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IoT、AI、セキュリティ、FinTech――次々とコンソーシアムを立ち上げる日本マイクロソフトの狙いは?

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2017年11月15日 13:23  ITmediaエンタープライズ

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写真日本マイクロソフトの取り組み
日本マイクロソフトの取り組み

 日本マイクロソフトが、「Industry "x-Biz" Community」と呼ぶ取り組みを加速させている。


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 日本マイクロソフトが支援する形で、さまざまな切り口からコミュニティーを立ち上げ、業界全体を巻き込みながら、新たな技術やトレンドと、それぞれの技術、業界を取り巻く課題を解決する活動を行うことになる。


●業種別コミュニティーの展開で市場にアプローチ


 その第1弾として、2016年2月に「IoTビジネス共創ラボ」を発足。東京エレクトロンデバイスを中心に、日本マイクロソフトが事務局を務める形で13社が発起会社となり、日本市場におけるIoTの普及とビジネス機会の拡大を目的に活動を開始した。


 IoTビジネス共創ラボは、「Microsoft Azure」をプラットフォームとするIoTプロジェクトの共同検証を通じてノウハウを共有するコミュニティーで、現在、420社が参加している。これまでに畜産分野での効率化や働き方改革関連の改善といった成果が上がっている。


 産業別のワーキンググループを立ち上げてIoTビジネスの開発に向けた取り組みを進めており、現在、ドローンを活用する「ドローン ワーキンググループ」をはじめ、「製造」「物流・社会」「ヘルスケア」「ビジネス」「分析」「Pepper」の計7つのワーキンググループが活動を行っている。


 ワーキンググループのほかにも、福島県におけるIoTの普及、ビジネス機会の拡大を目的とした「ふくしまIoTビジネス共創ラボ」を2017年6月に発足。続いて7月に「北海道IoTビジネス共創ラボ」と「中部IoT共創ラボ」、8月に「かわさきIoT共創ラボ」を発足し、地域展開にも乗り出している。


 また、2017年5月には、米MicrosoftとPreferred Networksがディープラーニングソリューション分野で提携を発表したのをきっかけに、「DEEP LEANING LAB(ディープラーニングラボ)」を発足。AIやディープラーニングを通じて課題を解決したい企業と、ディープラーニングのコンサルティングや展開を行う企業とのマッチングの場として活用されており、すでに1000人を超えるメンバーが参加している。


 さらに、2017年6月には「ID-BASED SECURITYイニシアティブ」を発足している。ラックを中核企業として、IDを活用したクラウド時代におけるセキュリティ対策の普及促進を目的に、企業連携を開始。ラックのほか、パーソル プロセス&テクノロジー(旧インテリジェンスビジネスソリューションズ)、F5ネットワークスジャパン、サイバートラスト、Sansan、日本マイクロソフト、富士通、マネーフォワードの8社が発足メンバーとして名前を連ねている。


 ネットワーク環境におけるセキュリティ対策に加えて、ユーザーやデバイスなどに個々に割り振られたIDを活用する「IDベースのセキュリティ対策」の普及促進に向け、セミナーの開催や共同検証の実施、技術資料の提供、導入事例の提供のほか、関連機関への働きかけといった幅広い活動を展開。すでに複数のワーキンググループが活動を開始しているという。


●非競争領域の共通課題解決を目指す


 そして、この流れで新たなコミュニティーとして設置したのが、「金融デジタルイノベーションコンソーシアム(FDIC)」だ。


 2017年11月1日に設立された金融デジタルイノベーションコンソーシアムは、日本マイクロソフトと野村総合研究所が中心となり、金融市場におけるデジタルトランスフォーメーションの推進に向けたコンソーシアムと位置付けられるもの。「金融クラウド」の実用性に関する共同検証の実施や、リファレンスアーキテクチャの策定を通じて、金融機関の業務改善や業容拡大、国際競争力向上などを目指すとしている。


 推進役を野村総合研究所が、事務局を日本マイクロソフトが務め、設立時にはインテック、インフォシスリミテッド日本支社、新日鉄住金ソリューションズ、電通国際情報サービス、日本システム技術、日本ビジネスシステムズ、日本ユニシス、ニューメリカルテクノロジーズ、FIXERが参加。日本マイクロソフトと野村総合研究所を加えて11社が名を連ねた。


 野村総合研究所 執行役員 金融ITイノベーション事業本部の横手実副本部長は、「ベンダーだけでは解決できない問題があり、金融機関が持つ非競争領域における共通の課題を解決するのが狙い。今後、金融機関の参加も呼びかけ、地に足の着いたコンソーシアムにしていきたい」とする。


 FDICでは、非競争領域と位置付けるセキュリティやコンプライアンス対応など、各社共通の検討課題について参加企業が情報を共有し、標準化のリファレンスアーキテクチャを設定することで、金融機関の業務改善や業容拡大を図り、工数の削減やIT投資の最適化、サービスリリースの短縮化による収益向上への貢献を目指すという。


 具体的な活動として、「金融クラウド活用ワーキンググループ」では、金融クラウドの実用性に関する実証実験を実施。2018年3月に改訂予定のFISC安全対策基準におけるセキュリティやコンプライアンス対応への配慮などを図りながら、金融機関での利用要件を充足する柔軟で利便性の高いクラウド基盤の標準化を目指す。


 また、「高度データ活用ワーキンググループ」では、金融機関における生産性向上や営業支援、顧客接点の強化、的確な規制対応など、高度なデータ活用によってデジタルトランスフォーメーションの推進に貢献することを目指す。


 さらに、「新技術ワーキンググループ」では、AIやディープラーニング、ブロックチェーンといった新技術を活用することで、新たなビジネスモデルの開発などを狙った次世代金融プラットフォームの在り方を検討。ユースケースの確立や実証実験の実施、リファレンスアーキテクチャの確立を目指すという。


 これらのワーキンググループは、3カ月に一度のペースで開催する予定だという。


 日本マイクロソフト 執行役員常務 パートナー事業本部の高橋美波本部長は、「Microsoftがアジア13カ国の金融サービス業界を対象に行った調査では、デジタルトランスフォーメーションの重要性を認識していると回答した比率は81%に達し、IoT、AI、次世代コンピューティングといったテクノロジーに注目が集まっている。その一方で、サイバーセキュリティに対する不安がデジタルトランスフォーメーション推進への障壁となっている。こうした課題を解決するためにも、日本マイクロソフトは、今回のコンソーシアムを支援していくことになる」とした。


 日本マイクロソフトでは、金融デジタルイノベーションコンソーシアムに対して、最新技術の共有や外部への露出、各コミュニティーとの連携、トレーニングカリキュラムの提供、パートナー企業への横展開などでの支援を行うという。


●非競争領域の効率化で競争力を強化


 FDICを設置した背景には、金融業界特有の課題がある。


 野村総合研究所の横手氏は、「すでにIT基盤市場はクラウド市場に代わられ、広告市場はネット広告市場に代わり、自動車市場ではUberのような新たな勢力が登場することで、大きな転換を余儀なくされる状況が生まれている。いずれも、新たなテクノロジーを活用した企業によって新たな市場が構成され、あらゆる業界で10年を待たずに1兆円規模での産業構造変化が見られている」と前置きし、「これらの業界で変化の原動力になったのは、“供給者本位”から“利用者本位”への転換である」と指摘する。


 利用者本位の転換として共通項にあげるのは、細かい単位でサービスが利用できる「小ロット」、必要なサービスがいつでもどこでも分かりやすく利用できる「迅速・簡便」、先行投資がなく、使ったら使った分だけ払う「変動費」、提供サービスが無駄なく構成され、低コストに利用できる「低価格」だ。


 「こうした他業界で起こっていることが、金融業界でも同様の動きとなって表れようとしている。既存の金融機関は金融サービスの提供が主事業となっているが、FinTechという流れの中で、既存の金融機関ではない金融サービス提供事業者との戦いが始まっている。これは敵になるのか、味方になるのか分からない存在でもある。その一方で、働き方改革やセキュリティ上の課題などへの対応も求められている」(横手氏)という。


 もともと金融業界は、最先端でITシステムを活用してきた。だが、多くの消費者がデジタルデバイスを活用しはじめる中、堅牢(けんろう)性や信頼性を求めることが重要な金融業界は、その流れに合わせていけなかった反省がある。


 「金融業界は、いつの間にか顧客の流れに取り残され、ちょっと遅れた立ち位置にある。結果として、金融サービスは使いにくいということにもつながっている。今後は、金融業界以外では、もはや当たり前のように使われている技術を活用する必要がある。FDICでは、非競争領域での効率化を進め、競争力強化のための原資を捻出したい」と横手氏は話す。


 非競争領域という点が対象であり、競争領域に直結するような銀行APIの活用などは対象外だ。「ビジネスの課題をどう解決するかといった点で議論を深めていく。セキュアで、より低コストで、共通的に利用できるようなものを目指す。そして、他業界で起こっている事例を金融業界にも適応したい」と語り、ホワイトカラーの働き方の可視化や、AIを活用したRPAによる業務の自動化、テレワーク環境の実現における課題解決などにも取り組むという。


●関心が高い領域にフォーカス


 日本マイクロソフトでは、今後も「Industry "x-Biz" Community」の取り組みを加速する考えだ。


 今後の取り組みとして、三井情報やリクルートキャリアを中心に「HRTechコミュニティ」を、年内の発足を目指している。


 日本マイクロソフトの平野拓也社長は、「コミュニティーは、必要なだけ増やしていきたい。業界を軸にして展開していくものや、IoTビジネス共創ラボのように業界の枠を超えたようなコミュニティーも想定している」と語る。そして、「デマンドの多いところ、関心の高いところ、あるいは悩みが多い分野を対象に増やしていきたい」とする。


 平野社長は、「具体的にいくつまで増やすという計画はない。また、具体的にどんなコミュニティーを増やしていくのかも未定。その点では無計画」と笑いながら、「今までのように、WindowsやOfficeという切り口からのプッシュ型提案ではなく、インダストリーソリューションをドライブしたり、事業にインパクトを与えたりするためには、お客さまやパートナーの関心が高い領域にフォーカスしていく必要がある。それに基づいたコミュニティーを設置していきたい」と語る。


 「Industry "x-Biz" Community」は、「地球上の全ての個人と全ての組織が、より多くのことを達成できるようにする」という企業ビジョンを掲げる日本マイクロソフトの新たな取り組みだといえる。


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