巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。
第80回 明るく振る舞う大切さと難しさ
「息子が刑事役やってる時にお父さんは何考えてんでしょうか?!」by浅野忠信
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【センテンスの生い立ち】
俳優の浅野忠信(44)の父親で所属事務所の社長でもある佐藤幸久容疑者(68)が、覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで警視庁に逮捕されていたことがわかり、12月5日に新聞などで報じられた。浅野は翌6日昼、自らのツイッター上に、主演を務める刑事ドラマの共演者らといっしょに撮った楽しそうな写真と、顔文字も織り込んだ明るいメッセージを掲載。苦境に対して強くたくましく立ち向かう姿に、共感と応援の声がたくさん集まっている。
【3つの大人ポイント】
- あえて明るく振る舞うことで周囲を安心させている
- 結果的に出ているドラマの宣伝にもつながっている
- 迷惑や心配をかけた各方面への配慮が行き届いている
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苦しいときほど明るく振る舞うことが大切――。浅野忠信の12月6日のツイートは、それを体現し、あらためて教えてくれています。さらっと書いているように見せていますが、たぶん書こうかどうしようか悩んで、文章を練り写真を選んで、批判される可能性も十分に考えつつ、勇気を出して書き込んだに違いありません。全体はこういう文面です。
息子が刑事役やってる時にお父さんは何考えてんでしょうか?!
と言うわけで落ち込んでる暇はありません!(^o^)!
刑事ゆがみは今日も頑張ります‼
2017年12月6日11時33分のツイート
浅野忠信の覚悟と心意気が感じられるこのツイートは、たちまち大きな反響を呼びます。12月10日16時の時点で、「いいね」がおよそ162,000件、「リツイート」が57,000件。1,200以上ついているコメントもほぼすべて好意的な意見で、「浅野さん、頑張ってください。貴方の振る舞いは支持します」「お父さんはお父さん。浅野さんは浅野さんでいいでしょう」「めっちゃカッコイイ」といった共感と応援の声が並んでいます。
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息子が刑事役やってる時にお父さんは何考えてんでしょうか?!
— 浅野忠信 ASANO TADANOBU (@asano_tadanobu) 2017年12月6日
と言うわけで落ち込んでる暇はありません!(^o^)!
刑事ゆがみは今日も頑張ります‼️ pic.twitter.com/G0xhOnJT0K
今の段階ではあくまで「容疑者」ですが、逮捕されたのは父親であり、しかも所属事務所の社長でもありますから、浅野の仕事への影響は大きいでしょう。事務所に所属する他のタレントに対しても、社長の息子として責任を感じているはず。ノンキに見せかけたツイートだけでなく、それを書いた前日の逮捕が報じられた日には、事務所のHPに「関係者、ファンの皆様へ」と題して「浅野忠信」の名前でこんなメッセージを掲載しています。
ご心配してくださっている皆さまの優しさに深く感謝します。
この度は、父(佐藤幸久)のことで多くの関係者にご迷惑をおかけしたこと、お詫び申し上げます。
僕も身内の一人として驚き、また心配もしております。父は大きな過ちを犯しましたが、僕にとってはたった一人の父ですので、今は父のことがとても気がかりです。
家族として何か寂しい思いをさせてしまっていたのかな、と思うと今後はより支え合って多くの時間を父とともに過ごしたいと考えています。
(以下略)
公式ページに載せる文章で不祥事をお詫びする場合は、本音を隠して建前の言葉を並べるのが常。ここまではっきりと父親に対する深い思いやりや、家族で守っていこうという姿勢を示しているのは、かなり珍しいと言えるでしょう。この文章からも、浅野の強い思いが滲み出ています。
上のメッセージと「息子が刑事役やってる時にお父さんは何考えてんでしょうか?!」というツイートの合わせ技が素晴らしいのは、各方面への配慮が行き届いていること。丁寧にお詫びした上で、心配をかけた関係者やファンを安心させ、これからも仕事をきっちりやっていきたいという決意を示し、しかも結果的に番組の宣伝につなげています。
当たり前ですが、父親の逮捕の連帯責任を浅野が取る必要なんてありません。しかし、良識ぶりたい人たちが無責任に批判してくる可能性はあります。そういう声が上がってこないのは、彼が堂々としていることが大きく影響しているはず。無難に神妙に反省していたら、違う展開になっていたかもしれません。あえて明るいツイートをした果敢な姿勢を見て、ますますファンになった人や、浅野忠信という俳優を高く評価した人も多いでしょう。
浅野が主演の「刑事ゆがみ」は、フジテレビ系で毎週木曜日夜10時から放送中です。原作は小学館の青年コミック誌「ビックコミックオリジナル」に連載中の井浦秀夫の同名漫画。彼が演じる型破りで偏屈な刑事・弓神と、神木隆之介が演じる真面目な刑事・羽生の凸凹コンビが、難しい事件を解決していく内容で、大人も楽しめるドラマだと高い評価を集めています。12月14日は最終回。ドラマの中身も視聴率も大いに盛り上がってほしいものです。
【今週の大人の教訓】
強い思いを込めた行動は、半端な批判なんて寄せ付けない