PRESIDENT Onlineに、国立国語研究所教授で、『形容詞を使わない 大人の文章表現力』(日本実業出版社)という書籍の著者でもある石黒圭さんという人が、「大人の文章テクニック」について、あれこれとご指南されていたので、今日はそれについてあれこれと考えてみたい。
要約すれば、
文章に説得力を持たせたい(=大人な文章)なら、「すごい」「おもしろい」「多い」「きれいな」などの「形容詞」を極力使うな!
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……ってことで、その理由は
形容詞は直感的で主観的な言葉ゆえ、(文章に)多用すると読者の理解を得にくくなるから
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……なのだそう。「んじゃ、具体的にはどうすればいいの?」ってことになると、たとえば形容詞を次のように“言い換える”のが有効であるらしい。
- プロの投手の球は生でみるとすごい→プロの投手の球は生でみるとその迫力に圧倒される
- 早朝の羽田空港は人が少なかった→早朝の羽田空港は人が少なく、いつもは行列ができる保安検査場に誰も並んでいなかった
さすが、言語を体系的に研究されているお方だけあって、一応「プロの文筆家」を名乗る私からしても耳が痛い素晴らしいアドバイスである(※いきなり「素晴らしい」なんて書いちゃってますけどw)。
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ただ、この石黒さんが提唱する「形容詞不要論」(※「不要」とまではおっしゃってはいないのだけれどw)がまったく通用しないケースだって、昨今の日本言論界(←大袈裟w)においては、確実にいくつか実在する──それだけはここで付け加えておきたい。
まず一つは「ファッション業界」。もう20年近く前、私が初めて某赤文字系女性ファッション誌の仕事を受け、入稿したときの話。担当編集者から「ゴメスさんの原稿、理屈っぽすぎてファッション誌っぽくない!」と、オールダメ出しを食らってしまった。仮に、スカートについての説明文を書くなら
「ヒラヒラ部分が、まるで金魚の尾のように揺れ動くさまは周囲の目を惹くこと間違いなし」
ではなく、
「ヒラヒラ部分がラグジュアリー(ハートマーク)」
が正解なのだ。ファッション誌の場合は形容詞を多用することによって「読んでいてなんとなくウキウキしちゃう感じ」を表現するのがポイントで、しかもファッション誌というのは基本80w〜100wあたりのキャプションをメインに構成されているがゆえ、形容詞の一言で一個のセンテンスを完結させ、使う文字数をできるかぎり減らし、そのぶん別の情報を枠内に一文字でも多くブチ込むことが重要だったりする。言い方を変えれば、「ラグジュアリー」だとか「かわいい」だとか「おしゃれ」だとか……の形容詞のストックをどれだけたくさん持っているかが、“ファッションライターとしての評価”に直結するのである。
あと一つは「LINEのやりとり」。とくに今の若い男女たちは、プライベートだと10行や20行にも到ってしまう、ロジックで縦に長い“フキダシ”を嫌う傾向が強い。したがって、回りくどい“解説文”を「ヤバすぎ」だとか「エロい」だとかの形容詞で片付けてしまうテクニックを磨き、最悪でも3行でコミュニケーションを交わさねばならないのだ。
以上、あくまで「例外もある」ことを踏まえながら、皆さんもこれからは「形容詞に頼りすぎない文章作成」を心がけてみてはいかがだろう。