受刑者が刑務所の病院を訴える 激痛のあまり指を食いちぎるも「鎮痛剤はダメ」(米)

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2018年01月19日 05:13  Techinsight Japan

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自ら指を食いちぎった受刑者に鎮痛剤処方されず(画像は『RawStory 2018年1月13日付「Prisoner chews own fingers off」(Shutterstock)』のスクリーンショット)
米アリゾナ州の裁判所に12日、非常に珍しい起訴状が提出された。受刑者人権擁護員会からの弁護士がとある刑務所内で男の受刑者と面会し代理人となって提出したもので、その受刑者は自らの指を食いちぎるも医師に鎮痛剤の投与を拒まれて激痛に耐えているとのこと。あまりにも不当な扱いだとして医療施設の責任者などを訴えることを決意したという。『Newsweek - RawStory』などが伝えている。

アリゾナ州立のある刑務所に収監されている男の受刑者(氏名などは明らかにされず)が、そこの保健医療施設を提訴した。刑務所内の不当な扱いや劣悪な状況について、2012年には受刑者が集団で訴えることもあったアリゾナ州。2015年には和解に至ったが、アリゾナ州は改善措置として刑務所の保健医療行為は民間委託とすることを決定し、「コリゾン・コレクショナル・ヘルスケア(Corizon Correctional Healthcare 本拠地:テネシー州ブレントウッド)」社が受託業者として選ばれていた。

このたび原告となった受刑者は麻痺があるため車椅子を必要としており、かつて負った怪我が原因で体の痛みにも悩まされていた。どうしても鎮痛剤が欲しいとして男は指を噛むことを始め、ついには自分の左手の指3本を食いちぎった。コリゾン社による医療施設で激痛を緩和してくれるよう訴えたが、処置はなされるものの鎮痛剤は投与してもらえない。涙とともに「あまりの痛みで死んだ方がましです。でも死ねない。出所を待っていてくれる娘がいるから」などと弁護士に訴えたその受刑者。実際にベッドの脇には娘の写真が飾られていた。

デイヴィッド・ダンカン判事は先月、その起訴状をもとにコリゾン社の責任者であるリチャード・プラット氏に出廷を求めている。「過去にはガンを患った受刑者に痛みの緩和ケアをしてあげないような状況もあったようですね。(苦痛を呻く声で)あなたも夜は眠れなかったことと思いますが、いかがでしたか?」と尋ね、たとえ囚人といえども最低限の医療行為を受ける権利があることを諭した。もっともプラット氏は「医療スタッフには適切な治療をするよう指導している」と原告の言い分を否定し、施設はすべての受刑者に憲法が定めた通りの医療行為を施していると主張した。一方で、メディアの取材にコリゾン社の広報担当者は「職員は低い賃金で働いており、それは州が予算削減を目指しているからです」と不満をぶつけたという。

アリゾナ州の刑務所では、以前にも37歳の女の受刑者が「胸にしこりがある。姉が乳がんで死亡した」と訴えたにもかかわらず、マンモグラフィの検査を拒否。彼女は乳がんを発症し、数か月も遅れて治療が開始された。しかも化学療法の苦しみに対して処方されたのは、軽い鎮痛剤のみという冷酷さであった。州が刑務所の予算削減を謳っていることもあり、当然ながら企業は高価な薬剤の投与を避け、いかに利益を上げようかと知恵を絞るもの。受刑者にも医療行為を受ける権利があることを忘れ、企業としての営利追求が優先になってしまうことは否めない。弁護士はコリゾン社施設ばかりか州による民間委託の方針、在り方についても責任を追及していくものと思われる。

画像は『RawStory 2018年1月13日付「Prisoner chews own fingers off」(Shutterstock)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)

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  • まあ、囚人はしねということなのか。まあ、企業ならそうなるわなぁ
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