松たか子&椎名林檎の対極な歌が混ざり合うーー今夜Mステで「おとなの掟」初コラボ

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2018年02月23日 17:42  リアルサウンド

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 真っ黒、真っ白。嘘、本当。好き、嫌い。白、黒。正解、不正解。幸福、不幸……。


(関連:松たか子は今聴くべきシンガーである 椎名林檎提供「おとなの掟」ソロ歌唱での“歌で演じる凄み”


 これらの対極な言葉が連なる歌詞が印象的な「おとなの掟」。ちょうど1年前に放送されたドラマ『カルテット』(TBS系)の主題歌で、作詞作曲を椎名林檎が手がけた。「おとなの掟」は、同ドラマ内で、主演を務めた松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平からなる限定ユニット“Doughnuts Hole”が歌うほか、松たか子、椎名林檎&松崎ナオ、そして椎名林檎自身がセルフカバーした英詞バージョンの4種類がある。同じ楽曲なのに、ボーカルが変わるだけで、全く違う“色”を見せてくれるから面白い。もちろんそれは、アレンジの違いによる影響も大きいだろう。しかし、それ以上に、彼女らの“歌声”が、楽曲に新たな色を与えている印象だ。


 当サイトでは同楽曲について、ドラマの内容とリンクした歌詞の魅力、椎名林檎のプロデュース力、歌に表れる松たか子らの演技力……とすでに様々な視点から伝えてきた。そこで今回は、松たか子と椎名林檎、それぞれの“対極な歌声の魅力”に着目したい。


 一言で表すなら、松たか子の歌声は、長く付き合っている結婚間近な彼女、もしくは母親のような安心感がある。優しく包み込んでくれるような、温かさを帯びているのだ。特に、一つひとつの語尾を大切に丁寧に伸ばしていく、彼女の透き通った声は心地よい。加えて、そこにしっかりとした芯があり、凛とした強さも感じさせる。そしてまた、女優という役を演じるプロだからこその、ちょっと芝居がかった歌い方も魅力的だ。歌声だけで、『カルテット』で演じた巻真紀らしい対極な性質、神経質さと大胆さが表現されている。


 一方の椎名林檎の歌声は、好きだけど手に入らない高嶺の花、もしくは魔性の女のようなセクシーさがある。少しハスキーがかった声に、余韻を残すような息の抜き方と抑揚の付け方。そして、空気を含んだような軽さと湿り気を帯びた艶やかさという、対極なものが同時に存在し混ざり合っているような不思議さ。どんなに目を凝らしても、靄がかかって、はっきりと正体が見えない、そんなミステリアスな雰囲気が漂う。だからこそ、聴けば聴くほど、歌の奥底にある“何か”が気になって仕方ない。そして気づいたらズブズブはまっているような中毒性がある。


 だが、どちらの歌声も聴いていると、ついつい『カルテット』同様に“行間”を読みたくなってしまう。“ミゾミゾする”のである。聴き手側の想像を掻き立て、楽曲の裏の裏、さらに奥深くまで私たちを誘っていくのだ。


 椎名林檎が、「「おとなの掟」はプロデューサーの佐橋佳幸さんからのリクエストを伺ったら、アップル・レコード時代のポール・マッカートニーの筆致が求められているのだと解釈できました」「オーダー通りにやってるだけです!」(引用:椎名林檎「椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015」インタビュー/音楽ナタリー)と語っているように、「おとなの掟」は『カルテット』のために作られた。だが、同ドラマの放送から1年経った今もなお、多くの人から愛され、全く色褪せない。それは、松たか子や椎名林檎らが歌うことで、それぞれの色に染め上げ、リスナーを飽きさせないからではないだろうか。


 今夜、『ミュージックステーション 2時間SP』(テレビ朝日系)にて、松たか子と椎名林檎が共に歌う「おとなの掟」が披露される。“白と黒”のような対極な歌声が混ざり合うことで、どんな“グレー”色に変化していくのだろうか。(文=戸塚安友奈)


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