ティラーソンが去り、また軍人がやって来る

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2017年12月09日 15:42  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<噂されているティラーソン米国務長官の更迭が現実味を帯びてきた。後任候補のCIA長官はやはりタカ派の元軍人>


退任説がくすぶり続けてきたティラーソン米国務長官が、いよいよ更迭されるかもしれない。


11月30日のニューヨーク・タイムズ紙の記事によると、トランプ大統領は後任にポンペオCIA長官を、CIA長官の後任にコットン共和党上院議員を充てる意向だという。


下院議員を3期務めたポンペオはCIA長官に起用されて以来、トランプと良好な関係を築いている人物だ。ホワイトハウスの大統領執務室で定期報告を直接行い、国家安全保障上の重要な決定にも大きな影響力を持ってきた。コットンも、大統領と考えの近い保守派の政治家として知られる。


ティラーソンが政権を去り、ポンペオとコットンの影響力が強まれば、アメリカの対外政策はより攻撃的なものになりかねない。特に、対イラン政策はその可能性が高い。ポンペオは下院議員時代に、イランの体制打倒に向けて議会が行動すべきだと主張しているし、コットンも6月に、イランの体制転覆を米政府の目標として明確に設定すべきだと述べていた。


それに対し、ティラーソンは穏健な立場を取り続け、15年のイラン核合意の維持と、外交的手段による問題解決を訴えてきた。北朝鮮問題でも、トランプの過激な発言とのバランスを取ろうとしてきた(その試みは、トランプ自身によって度々、そして公然と覆されてきた)。


軍事への傾斜が強まる?


国務長官就任後のティラーソンは、試練の連続だった。幹部職員が大量に国務省を去った上、国務省改革は順風満帆には程遠い。外交上の失態も相次いだ。夏にはサウジアラビアとカタールの外交危機を仲介しようとしたが、ホワイトハウスと足並みがそろわなかった。北朝鮮問題の外交的解決を主張したときも、トランプにあざ笑われた。


今回の報道に対し、国務省の職員は、疑念と衝撃と疲れが入り交じった反応を見せている。


「率直に言って、これがいいニュースなのか、悪いニュースなのか、私たちは判断できない。この1年ほどがあまりにひどい状態だったから」と、ある国務省職員は言う。最近の国務省は内部の混乱が続いており、職員は今回のようなニュースにあまり反応しなくなっていると、この人物は言う。


ティラーソン更迭報道に驚きは感じないと言う職員もいる一方、もうしばらくは職にとどまるのではないかと推測する職員もいる。ニューヨーク・タイムズなどへのリークは、ホワイトハウスがティラーソンに辞任を促すために仕組んだものだと疑う人たちもいる。


10月初めに、ティラーソンが7月にトランプを「間抜け」と呼んでいたと報じられたことをきっかけに、両者の関係は完全に悪化していた。それ以来、更迭の噂は絶えなかった。トランプは12月1日、更迭報道を「フェイクニュース」と否定したが、もしティラーソンが早期に退任すれば、(政権自体が交代した場合を除いて)過去120年で最も短命の国務長官になる。


そして、軍経験者のポンペオとコットンが国務長官とCIA長官に抜擢されれば、トランプ政権の「軍事化」が一層進みかねない。同政権では既に、ケリー首席補佐官、マティス国防長官、マクマスター国家安全保障担当補佐官など、軍人が中枢を占める傾向が際立っている。


ティラーソン退任後のアメリカの対外政策は、外交より軍事への傾斜を強めていくことになりかねない。


From Foreign Policy Magazine


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[2017.12.12号掲載]


ロビー・グレイマー、ダン・デ・ルース、ジェナ・マクラフリン


このニュースに関するつぶやき

  • トランプの人事にカリアゲ君は生きた心地していないだろうな。
    • イイネ!23
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