『THEカラオケ バトル』『歌唱王』『音楽チャンプ』……素人の歌唱力競う番組が増えているわけ

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2018年01月20日 10:02  リアルサウンド

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 昨今、『THEカラオケ バトル』(テレビ東京系)、『歌唱王〜歌唱力日本一決定戦〜』(日本テレビ系)、『今夜、誕生!音楽チャンプ』(テレビ朝日系)など、素人の歌唱力を競う番組が増加傾向にある。それらの歌番組は、広くお茶の間から親しまれている印象だ。


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 では、なぜ今、素人がメインの歌番組が人気を博しているのか。その理由について、1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超えるという、芸能・テレビ・ドラマ解説者の木村隆志氏に、製作側と視聴者側の二つの視点から分析してもらった。まず、製作側のメリットについて、木村氏は次のように語る。


「作る側からすると、大きく分けて二つのメリットがあります。お金の面と鮮度の面。タレントと比べると製作にかかるコストは非常に安い。さらに、出演者が名も知れない素人ということで、新鮮さがあります。よく、テレビ番組への批判として、お笑い芸人の方をはじめ、同じタレントさんばかりが出演し、似たようなやりとりが繰り広げられて飽きてしまったという声を耳にします。その点、素人が出演する番組は、彼らのことを全く知らない状態から始まるので、視聴者が予想もしない展開が生まれることがほとんど。つまり、予定調和じゃない面白さがある。特にテレビ東京の番組『THEカラオケ バトル』は、そう言う要素が強いです」


 だが、製作側のメリットよりも、視聴者側からのニーズの方が高いと話す木村氏。


「素人の方が出演している歌番組は、とんでもなく歌が上手い人や不思議なキャラクターの方が出たりするので、何が起こるかわからない人間ドラマが魅力です。また、苦労してきた過去や抱いている夢など、彼らの背景も絡めて、一つの番組になっており、人生が垣間見えるのも、視聴者にとっては共感しやすいポイント。製作サイドが誘導するような演出も少なく、素直に楽しむことができます。何より、素人の方々は歌が好きなんだということが画面越しから伝わってくるほど、本当に一生懸命熱く歌うので、ドキュメンタリーとして感情移入しやすいんです」


 さらに、視聴者の“上手い歌を聞きたい”というニーズの高まりは、2000年以降の音楽シーンの潮流とも関係があるのではないかと木村氏は指摘する。


「現代のアーティストは、歌謡曲時代の歌手たちのように圧倒的な歌唱力がある人はあまり多くない印象があります。シンガーソングライターのように歌うこと以外にも音楽の才能がある人が歌っていることも多い。また、デビューの仕方が多様化したこともあり、2000年代に入ってからは、歌唱力よりも才能や個性、ビジュアルが重視される傾向にあるため、そういう現状に辟易している視聴者も少なくないでしょう。それが、純粋に歌が上手い素人を求めることに繋がったのかもしれません」


 最後に木村氏は、老若男女関係なく好まれるポピュラーソングで競い合うという番組の仕組み自体が、多くの視聴者に支持される大きなポイントであると解説した。


「素人が出演する歌番組では、昔流行った曲が歌われることが多い。年齢が高い方にとっては、懐かしいし、10代20代の若い人にとっては新鮮に感じられ、名曲の良さを改めて堪能できます。また、ただの歌謡ショーだと、あまり視聴率が見込めませんが、カラオケで点数を競うような形であれば、番組としてのメリハリが生まれ、エンタメ性も加わるので、視聴層が広がります。さらに『THEカラオケ バトル』などは、ガチガチのプロ志向の方たちばかりではなく、されどNHKの『のど自慢』ほど緩くもない。そんな程よい雰囲気だからこそ、長く続いているのではないでしょうか」


 素人の歌唱力を競う番組は、出演者たちの人間ドラマとともに、シンプルに歌声と楽曲の素晴らしさにふれることができる機会としてお茶の間から広く親しまれているようだ。(文=戸塚安友奈)


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