「なまけている」は誤解、重症筋無力症の治療法と患者さんの希望とは?

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2018年02月28日 12:01  QLife(キューライフ)

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推定患者数2万2,000人の指定難病、ときには生命の危機に陥る恐れも


国際医療福祉大学医学部 神経内科学主任教授 村井弘之先生

 重症筋無力症(MG)は、「瞼(まぶた)が上がりにくい」「歩きづらい」「話しづらい」「飲み込みづらい」「呼吸しづらい」といった症状があらわれる自己免疫性神経筋疾患です。神経筋接合部が障害され、神経から筋肉に信号が伝わらなくなるため筋力の低下が起こり、こうした症状があらわれます。厚生労働省の指定難病で、日本では2016年特定疾患(指定難病)受給者証所持者数より約2万2,000人の患者さんがいると推定されています。

 重症筋無力症のうち、8割の患者さんは全身に症状があらわれる全身型重症筋無力症(gMG)へと進行します。全身型重症筋無力症でも大半の患者さんは、既存の治療法で症状コントロールが可能ですが、10〜15%の患者さんは十分な効果が得られない難治性で、症状の増悪や呼吸困難(クリーゼ)を起こすリスクが高く、ときには生命が脅かされる恐れもあります。

 アレクシオンファーマ合同会社は、メディアセミナーを開催。国際医療福祉大学医学部神経内科学主任教授で改訂作業中の「重症筋無力症診療ガイドライン2017」の作成委員を務める村井弘之先生が講演しました。

長期にわたる治療、患者さんのQOL確保が重要に

 重症筋無力症の症状は単独あるいは複数が組み合わさってあらわれ、易疲労性(疲れやすさ)と日内変動があります。症状があらわれてもしばらく休むと戻るため、「なまけている」と誤解される元になっていると村井先生は語ります。

 発症年齢は5歳未満に最初のピークがあり、次に女性は40歳以前に、男性は60歳以降が多く、女性は男性の倍近い発症率です。「ただ最近の傾向として、男女ともに70〜80代での発症も増えてきています」(村井先生)

 重症筋無力症は、症状が落ち着きコントロールされた「寛解状態」を得にくい疾患のため、病気に悩む期間は長期にわたります。そのため、患者さんの生活の質(QOL)の確保が重要です。現在のガイドラインである「重症筋無力症診療ガイドライン2014」は、患者さんのQOLを重視した治療を目指し、以下のような方針でまとめられています。

・軽微症状以上で経口ステロイド5mg以下に
・胸腺摘出術は必須の治療法ではない
・経口ステロイドはなるべく少量に
・免疫抑制薬を早めに使用する
・血液浄化療法、免疫グロブリンなどを用い、初期から病勢を抑える

 また昨年には、一部の全身型重症筋無力症患者さんに対して、新しいお薬が承認されました。「患者さんやご家族の計り知れない苦痛や負担を軽減しうる、新たな治療選択肢がもたらされたことは非常に喜ばしい」(村井先生)

難病が難病でなくなる日「私がおばあさんになる前に」

 続いて、全国に24支部がある「全国筋無力症友の会」事務局の北村正樹さんが、重症筋無力症全国フォーラムや相談活動、患者家族交流会といった友の会の活動を紹介。同会会員の渡部寿賀子さんが、病気のわかりにくさや認知度の低さ、社会・経済活動の難しさなどを訴え、「長期慢性疾患の患者にとって、治療は『社会のなかで生きるため』のもの。自分の役目や居場所、周囲の理解が必要です。研究が進み、私がおばあさんになる前に、難病が難病でなくなる日を待ちたい」と今後に期待を寄せました。(QLife編集部)

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