百害あって一利なし。「安易な安売り」をやってはいけない理由

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2017年12月13日 19:33  新刊JP

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『もう安売りしかないと思う前に読む本』を著した高橋健三さん
商売をしていて、想定通りの売上を上げられないときに、あなたならどんな手を講じるだろうか。多くの人は「値段をもっと下げよう」、つまり安売りを考えるはずだ。

確かに、消費者にとって安売りは魅力的。一時的に客は集まるだろう。しかし、安易に安売りに走ってしまうと、本当のお客も手放すことになるかもしれない。

そう警鐘を鳴らすのが“なにわのマーケティングコーチ”高橋健三さんだ。
著書『もう安売りしかないと思う前に読む本』(セルバ出版刊)には、安易に価格(プライス)に走らず、商品(プロダクト)、販路(プレイス)、販促(プロモーション)という「4P」でビジネスを考える思考法が書かれている。

ここでは高橋さんに「安易な安売り」のデメリットや、マーケティングの基本を教えてもらった。

(新刊JP編集部)

■「安易な安売り」は百害あって一利なし。その理由とは?

――「安売り」は売上をあげるための常套手段と考えている経営者は多いと思います。しかし、高橋さんは安易な安売りに対して警鐘を鳴らしていますが、それは一体なぜなのですか?

高橋:安売りで来店されるお客さまは、その安さに魅力を感じています。ですから、もっと安いお店があればすぐにそちらの店へと逃げてしまいます。つまり安売りで獲得したお客さまはお店にとって本物のお客さまにはならないということです。

――おそらく、それは多くのお店の方が実感されていると思います。それでも安売りを選んでしまうのはなぜなのでしょう。

高橋:構造的に言うと、世の中が相対的にデフレ化している中で、ユニクロ、ニトリ、無印良品など大手も含めて、価格のラインを下げないとお客さまが来店してくれないという大きな前提があります。

その中で、価格以外で勝負をするならば、プロダクト(商品)の魅力をあげる方法もあるのですが、多くのお店は独自のプロダクトでの大きな差別化は難しい。そうすると、価格しかいじりやすいところがないんですよね。

また、消費税がもうすぐ上がるという話もありますが、それが近付くにつれて財布の紐が固くなっていきます。消費者は、自分が好きなものにお金を出すけれど、それ以外は安さと実用性があれば良いという感覚になっているという側面もあります。

――ただ、高橋さんは「安易な安売り」に対して警鐘を鳴らしているだけで、安売り全体を否定しているわけではありません。

高橋:そうです。安易な安売りと攻撃的な安売りというのがありまして、安易な安売りとは3%オフ、5%オフなど、まわりに同調しただけで、あまり反応を得られないもの。攻撃的な安売りというのは、「70%オフ!ただし先着10名様限り」みたいな、話題性があり引きのあるものです。これは新商品を体験してもらうための話題作りの値下げと割り切れば、後々に本物のお客さんになってくれる可能性も出てきます。

つまり、目的なき安売りはNGということです。ほとんどの安売りが実は安易なタイプで、みんなが安売りしているから自分たちも、という大きな波に巻き込まれている形ですよね。

――では、本物のお客さんとはどんな存在なんですか?

高橋:本物のお客さんは、そのお店が提供している商品やサービスのファンですね。また、店員、店主やオーナーのファンでも良いです。その店や商品にロイヤリティを感じてくれる人は本物のお客さんと言えますね。このようなお客さんは用事がないときでも、ふらりと立ち寄ってくれることがひとつの特徴です。

――「安易な安売り」のメリット、デメリットを教えて下さい。

高橋:実は「安易な安売り」のメリットって特にないんですよ。一方のデメリットは利益が減る、もしくは出なくなること。また、それ以上に問題なのが、安易な安売りを続けると、商品に対する信用がなくなるとともに、それを売っているお店に対する信用もなくなっていきます。だから「百害あって一利なし」なんです。

――そんなデメリットだらけの「安易な安売り」に代わる打ち手を説明しているのが『もう安売りしかないと思う前に読む本』です。本書では「なにわ製パン」という架空のパン屋をモデルにしつつ、マーケティングの4Pを学べる一冊になっていますね。

高橋:そうですね。「なにわ製パン」に特定のモデルはないのですが、商店街の小売店によくある売上げが落ち込んで悩んでいる場面を想定しています。

この「なにわ製パン」は私がセミナーでマーケティングの4Pを教える際に、面白く分かりやすい方法は何かないかというところで、身近な事例として作ったものです。10年以上、このお店の生き残りアイデアをセミナーの入り口として使っています。

――その4Pとは「プロダクト(商品)」「プレイス(販路)」「プロモーション(販促)」「プライス(価格)」ですよね。この4Pを駆使すればマーケティングは上手くいく、と。

高橋:売上を伸ばそうとしたときに、どんなアイデアであっても必ず4Pの枠に当てはまります。この本は、小さな企業向けの4P戦略の実践ガイドのような気持ちで書いたのですが、そう言うと「マーケティングとか4Pなんか俺には関係ない」と敬遠する経営者もいますから、このような分かりやすいタイトルにしました。

――この手の話でいうと、近年はインターネットでの販路拡大やプロモーションが非常に伸びていますよね。ただ、ウェブの使い方に疎いままネットに手を出そうとして失敗する例も多いと思うのですが、中小企業がウェブを使う上で気をつけるべきことは何ですか?

高橋:詳しくないからといって業者任せにしないことです。先ずは入門講座などに参加して自分自身が、何ができて何が出来ないのかという構造を理解することが重要です。全体像が分かった上で、自社が活用すべき範囲をきちんと想定した上で取り組めば、大きな失敗はしないと思います。

(後編へ続く)

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