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デジタル動画広告を始める前に、知っておきたい「広告価値毀損」

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2018年02月15日 09:03  MarkeZine

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MarkeZine

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 今回の記事ではウェブでブランディング活動を行う上で大きな課題となる「広告価値毀損」について紹介します。本連載は、ニューヨークに本拠を置き、動画広告をグローバルで配信するプラットフォームとマネジメントサービスを提供しているGlassView Japanの岩本香織氏の寄稿によるものです。


■そもそも広告価値毀損とは


 2017年1月末、米国ネット広告団体IABの年次総会「IAB Annual Leadership Meeting 2017」にて、世界最大の広告主P&Gの最高ブランド責任者であるマーク・プリチャード氏がメディア業界全体の数字の不透明さや不正を批判し、「P&Gは、『透明性』の担保されたメディアとしか取引しない」という強いメッセージを発信した。


 デジタル広告における“価値毀損”問題を指摘したこのスピーチは、欧米のマーケティング業界で大きな話題となった。


 では、広告価値毀損とは具体的にどのような現象を指すのか。デジタル動画広告を始める前に、知っておきたい5つのキーワード、「ブランドセーフティ」、「ビューアビリティ」、「アドフラウド」、「アドベリフィーケーション」、「フリークエンシーコントロール」について順を追って紹介して行きたい。


■ブランドセーフティとは


 ブランドセーフティとは、広告が不適切なサイト上に表示されないことを指す。TVCMや紙媒体と異なり、ネット広告では、掲載面が多岐にわたり、想定しない場に広告が表示される可能性がある。


 2017年、不適切なコンテンツや過激な政治的主張が含まれるYouTube動画内に広告が表示されたとして、英政府や、新聞社のThe Guardianなど英大手企業がYouTubeやGoogleネットワークでの広告掲載を取りやめた。その背景には、YouTubeがUser Generated Contents(以下、UGC)だという成り立ち上の問題がある。


●UGCから大手メディアへの回帰が進んでいる


 UGCはネット上でユーザーの手によって制作・生成されたコンテンツの総称で、企業や新聞社などの組織が生成したコンテンツ(Professionally Generated Content、以下、PGC)と対の関係にある。YouTube、Facebook、ブログ、写真共有サイトなどのSNSに投稿されたコンテンツのほか、口コミサイトに投稿された感想や、通販サイトの商品レビューなども含まれる。


 企業広告よりリアリティがあると2000 年前後から注目を浴びたが、掲載基準が曖昧で、品質のコントロールが難しい。


 そのため、トピック・キーワードごとに関心があるユーザーをターゲットし、特定のユーザーに広告を表示できるYouTubeのターゲティング技術があだとなり、例えば、“自動車と乗り物”にカテゴライズされた自動車事故の動画に大手自動車会社の広告が表示されるといった、掲載事故の起こるリスクが生じている。


 実際Google英国法人のマネージングディレクター、Ronan Harris氏は同社ブログで次のように述べている。「YouTubeには毎分400時間の動画がアップロードされていて、我々はその内容を常に正しく把握できているわけではない。ごく一部のケースでは、収益受け取りポリシーに違反するコンテンツに対しても広告が表示されうる」。


 さらに、フェイクニュースなどの問題を受けて、デジタル広告出稿が原因で企業や製品のブランドイメージを毀損するリスクが高まる中、信頼性の高い大手新聞社をはじめとするPGCに広告主が回帰し始めているのだ。


●RTBの課題


 また、近年主流となった、インプレッションが発生するたびにオークションが行われるリアルタイム入札(Real-Time Bidding、以下、RTB)による広告配信は、自社の広告がどのコンテンツ上にどのように表示されているかを把握することが難しく、広告価値毀損が発生するリスクがあることは知っておきたい。


■ビューアビリティ(Viewability)とは


 これまで、デジタル広告は、CPC(クリック単価)、CPA(顧客獲得単価)などの“刈り取り”を広告パフォーマンスの主要指標としてきたが、近年“ビューアビリティ”が注目され始めている。


 ビューアビリティとは、ネット広告がビューアブル(閲覧可能)な状態で表示されているかを測る指標だ。米MRC(※1)とIAB(※2)は「広告の50%以上が、1秒以上(動画の場合は2秒以上)ユーザーが視認可能な状態」を提唱し、業界のスタンダードとなっている。


※1:MRC(Media Rating Council)メディア調査会社の監査や認定審査を行うアメリカの業界団体

※2:IAB(Interactive Advertising Bureau):米国のインターネット広告の業界団体


 例えば、ページをスクロールしなければ表示されない広告は、読み込みは完了していても、広告掲載枠がモニター画面に出現する前にページからユーザーが離脱してしまうことが多くある。つまり、ユーザーが広告を見ていないにもかかわらず、課金されてしまう。


 「見られることのない広告に価値はない。しかし実際には、現在運用されているデジタル広告の約半数は見られていない。デジタル広告技術が洗練されるに比例し、広告主はROIを確認するだけでなく、ビューアビリティに基づいた課金を望むようになった」(インテグラル・アド・サイエンス、以下、IAS)


 このように、「見られること」の重要性が再認識される中、ビューアビリティ保証型で広告枠を取引する動画配信プラットフォームが注目され始めているのも自然な流れである。


■「アドフラウド」(Ad fraud)とは


 アドフラウドは広告詐欺とも呼ばれるもので、広告が“ボット”(ネット上の操作を自動で行うプログラム)によって閲覧・クリックされることを指す。つまり、ビューアビリティが確保されており実際に広告が視認可能な状態で表示されていても、それを見ているのが人ではない可能性があるのだ。


 アドフラウドのボット技術は進化しており、ビューアビリティのほか、広告主の関心の高い指標である視聴完了、クリックなどユーザーの行動を模倣して、広告のエンゲージメント指標を操作できるほど洗練されている。


 また、信頼できるメディアであっても、多段階に連鎖したアドネットワークなどが原因で、メディア自身が預かり知らぬところでボットが混じり込むリスクがある。


 というのも、CPCやCPAを追求する広告主が大量のメディア広告枠をできるだけ安いコストで獲得するよう、エージェンシーにプレッシャーをかけ続けた結果、メディアは広告枠の価値を高めるために、第三者のオーディエンス拡張プログラムを設定してより多くのトラフィックを獲得しクリック率を高い水準に保つインセンティブが働く。


 皮肉なことに、その拡張した先の第三者パートナーネットワークに、収益を目的に不正を働くボットが潜んでいる可能性があるのだ。


 このように、いくらアドフラウド業者が悪質だとはいえ、広告主自身にも反省すべき余地がある。なぜなら、ボットが生まれた背景には、広告主が大量のメディア広告枠をできるだけ安いコストで獲得するようエージェンシーにプレッシャーをかけ続けた事実があるからだ。費用対効果を追求する広告主の姿勢が、マネタイズを追求するメディアが不正に手を染めるように追い込んだともいえる。


■アドベリフィーケーション


 さて、デジタル広告業界全体が抱える「ブランドセーフティ」、「ビューアビリティ」、「アドフラウド」という広告価値毀損の課題に対し、中立的な立場からデジタル広告が人間の目に触れ、あらゆる不正行為から保護され、適切な環境とマーケットで展開されているか否か検証するソリューションが「アドベリフィーケーション」だ。


 代表的なプロバイダーとして、Googleと協業する世界最大手のIASが挙げられる。ほかにも、Twitter、Facebookなど数々の大手プラットフォームで広告計測の認定ベンダーに採用されているMOATや、不正なトラフィックを検知して保護することを得意とするアドフラウド対策グローバル大手のWhite Opsがある。


 動画広告を実施する際には、提携しているメディアパートナーがMRC認定を受けたこれらの第三者計測ベンダーを導入し、透明性への要望に応えることができるかどうか、今一度確認して欲しい。


■フリークエンシーコントロール


 最後に、過剰な広告配信やリターゲティングは、コンバージョンどころか、コストをかけてアンチユーザーを増やす自滅行為にもなりかねないので、これも一種のブランド毀損といえる。対策として、フリークエンシー(同じユーザーに広告を配信する回数)を適切にコントロールすることでユーザーからそっぽを向かれるリスクを軽減したい。


■まとめ


 ここまで見てきたように、広告価値毀損の問題が生まれた背景には、業界全体が過度にスケールとCPCやCPA効率を追求し、広告掲載のクオリティをおろそかにしてきた経緯がある。しかし、スケールとクォーリティは決して相反するものではないことを指摘しておきたい。例えば、優良サイトをネットワーク化したPMP(プライベート・マーケット・プレース)のように、非公開取引によって、一つ一つ広告掲載媒体を事前審査しながら、高いターゲティング精度と安心安全な環境での広告配信ができるアドテクノロジーもマーケットも存在する。つまり、「守り」方さえ押さえれば、デジダル動画広告は費用対効果の高い「攻め」のマーケティングを実現する有効な手法である。


 最後に、動画広告を始める前に、押さえたい「守り」のチェックポイント5つを、ここにおさらいした。広告配信パートナーを選定する際に、これらの広告価値毀損のリスクに対するポリシーを確認してみてはいかがだろうか。


広告が「アダルト」「ヘイトスピーチ」など不適切なサイト上に表示されていないか?




広告がユーザーに本当に見られているのか?




広告が“人”ではなく“ボット”によって閲覧やクリックがされていないか?




上記の問題を検証できる中立的な第三者検証機関で透明性の高い広告配信要望に応えられるか?




広告配信が過剰に配信されないフリークエンシーコントロールについてのポリシーがあるか?

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