ここ数年、日本で一気に「クラフトビール」が広まった理由

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2017年12月18日 14:00  citrus

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■なぜクラフトビールは日本に浸透したのか

 

「クラフトビール」という言葉がだいぶ浸透してきた感がある。2012年あたりからマスメディアでもクラフトビールという言葉を見かけるようになったが、ターニングポイントは2015年1月、キリンビールが100%子会社「スプリングバレーブルワリー」を設立したことだろう。このニュースは多くのメディアに取り上げられ、同時にクラフトビールという言葉も浸透していったように思う。

 

大手メーカーであるキリンビールは、2014年にもクラフトビール国内最大手のヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)と業務提携をしたり、2017年にはアメリカ・ニューヨークの「ブルックリン・ブルワリー」と資本提携をするなど、クラフトビールに関するニュースを提供している。

 

 

■発端は、普通のビールじゃ“つまらなくなった”から?

 

元々、クラフトビールのブームはアメリカで始まり、日本はもとより世界に広まっていった。アメリカでは、1986年には124醸造所だったが、2000年には1,566醸造所、2017年には6,000以上にまで増えており(うち98%が小規模なクラフトブルワリー)、空前のクラフトビールブームとなっている。(Brewers Association 発表資料より)

 

これは大手メーカーのビールへのカウンター、つまりライトなラガービールばかりで面白くない、という理由、そして自家醸造が認められているという点が関係していると言える。

 

日本でも、アメリカでのブームを受けて、アーリーアダプターとなったビールファンやビールマニア(アメリカではビアギーク Beer Geek と呼ぶ)が、個性的なビールを支持し、広めていった経緯がある。だが、大手メーカーがスポンサーとなっているマスメディアでは、取り上げられづらく、その火は燻っていたと言えるが、そこに大手メーカーであるキリンビールが参入したことで一気に「クラフトビール」が広まった。

 

ただ、大手メーカーが参入すればブームになるというわけもなく、現在のブームにつながったのは、クラフトビールには多様性があり、見た目やネーミング、そして何よりも味わいを「楽しめる」ものだったからだと考える。

 

いくつか個性的なビールを紹介してみよう。

 

【ポーター(スワンレイクビール)】

焙煎した麦芽を使った黒ビールで、クリーミーな泡と香ばしい苦みが特徴。1998年からほぼ毎年、ビールのコンペティションでメダルを受賞し続けている。大手メーカーの黒ビールと一番違うのはその香りで、香ばしさだけではなく、すっきりとした鼻に抜ける香りを楽しむことができる。ペアリングはグリル等、若干の焦げが美味しいとされるもので、あっさりとした和食のようなもの、例えば焼き鳥(タレ)がオススメだが、チーズがこんがりと焼けたピザにもマッチする。

 

【其の十(志賀高原ビール)】

志賀高原ビールの十周年、そして10番目のIPAとして生まれた「其の十」は、IBU(国際苦味指数)75、アルコール度数 7.5% という、数値的には強いビールだが、飲んでみるとフルーティーで飲みやすく、その苦味がクセになる素晴らしいクラフトビールである。透き通るような綺麗な苦味、フルーティーなビールを体験したい人にオススメ。このビールは食事と一緒に楽しむというよりは、ビールだけをじっくりと楽しみたい時にオススメ。

 

【ブルームーン(モルソン・クアーズ・ジャパン)】

 

小麦やバレンシアオレンジの皮を使うことでクリーミーな口当たりやフルーティーな香りを特徴としたビール。「ビールは苦くて好きじゃない」と思っていた人に「これなら飲める、むしろ好き!」と、アメリカでも多くの人にビールの多様性を伝えた。明るい時間からリラックスのために飲んでもいいし、鶏肉料理やピザ、パスタなどとの料理とも相性がいい。日本でも樽生が飲めるお店が増えているし、Amazon等で購入して自宅で楽しむこともできる、距離的にも飲みやすいビールと言える。

 

 

■醍醐味は、フードとの「ペアリング」

 

ただ“飲む”だけではなく、いろいろな料理とのペアリングを楽しむことができるお酒はそんなに多くはない。苦い、甘い、酸っぱい、こってり、すっきり等、味にも多様性があるクラフトビールだからこそペアリングの楽しみが広がるのである。

 

ペアリングの提案に力を入れているビールブランドの例として、先述のブルームーンが挙げられる。

 

 

パクチーたっぷりトムヤムクン鍋

ムール貝のブルームーン蒸し

パクチーたっぷり豚しゃぶの冷製フォー 【出典】ブルームーン公式HP

日本版公式サイトでは餃子や鍋、ピザやカナッペとのペアリングを紹介している。ブルームーンは小麦を使ったビールなので、小麦を使った料理との相性がいいし、他にもコリアンダーシードやオレンジピールが使われているため、スパイシーな料理のペアリングも楽しめる。ただ、フルーティーなビールとして飲むのもいいが、こうしたペアリングを楽しむことで、さらにクラフトビールの魅力に気づくのではないだろうか。

 

 

■ビールとフードの相性は「色」でわかる?

 

クラフトビールとのペアリングは、一概には言えないがビールとフードの色が近いものを選ぶと大きな間違いは無いだろう。淡い色のビールであれば鶏肉、濃い色のビールであれば牛肉、のような感じで色の近いものを試してみてほしい。また、先述のブルームーンのように、コリアンダーシードとパクチー等、原材料と近いものも相性がいいことが多い。

 

ビールは笑顔が似合うお酒、難しく考えずに、何よりも「多様性や個性を楽しむこと」を優先してもらえれば、現在クラフトビール人気の一端を理解してもらえるのではないだろうか。

 

 

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