ゴディバの『義理チョコ廃止のススメ』広告は、“贈り物好き”な日本人の心にどう響いたか?

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2018年02月13日 16:00  citrus

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出典:「ゴディバ(GODIVA)公式サイト」より

 

2月1日に日経紙面を飾った、ベルギーの高級チョコレートブランドであるゴディバの広告が話題となっているようですね。

 

この広告内には、「日本は、義理チョコをやめよう」、「そもそもバレンタインは、純粋に気持ちを伝える日。社内の人間関係を調整する日ではない」などの斬新なメッセージが多くこめられており、企業の男性管理職や経営層に対して儀礼的習慣の再考を促すとともに、女性には純粋に贈る気持ちを楽しんで欲しいと願う、あたたかい内容となっていました。

 

 

■形式的な贈り物が減りつつあるヨーロッパ

 

個人的な関心事としては、「このインパクトでゴディバはどれだけのチョコレートを販売したら、日経新聞の15段広告費が回収できるのだろう」ということだったりしますが、やはり興味深かったのは、件のメッセージを発信したゴディバ ジャパン代表取締役社長のシュシャン氏がパリ出身のフランス人であるという点。

 

というのも、私の住むヨーロッパでは形式的な贈り物廃止の流れが進みつつあるからです。その代表的な例がクリスマスですが、「プレゼントは子供用に絞り、大人用は親戚一同で取り決めて止めた」といった話は頻繁に耳にします。実際にヨーロッパでは10月頃からクリスマスイブ当日にかけて、ギフトやホームデコレーションの買い出しで、店から店へと必死の形相で渡り歩く人々で溢れかえっており、その莫大なストレスから店の従業員や他の来店客との口論勃発も珍しくはない光景。クリスマスはこちらでは最重要行事であるものの、贈り物探しの負担がそこまで大きいのなら、いっそ無くしてしまおうという発想は英断と言うか、合理的と言うか、エコ好きで財布の紐が固いヨーロピアンならではと言うべきか、いずれにせよ一石二鳥の結果だったりするようです。

 

つまり、フランス出身のシュシャン氏にとって今回の「イベントのストレスからの解放」、「大切な日を純粋に楽しむ」というアイディアは決して真新しいものではなく、むしろ自然な着想だったのではないでしょうか。

 

 

■贈り物文化の発達した日本と義理需要の少ないヨーロッパ

 

それに、元来日本人は贈答好きなのか、ヨーロッパの人に比べて贈り物をする習慣がずっと多いように思われます。輸入イベントのクリスマスやバレンタイン、誕生日等を除いても、友人・ご近所・同僚・クラスメイト等にばらまくお土産類や、お世話になった人へのお中元・お歳暮、卒入学および婚礼・出産時のご祝儀、お見舞い、新築・引越祝いなど、身内以外にも何かと贈り物をしますよね。実際に私が乗務していたエアラインでも、他国路線に比べて日本便はお土産を買いこむ日本人客の存在で、機内販売が大変好調でした。

 

一方ヨーロッパにおいて、富裕層は別次元であるものの、中流階級の人々は日本人ほど頻繁に贈り物をしないうえ、金額も抑え気味です。例えば旅行休暇のあと、会社で同僚一人ひとりにお土産を配ることは稀ですし(全員向けの箱入り菓子等はたまにあり)、知人宅に招かれた際には、有名メーカーの菓子折りや高級フルーツなどではなく、値の張らないブーケ・ワイン・スイーツといった“気持ち程度”のささやかな品を持参する人が大半。日本のような厳格なお返しの習慣も特に見られません。

 

加えてバレンタインギフトについて、周りのヨーロピアンたちに聞き取り調査を行ったところ、ディナーに出かける人が散見される中、バラの花束やアクセサリーといった“いわゆる”プレゼントをパートナーに贈る男性は意外にも少数派。また「メッセージカードのみ」や「何もしない」というイベント不参加型の人も思いのほか多く見られたのが印象的でした。もちろん国籍や世代にもよるとはいえ、本命に対しても概ねそのような状況ですから、ましてや職場での「義理」需要はほとんどないと言っても過言ではないでしょう。

 

そのような背景も手伝い、シュシャン氏のこの度の「義理チョコ廃止のススメ」メッセージに繋がったのではないかと推察しますが、世間では「よくぞ言ってくれた」と称賛があがる一方、様々な否定的意見も存在する模様。とはいえ、シュシャン氏がチョコレート業界でのインサイダー的立場と、外国人としてのアウトサイダー視点で、行き過ぎともいえる日本の義理チョコ贈答文化に一石を投じたことは、少なからず意味があったのではないでしょうか。いずれにせよ、今年のバレンタインデーが多くの人にとって楽しいものであることを願います。

このニュースに関するつぶやき

  • 好きにしましょうよ。付き合い上、やむを得ずしたくない人へも配らないと角が立つ人も居る現実がある。
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