ピロリ菌だけじゃない!胃がん発症には「環境要因」が影響

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2017年12月08日 12:01  QLife(キューライフ)

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主な要因・ピロリ菌の感染率は減少


国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長 津金昌一郎先生

 国立がん研究センター「がん情報サービス」の最新がん統計によると、2013年に新たに診断されたがんは推定86万例。うち推定13万例(男性9万例、女性4万例)が胃がんです。この数は、男性では全がん種のなかで第1位、女性でも乳がんに続いて第2位の多さで、増加傾向にあります。一方、高齢化の影響を調整した「年齢調整罹患率」は、男女ともに一貫して減少傾向に。胃がんは増えている?それとも減っている? ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社が開催した胃がん啓発セミナーで講演した、国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長の津金昌一郎先生のお話から、胃がんの発症リスクと、その対策をご紹介します。

 胃がんを含め多くのがんは、老化によってその発症リスクが高まります。そのため、超高齢社会を迎えた日本では、ほとんどのがん種で患者数が増加しています。さらに胃がんでは、主たる発症要因であるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染率が年代別の発症率に影響を与えています。

 ピロリ菌の感染率は、戦前〜戦後すぐに生まれた人で特に高く、ある調査では対象のおよそ9割が感染していたとの報告もあります。しかし、主な感染経路と考えられる井戸水を飲用する人が減るなど、衛生環境が改善したため、国内におけるピロリ菌感染者の数は減少。そのため、若年者の胃がんが減っていると考えられます。

 また、ピロリ菌に感染したからといって、すべての人が胃がんを発症するわけではありません。胃がんの発症には、ピロリ菌感染にプラスして、「環境要因」が影響すると津金先生は言います。この環境要因の代表例が「喫煙」と「塩分濃度の高い食品(高塩分食)」です。

国がん制作「胃がんリスクチェック」で今後10年のリスクチェックを

 他のがんと同じく、喫煙は胃がんのリスクを高めます。また、漬物や塩蔵魚や干物など塩分濃度の高い、高塩分食も胃がんの発症リスクを高めることがわかっています。ここで重要なのは、生活習慣病の予防などで話題になる「塩分摂取量」ではなく、食品の「塩分濃度」に注意が必要、ということです。国立がん研究センターの研究では、塩分濃度が10%程度と非常に高い、たらこやイクラなどの塩蔵魚卵と塩辛、練りうになどをよく食べる人で、胃がんのリスクが明らかに高くなったといいます。

 一方、胃がんの発症リスクを下げる対策としては、ピロリ菌除菌があります。これまでの研究から、ピロリ菌除菌によって胃がんのリスクを30〜40%低減できるという科学的根拠が整いつつあるとのこと。他にも、野菜や果物、緑茶は胃がんの発症リスクを下げる可能性が示されている食品とされていますが、その効果は「それほど高くない」と津金先生。「ピロリ菌除菌も予防策のひとつですが、たばこを吸わない高塩分・塩蔵食品を最小限に控えるといった生活習慣の改善も重要です」(津金先生)

 国立がん研究センターでは、40歳以上の人を対象に、自分自身の胃がん罹患リスクを調べられる「胃がんリスクチェック」(https://epi.ncc.go.jp/riskcheck/gastric/)を公開しています。これは現在の年齢、性別、生活習慣、ピロリ菌感染、慢性胃炎の有無などから導かれる今後10年の「あなたの胃がん罹患リスク」を調べるもの。国立がん研究センターが20年間にわたり10万人のデータを対象として調査・研究してきた結果に基づいています。喫煙をしている人や塩辛い食べ物が好きな人、すでにピロリ菌陽性と判定されている人は、このリスクチェックで今後10年のリスクを調べてみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)

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