「子連れを断らない居酒屋」も「灰皿を出す飲食店」も、もう客の“良心”に丸投げするのはやめてほしい

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2018年01月27日 01:00  citrus

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「グルメジャーナリスト」の肩書きを持つ東龍さんという人が書いた『居酒屋は子連れ客の入店を許すべきか』というタイトルのコラムが、Yahoo!ニュースのトップに掲載されていた。

 

私は、この東龍さんの食に関する原稿がわりと好きで、わざわざ検索まではしないけれど、ネット上で東龍さんの名前を見つけたら必ず目を通すようにしている。たまたま読んで「コレ、完成度高いわ…」と感心した文章が、よくよく確認したら東龍さんだったケースも多い。

 

取り上げたテーマの裏付け的なデータ、他の読み物からの引用を豊富に取り入れており、東龍さん自身が導き出した結論とは相反する意見や現象についても、その“言い分”を丁寧に紹介、分析されているので、文字数はけっこう多くなりがちだったりするのだが、たとえば「食べ放題サービス=ビュッフェ(バイキング)スタイルとの向き合い方」……など、じっくりと噛み砕きながら熟読していけば、(食に関して)これまで私がもやもやしていたちょっとした疑念を晴らす、なんらかの啓示を与えてもくださる。

 

さて。褒め殺しはこのくらいにしておいて、今日の本題へ入ろう。「子連れ居酒屋の是非」である。すでに、方々のメディアで語り尽くされた感もある“今さら”なテーマだが、東龍さんの食コラムはこういう「旬」という概念のない、(半)普遍的な問題提起のときこそ真価を発揮する。先にも述べたように、昨今の世論の主流を占める「A」という意見と、その「A」の意見と対立するかたちとなっている「B」という意見の根拠についても、客観性を持って“理解”の弁を展開しているからだ。また、褒めちゃいましたね(笑)。

 

で、今回、東龍さんが導き出したのは、

 

ファストフードであれば食通は見向きもしないし、(客単価が何万円にも上がる)ファインダイニングであれば食に興味がない人は一生訪れることもないかもしれないのと同様、飲食店では基本的に、すべての客をターゲットにするのは難しい。

したがって、もし居酒屋が子連れ客を許可するのならば、子連れ客を別のエリアに案内したり、時間帯を制限したりして、本来のターゲットを尊重すべきで、しかも、授乳したりオムツを替えたりする場所やベビーカーの置き場……ほか、子連れ客が快適に過ごせる空間も確保する必要もある。

 

……といった結論で、「それができないならどちらかのターゲットを切り捨てるしかない」っぽいニュアンスを暗に匂わせている(風に私は感じた)。

 

現実的な話、東龍さんが提案するような「子連れ客からオシャレな客までもが完璧に心地良く共存できる居酒屋づくり」なんて、余程の敷地面積がなければ物理的に不可能ゆえ、たいがいの飲食店はどちらかに振り幅を寄せ、ある程度ターゲットを絞るしかないわけだが、そういう経営努力すら怠って、そのファジーな店側のスタンスの解消を客側の“良心”に丸投げし、となりで子どもがギャースカ泣いていたり、となりから大声の性器の正式名称なんかが漏れ聞こえてくる状況に、「たまたまとなり合わせてしまっただけなので、運が悪かったと諦めてください」と、さり気なく我慢を強いて、ほおかむりを決め込む居酒屋は、殊のほか多い。

 

「子連れ客歓迎」でも「子連れ客お断り!」でもかまわないから、とにかくハッキリしてほしい。そして、この「ハッキリしてほしい」は、「灰皿いただけますか?」と頼んだら、店員さんが「タバコ吸っちゃうんですか? しょうがないですね…」みたいな表情で、こっそり差し出してくる料理自慢の飲食店にも言えている。そんな煮え切らない態度で接してくるなら、いっそ「全面禁煙」にすればいい。それでも、出てくる料理がタバコを我慢してでも食べたいほど美味しいなら、きっとスモーカーも通ってくれるはず……。愛煙家と嫌煙家が“お客さまの自主性”によって、遠慮がちにニコチン禁断症状を、副流煙を仕方なく容認し合っている状態に、私はもう辟易しているのだ。

このニュースに関するつぶやき

  • そうしない店が多いのはどちらかに振ることによって客数が減るかも…という不安かららしい。地元・常連客中心の個人店、手軽さが売りの大衆店、高級店のいずれかで正解は違うんよね、結局。
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