「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『さよならの朝に約束の花をかざろう』『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』

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2018年02月23日 20:42  リアルサウンド

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、編集スタッフ2人がそれぞれのイチオシ作品をプッシュします。


■『さよならの朝に約束の花をかざろう』


 映画部をさよならの夜に牛霜降りタオルをいただきました。そんな元リアルサウンド映画部、今はリアルサウンド音楽編集部のゆとり女子・戸塚がオススメする作品は、『さよならの朝に約束の花をかざろう』。


 『あの花』『ここさけ』の脚本を務めた岡田麿里さんが、初めて監督を務め、脚本も手がけたオリジナルアニメーション映画『さよ朝』。アニメーション制作を『有頂天家族』シリーズのP.A.WORKSが担当していることもあり、年明け前からアニメファンを中心に話題を集めていました。予告編を観ただけでもわかるように、とにかくアニメーションが繊細で美しいです。


 完全なる架空の世界が舞台であり、加えて主人公の少女マキアは、10代半ばで外見の成長が止まり、数百年の寿命を持つ“別れの一族”ことイオルフの民という設定です。しかし、本作で描かれているのは、いつの時代でもどこの国でも共通する“母と子の愛”の物語。そのため、誰が観ても共感する部分があり、心を鷲掴まれるのではないでしょうか。


 “ひとりぼっち”の少女と“ひとりぼっち”の赤ちゃんが出会うことで生まれる愛。同じ時間を歩んでいるはずなのに、少女の外見は変わらず、赤ちゃんは少年、青年へとどんどん成長していきます。街、人、季節、時代……多くのものが変化していく中で、“ひとりぼっち”同士だった彼らの絆もまた色合いを変えていく。でも、たとえ子に背を越されても、子が寿命に向かって前を走っていってしまっても、子と血がつながっていなくても、母親が子供に注ぐ愛は無条件であり、決して変わらない。そんな母が子に与える愛は、当たり前のようで、本当はめちゃくちゃすごいんだ!ということを改めて気付かせてくれる、そんな作品です。


 イオルフの民は、日々の出来事をヒビオルと呼ばれる布に織り込んでいきます。縦糸は流れ行く月日。横糸は人のなりわい。数百年の寿命を持つ彼らなのに、1分1秒という時間を大切にし、出会う人たちや起こった出来事を大切にしている。そんな彼らの姿に、何にもないと思っていた毎日にも、実は色や模様があったんだということに気付かされ、ハッとしました。同時に、丁寧に大切に紡がれていくヒビオルは、この物語、ひいては岡田麿里さんが描くアニメーションそのものを象徴しているようにも感じます。


 120分間で優しくて切ない想いがじわじわと体内に染み込んでいき、上映後にはその余韻に浸りつつも、「あぁ〜、おかん(大切な人)に会いたい。味噌汁が飲みたい」という気持ちが大爆発。即、お母さんにメール待ったなしです。


■『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』
 リアルサウンド映画部の欲望担当・阿部がオススメするのは『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』。


 作家トーマス・カリナンによる小説『ビガイルド 欲望のめざめ』を映画化した本作は、男子禁制の女子寄宿学園の教師と生徒たちが、1人の敵兵を救ったことにより、欲望をむき出しにしていくというスリラー。キャストには、ニコール・キッドマン、 キルステン・ダンスト、 エル・ファニングら美女が揃い、北軍兵士マクバニー伍長をコリン・ファレルが演じた。


 原作小説は1971年に『白い肌の異常な夜』として1度映画化されており、主演を務めたクリント・イーストウッドが卒倒レベルの美しき横顔と、くしゃっとした魅力的な笑顔が印象的だった。一方、本作は、ガーリー・カルチャーをけん引してきた『ヴァージン・スーサイズ』『ロスト・イン・トランスレーション』のソフィア・コッポラが、女性目線からリメイクした作品。


 閉鎖的な空間でキリスト教の教えを守り続けてきた厳格な彼女たちが、偶然落ちてきた”異性”という、ひとしずくの甘い蜜をどうにか味わおうと奮闘する姿が、過剰な音楽なしで淡々と描かれていく。その演出には、表面上は平常を繕いながらも、心の内では静かに嫉妬と欲望を燃やしている彼女たちの本性が反映されているよう。これまで美少女たちが過ごす鬱屈した日々を映画化してきたコッポラの手腕が光る作品に仕上がっていた。また、光と色彩が巧みに使われた映像は、どのシーンを一時停止しても写真集が出来上がってしまいそうなくらいの美しさである。コッポラは本作で、カンヌ国際映画祭監督賞を女性として56年ぶりに受賞する快挙を成し遂げた。


 そして、近年『ネオン・デーモン』『20センチュリー・ウーマン』『パーティで女の子に話しかけるには』など、何かと性の象徴にされてしまうエル・ファニングの魅惑的でミステリアスな演技も注目ポイント。その透明感と繊細さ、官能っぷりはソフィア・コッポラ映画のために生まれてきたのではないかと思うほど。ちょうど、少女と女性のはざまにいるファニングの現在の魅力をぜひ堪能してほしい。


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