「メタボリックシンドローム(以下「メタボ」)」という言葉が2005年に誕生して12年。当時、栄養と肥満について研究している大学院生だった私もすっかり栄養科の古狸となりました(笑)。
■想定以上に認知された「メタボ」という概念
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そんな「メタボ」ですが、もともと基準ができた際は、医療関係者の間で情報共有できればという意図だけであったのに、気づけば「メタボ」という言葉を知らない日本人はいないというくらいに有名な概念になりました。
一般消費者が、「メタボ」という言葉を通じてそれぞれの健康について興味を持ってくれるようになったのは、肥満を研究してきた管理栄養士の私としてはとてもうれしい限りです。
このような背景から、最近は、自力でメタボを解消しようとする人のためにさまざまな商品が開発されて人気を集めています。先日はこのような記事もありました。
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「消費者ニーズ高く、機能性表示食品抗メタボ関連500品超」
記事によると、メタボ人口は2000万人を超え、ダイエット・抗メタボ食品市場は4000億円超えだそうです。どちらも恐ろしい数字ですね。2017年11月現在の日本人の総人口が1億2672万人(統計局 人口推移)ですから、国民の6人に1人以上がメタボという計算になります。総人口は赤ちゃんや高齢者も含んだ人数ですから、働き盛りの世代に限れば、もっと割合が高くなります。
■トクホや機能性表示食品の効果って?
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ただでさえ忙しい働き盛りの人たちにとっては、「トクホなら、なんとなく健康になれそうな気がするし、食品だから買いやすい」と薬局などの目立つ位置に販売されているトクホや機能性表示食品に手を伸ばしたくなるのが心情です。
ところが、正直、トクホや機能性表示食品のお茶を飲んだからと言って、わかりやすい効果が出るわけでもない気がするし、それでいて一般的な商品よりは割高に感じられます。トクホや機能性表示食品とはどのように付き合っていくのがよいのでしょうか。
ここでトクホや機能性表示食品について再度、まとめておきます。
トクホ:個々の商品について健康効果をその商品を使って検討し「消費者庁」の審査を受けて承認を受けた商品。
機能性表示食品:過去の論文等を紐解き、その食品に含まれている栄養素の健康効果について消費者庁に届け出たもの。審査制ではないので、受理されればOK。
この2つの条件を比べると、トクホのほうがより複雑な手続きを経ていますが、パッケージだけだとどちらなのか一瞬、見ただけでは見分けがつかないものも多くあります。詳しくは『トクホ製品だから健康にいい!」は本当か』で解説していますので、併せてご覧下さい。
■機能性食品のメリット・デメリット
また、それぞれの健康効果についてはどう考えればよいかというと、成分は入っていますが、やはり薬ではないので、即効性は期待しないで下さい。
例えば、バイキンマンと戦っているのに、顔が濡れて力が出ないアンパンマン。バタコさんが届けてくれた新しい顔に取り替えたら急に元気になった……、ほどの奇跡は起こらないということです。
ただし、即効性がないということは副作用も出にくいということでもあります。長く飲み続けることが可能です。長期のエビデンスがあるものは今のところほとんどありませんので実際のところは分かりませんが、1日数十円の差で健康効果が得られるかもしれないという期待はしてもよいのかもしれません。また、「今日はちょっと体にいいことした」という満足感から、精神的な安定が得られる効果は大きいと思います。
また、プラセボ効果といいますが、例えば、血圧が下がると信じて飲めば、薬効のない薬でも血圧が下がる人が一定数います。まったく効果のある成分が入っていないラムネ菓子のようなものでも効果があるのです。トクホや機能性表示食品は健康効果のある成分が含まれているわけですから、効果が出る人もいると思います(全員に効果があるかどうかは、分かりません。繰り返しになりますが、薬ではないので)。
いずれにしてもトクホや機能性表示食品は、「これを飲んでいるから・食べているから大丈夫」ではなく、健康になるための補助的な役割であることをお忘れなく。