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「まさか君が僕を訴えるとは」性犯罪加害者たちの滑稽なほどの“被害者意識”

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2017年12月07日 16:02  AERA dot.

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写真斉藤章佳先生(右奥)とにのみやさおりさん(左手前)
斉藤章佳先生(右奥)とにのみやさおりさん(左手前)
 書籍『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)には、性犯罪事件の裁判で読み上げられる、加害者から被害者への手紙の典型例が掲載されている。痴漢、盗撮、強制わいせつ、強姦と種類を問わず、こうした手紙は性犯罪事件の刑事裁判にはつきものである。だが、これが見事なまでに心に響かない。真の謝罪の意も贖罪の思いも聞き取れないケースがほとんどだから上滑りして聞こえるのだ、と同書の著者・斉藤章佳さんは指摘する。斉藤さんは社会福祉士、精神保健福祉士として東京都大田区の大森榎本クリニックで、性犯罪加害者を対象とした再犯防止プログラムに取り組んでいる。

 形骸化しているどころか、被害者感情を逆なでするような謝罪文の読み上げなど、やめてしまえばいい。にもかかわらず続けられている背景には、加害者は「反省すべき」「謝罪すべき」という社会からのプレッシャーがある。だが、被害者は謝罪を求めているのだろうか。

「私は、自分に加害した本人からの謝罪を受けたことがあります」

 と語るのは、写真家のにのみやさをりさん。20数年前に、当時の上司からの性暴力被害に遭った。その後、仕事をつづけられなくなり、現在に至るまでPTSDに悩まされつづけている。

にのみやさをりさん(以下、にのみや)「加害者に謝罪してほしい、というのは多くの被害者が考えることだと思います。私は被害から5、6年経ったころに直接、話をする場を設けたことがあり、その場で加害者は土下座せんばかりの勢いで謝罪をしました。でも、その言葉も態度もすべて私のなかを素通りしていきました。むなしかったですね。そこに、心がないから」

 それは、加害者が自分のふるった性暴力による影響を知らないがゆえだと、にのみやさんは考える。

にのみや「被害者のその後を知らずに、自分が加害をしたその瞬間のことだけを謝っていると感じました。でも、私は被害そのものよりも、その後、後遺症とともに生きなければならなくなったことがつらかった。そのことについての謝罪を聞きたかったんです。加害者に被害への理解や謝罪の気持ちを求めても、徒労に終わるだけだと感じました。私は本当に謝罪がほしかったのではなく、『ずっとしんどいんだよ』『ここまで生き延びるのが、どれほど大変だったか』と訴えたかったのだと、いまならわかります」

斉藤章佳さん(以下、斉藤)「それは、加害者がもっとも想像できないことのひとつですね。彼らのなかに被害者は不在なので、想像が及ばないのです。謝罪を聞いていてむなしくなるのは、私も同じです。そう感じる理由はほかにもあって、彼らの謝罪は“許されること”を前提としているからです。許されたくて何度も謝罪する、それでも相手が許してくれないと、『こんなに謝っているのに許してくれないのか!』という気持ちへと変容していきます。これを“加害者の被害者意識”といいます」

 加害者における被害者意識は、被害者における加害者意識と表裏をなしている。

にのみや「被害のさなかにいても、私は自分さえ我慢していれば丸くおさまると思っていました。加害者は当時の私の上司であり、社内外から驚くほど信頼されている人でしたから、会社に被害を訴え出たら、『あなたのほうに辞めてほしい』と返ってきました。加害者からも『まさか君が僕を訴えるとは思わなかった』といわれました。私の訴えで周囲が迷惑している……まるで自分が加害者であるかのような心持ちになっていきました」

 性被害者への対応としては信じられないものだが、にのみやさんが被害に遭った20数年前はこれが一般的だった。こうして加害者はある意味守られ、被害者だけが孤立し、ますます追い詰められる。同時に、胸の内では「私が悪かった」という負の感情が醸成されていく。

にのみや「いまでも『そんな派手な格好をしているから』『夜道をひとりで歩くから』と被害者の自己責任を求める声が根強くありますよね。でも被害者は誰にいわれるでもなく、自分で自分を責めるんです。自分が我慢すればよかったんじゃないか、そもそも自分という人間がいなければこんなことは起こらなかったのに、と。頭では、それは違うとわかっているんですよ。私もほかの被害者には『あなたは悪くない、絶対に悪くない』と声をかけます。でも、『じゃあ、にのみやさんはどうなの?』といわれると、私は自分に非があったからこそこうなってしまったと思ってしまうんです」

斉藤「被害者に『騒ぐほどのことではないのに』『あなたさえ我慢すればよかった』といって加害者意識を刷り込むことは、絶対に許されないことです。にのみやさんの訴えは、会社という組織のなかで迷惑だと受け取られましたが、社会全体にもその傾向がありますよね。その背景に、女性は男性の要求や性欲を受け入れて当然だという前提があると私は思います。訴え出た被害者は、その前提を破ったとみなされるんです」

 被害者意識を募らせ、時として社会から守られることもある加害者。自分が悪かったと自身を責めつづけ、孤立していく被害者。それを当事者ひとりひとりの問題だけに矮小化してはいけない。私たちは、こうした現象を生む社会の構造に目を向ける必要がある。

斉藤「性暴力、性犯罪には、加害者と被害者がいて、両者は決して交わりません。でも、加害者と被害者が分断されればされるほど、加害者は加害行為の克服から遠ざかります。ゆくゆくは社会から孤立し、必然的に再犯リスクも高まります。世界の潮流では、事件後に加害者と被害者が第三者である専門家の仲介のもと対話し、理解しあう“修復的司法”が注目されはじめています。が、性犯罪にこれを適用するのは非常にむずかしいですね」

 斉藤さんのような、加害者と関わりのある人物にも接したくないと思う被害者は多い。もし自分に加害した当人につながったらという恐怖はぬぐえない。にもかかわらず、にのみやさんは斉藤さんが携わる性犯罪再犯防止プログラムで、加害者たちに被害の実態を語りかけている。伝えたいことがあるからこそだ。

斉藤「にのみやさんは加害者に対して、『朝起きてから寝るまでのあいだ、1分でいいから被害者について思い出すことを習慣にしてほしい』といわれましたね。自分の加害行為を知らず知らずなかったことにしようとする彼らにとって、あれは強いメッセージでした」

にのみや「犯した罪は、なかったことにはなりませんよね。でも彼らがそうしたい気持ちもわかります。そのほうが生きていきやすいから。一方で、いままで私が出会ってきた被害者の人たちも、私自身も、長く長く苦しんでいます。それが一生つづくかもしれない。加害者には時効があるけど、被害者には時効はありません。それだけのことをしたのだから、あっさり自分のしたことをなかったことにしたり、被害者を不在にしたりするのではなく、覚えていてほしいんです。たとえ1日1分だけでも」

 くり返すが、被害者と加害者は決して交わらない。しかし、それをいいことに加害者が自身のしたことへの責任を放棄するようでは、被害者はもちろんのこと、再犯リスクを考えると社会にとっても何らプラスにはならない。だからにのみやさんは語りかける。斉藤さんは、それを彼らの再犯防止に活かす。ふたりの活動が目に見えて実を結ぶまでには、長い時間がかかるはずだ。けれど、性暴力、性犯罪を1件でも減らすための確実な方法のひとつとなることは間違いないだろう。(取材・文/ライター・三浦ゆえ)

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  • 「こんなに謝っているのに何故許してくれないんだ」「君に裏切られるとは思わなかった」←こういった物言いを多用する方、おめでとうございます。貴方は立派なストーカー予備軍です。
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