高畑淳子の熱演光る 『となかぞ』視聴者を引き込む“ラスト10分間”の凄み

0

2018年02月23日 14:42  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

写真

 コーポラティブハウスと呼ばれる集合住宅に住む4つの家庭を描いたドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)。第6話では、各家庭それぞれが望んでいなかった“残酷な現実”が突きつけられたが、テーマとは裏腹なコミカルなテンポで物語が展開していった。


参考:『隣の家族は青く見える』第6話【写真】


 本作はそんな軽快に進むストーリーだからこそ、常にラスト10分間の涙の誘い方がうまい。これまでやんわりながらも直接的に、五十嵐奈々(深田恭子)&大器(松山ケンイチ)に子作りを推奨してきた大器の母・聡子(高畑淳子)。前回第5話のラストで聡子は、2人が不妊治療中であることをようやく察し、大器の妹・琴音(伊藤沙莉)の出産に立ち会わせたことを申し訳なく思い、頭を抱える。高畑が魅せる、おせっかいだけれど憎めない“世話焼き母ちゃん”っぷりは演技を超えた自然さがあり、毎話ベテランの風格を感じさせられる。


 そして今回第6話のラストでは、子育てでてんてこ舞いになっている琴音が、ストレスと不安から、「ほんとはこんなに早く…母親になんかなりたくなかったもん……」「子供なんて産みたくなかったよ!」と、不妊治療中の奈々の前で、つい本音をこぼしてしまった。


 奈々の事情を知る聡子は、琴音に思い切りビンタ。「あんたが言った言葉は、どれだけ残酷で、無神経で、ひどい言葉か……! 謝りなさい!」と涙ながらに叱る聡子の姿は、まじりっ気のない優しさがひしひしと伝わってくる。本作は、これまでにも“無知が人を傷つける”というメッセージが込められてきたが、今回“傷つけてしまった側”はどうするべきかの1つの例が示されたのではないかと思う。


 また、今回もう1つ印象的だったのが、奈々と杉崎ちひろ(高橋メアリージュン)、青木朔(北村匠海)の3人が共有スペースでそれぞれの“結婚感”についてコミカルに語るシーン。ちひろは「カップルは安心したら終わり」だという考えがあるからこそ事実婚を選んだことを打ち明け、一方ゲイカップルの朔は、「婚姻届みたいな拘束力があるものが欲しい」と語った。奈々は結婚すれば安心感が生まれるというと、「カップルなんて安心したら終わり」だとちひろから指摘され、最近キスが減ったことを自覚する。


 実際現実においても、入籍しているが家は別々という“通い婚”、熟年夫婦が籍は置いたまま別居する“卒婚”など結婚感が多様化しているため、既存の概念に左右されないちひろと朔の主張を認め、否定しない奈々の姿は模範的対応だったと感じた。


 移りゆく時代の中で、人々の価値観というのは常に変化してゆき、数十年前間違いと扱われていたものが、いつの日か正解になることもある。自分の中に核を持ちつつ、他者の意見を跳ね除けない『隣の家族は青く見える』が描く人間の姿はまさに理想的で、現実はこう上手く回らないことは承知だが、心の何処かに留めておきたい要素が詰められていた。(阿部桜子)


    ニュース設定