、従来の275GTB/4よりひと回り大きくなる。車重も同車より重い1280kgとなった。2座レイアウトのインテリアについては、大小のVEGLIA製メーターをすべてナセル内にまとめたシンプルかつスポーティなインパネに、ゲートできちっと仕切った変速レバー基部、3本スポークのステアリングホイール、ハンモック構造で良好な座り心地を実現したバケットシートなどを装備。トランスアクスルを採用する割にはセンタートンネルが幅広かったことも、365GTB/4の特徴だった。

 


ハンモック構造のバケットシートは座り心地良好だった


1969年開催のフランクフルト・ショーでは、365GTB/4のスパイダーボディ(365GTS/4)が発表される。ソフトトップが収まるトランクリッド部を改良し、Aピラーやコクピット周囲を補強したスパイダーは、とくにアメリカ市場で高い人気を獲得した。また、同年開催のパリ・サロンではカロッツェリア・ピニンファリーナが新しい365GTB/4のスタイルを提案する。ボディと別色のAピラーおよびルーフにロールバー風のステンレスの飾り帯を組み合わせ、ファスナーで開閉できるビニール製リアウィンドウを備えた365GTB/4クーペ・スペチアーレ(Coupe Speciale)だ。スーパースポーツのエクステリアに新たな方向性を示した力作は、残念ながら市販化には至らなかったものの、プロトタイプに続いてカロッツェリア・ピニンファリーナ自らがボディをたたき出した稀有な365GTB/4として、今なおファンが語り継ぐスペシャルモデルに昇華している。

 

 

■レースでも輝かしい戦績を残す

 


公表された最高速度は280km/h、0→1000m加速が24秒。超一級のパフォーマンスを誇った

プロトタイプレーシングカーの「330P4」と「412P」が1967年開催のデイトナ24時間レースでポディウムを独占したことから、その記念的な意味、さらには販売上の戦略を込めて“デイトナ(Daytona)”のニックネームがついた365GTB/4は、その名に恥じずCompetizioneモデルがモータースポーツの分野で大活躍する。ル・マン24時間レースでは、1972年から1974年まで3年連続でGTクラスを制覇。さらに、1973年に生産を終了してから6年後の1979年にはデイトナ24時間レースに参戦し、当時の最新マシンと競って2位入賞という快挙を成し遂げた。


365GTB/4を販売する最中、フェラーリ自体は1969年よりフィアットの傘下に入り(フィアットがフェラーリの株式の50%を取得)、市販車部門をフィアットの管理下に置く一方でレース部門であるスクーデリア・フェラーリの運営を強化および安定化させる。その体制下の1971年、365GTB/4に代わる市販車の旗艦スポーツモデルの365GT4BBを発表し、1973年より販売をスタートさせた。


レース部門と市販車部門が並列していた時代のフェラーリが開発した最後の12気筒グランツーリスモである365GTB/4“デイトナ”。1968年から1973年にかけての生産台数は、ベルリネッタとスパイダー合わせて1406台だった。

 

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