2020年までに風疹ゼロに!厚労省ほかが成田空港でイベント

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2018年02月27日 18:01  QLife(キューライフ)

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風疹の無料抗体検査に89人が参加

 日本古来の呼び方「ふう」と、4の現代風の呼び方「し」の語呂合わせから2月4日に制定された「風疹の日」。この日、厚生労働省と日本産婦人科医会を中心に組織された風疹排除を目的とした「“風疹ゼロ”プロジェクト」の共催で、風疹啓発イベントが成田空港で開催されました。当日は、ピンクの法被を着たスタッフが風疹予防のノベルティグッズを空港内で渡航者に配布したほか、風疹の抗体の有無を調べる検査も希望者に無料で行われました。厚労省健康局結核感染症課によると、当日の無料抗体検査を受けた人は89人でした。

 風疹は風疹ウイルスの感染が原因で起こり、耳の後ろや後頭部、首周辺のリンパ節の腫れに始まり、その後発熱とともに、全身の皮膚に盛り上がった赤い湿疹ができます。通常、発熱や湿疹は3〜5日程度でおさまるため、似たような症状をしめす「はしか(麻疹)」になぞらえて「3日はしか」と呼ばれることもあります。多くは一時的な症状で収まりますが、成人では症状が重くなりがちといわれています。また、ごくまれに血を固める作用を持つ血小板の数が異常に減ることで、内臓などで出血を起こす血小板減少性紫斑病(約3,000〜5,000人に1人)、脳にウイルスが入ることで起こる急性脳炎(4,000〜6,000人に1人)など重症にいたることもあります。しかし、それ以上に深刻なのは妊娠中(妊娠20週まで)の女性が風疹にかかることです。この場合、風疹ウイルス感染が胎児におよび、産まれた後に心臓の病気や難聴、白内障などを先天性の障害として持つ先天性風疹症候群(CRS)にかかってしまうことがあります。

 今回のイベント開催の経緯について同課の三宅邦明課長は次のように語りました。「現在『“風疹ゼロ”プロジェクト』とともに東京オリンピックが開催される2020年までに風疹をゼロにしたいとの取り組みを始めていますが、もし目標通り国内での風疹感染を排除できれば、その後は海外から持ち込まれるものが中心になります。海外から持ち込まないための第一歩は日本人がワクチン接種で風疹の抗体を持って海外に出かけることです。その点からイベントの開催場所として成田空港を選びました」

30歳代から50歳代前半の男性がハイリスク世代

 現在、風疹の症状が出た場合は熱を下げる解熱剤などの対症療法を行うしかありませんが、ワクチンを接種することでおおむね感染が予防できます。日本では1994年の予防接種法の改正により、1995年4月以降、生後12〜90か月の男女への風疹ワクチンの接種を開始し、これ以降に生まれている人はかなり多くの人がワクチンを接種しています。現在はおおむね麻疹ワクチンと風疹ワクチンを混合したMRワクチンを1歳時と小学校入学前の2回接種することが一般的です。

 しかし、1995年以前の風疹ワクチン接種状況は、現在からみれば決して満足なものではありませんでした。日本で風疹ワクチンの接種が始まった1977年8月から将来妊娠の可能性がある女子中学生への学校での風疹ワクチンの集団接種が始まり、1989年には生後12〜72カ月の小児男女全員への麻疹ワクチン定期接種時に、風疹ワクチン、おたふくかぜワクチンも含まれたMMRワクチンを選択してもよいことになっていました。さらに、この時期の風疹ワクチン接種は、風疹抗体をより確実に獲得するための2回接種ではなく、1回接種でした。つまり、現在30歳代から50歳代前半の男性で、すでに風疹に罹ったことがある人以外は、風疹に対する抗体を持たない人が多い世代となります。ちなみに50歳代後半以降は、ワクチン接種を受けていない世代ですが、逆に多くの人が風疹に罹ってしまい、自然に風疹抗体を持ってしまっている人が多いといわれています。

 三宅課長は次のように続けます。「今後、日本人の風疹ワクチンの接種率を上げるためには、ハイリスクな人たちの絞り込みとタイミングが重要です。そうした中でハイリスクな人たちは30歳代から50歳代前半の男性ですが、いわば働き盛りで日常生活の中ではなかなか予防接種には踏み切れません。もう1つのハイリスクな人たちは風疹の流行が起こる海外へ渡航する人です。海外へ渡航する人たちはパスポートの取得時や旅行の申込時などを中心に渡航時の病気のリスクなどを意識しやすい。成田空港をイベントの場所に選んだのはそういった意味もあります」

 世界保健機関(WHO)の統計によると、世界で風疹感染報告が多いのは主にアジア圏とアフリカ圏です。この上位5か国への日本人渡航者数は2015年の統計で合計327万人以上。日本での風疹の流行は今でも対岸の火事ではありません。実際、一部に抗体を持たない人がいることも影響して国内では2012年に2,386人、2013年には1万4,344人の風疹患者が報告される大流行も発生しました。この結果、2012〜2014年までに先天性風疹症候群と診断されたケースは45人もいます。

 風疹をなくそうの会「hand in hand」の共同代表・可児佳代さんは今から36年前、不妊治療を4年続けてようやく妊娠した際に風疹にかかりました。その後生まれた娘の妙子さんは先天性風疹症候群による白内障、感音性難聴、動脈管開存症を患い、18歳の時に動脈管開存症の合併症である肺高血圧症で亡くなりました。可児さんはイベントで次のように訴えました。

「もし、妊娠中に風疹感染がわかれば『産みますか、堕胎しますか』と、その時点で命の選択を迫られることもあります。そんな悲しい思いはもう誰にもしてほしくありません。風疹はワクチンで防げる病気。どうぞワクチンで防いであげてください」

(村上和巳)

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