外国人は肩が凝らない? 日本社会が作り出す6つの“肩こり地獄”

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2018年03月12日 18:00  citrus

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昔から「外国人は肩が凝らない」という噂を聞いては、そんな楽な人生があるのかと羨んだものです。そういえば、日本ほど街中にマッサージサロンが乱立している国は、アジア以外ではあまり見かけませんよね。やっぱり噂通り外国人は肩が凝らないの? いえいえ、そんなことはありません。しかし日本人よりずっと凝りにくいことは確かです。ではその差とは一体何なのでしょう。私が海外に住んで気づいた日本人と外国人の決定的な違いとは、ズバリ“姿勢”です!

 

私たちの頭は平均5〜6kgとボーリング球並みの重さだそうです。あるニューヨークの研究者の調査では、頭がまっすぐの状態で4.5〜5.4kg、30度前傾すると18.1kg、60度傾くと27.2kgもの負荷が首と肩に掛かるのだとか。つまり姿勢をいかに良く保つかが肩こり解消の重要なキーポイントなのですが、日本社会ではこれがなかなか厄介なのです。

 

■1.謙遜する文化
日本では自分がへりくだって相手を立てることは、避けられない重要な要素。家族や親しい友人と接するとき以外は、習慣的にあるいは処世術で、背を丸めてペコペコと頭を下げる行為を誰しもが無意識に行っています。かたや外国では、自信に溢れた態度は商談の場のみならず、日常生活でも相手に見下されないための大切なポイント。胸を張った堂々たる姿勢はその最たるノンバーバル・メッセージであり、逆に猫背で頭を前に出した状態は病的で不安そうに見えるため、リスペクトを集めにくく、対人関係にも悪影響が出てしまいます。

 

■2.地べたに座る習慣
昨今では退潮傾向にあるものの、長きにわたり床座生活を営んできた日本人。また小学校で体育の授業をはじめ、何かと取らされる体育座りのポーズ。JR京都駅前では、制服姿のまま体育座りで待機させられる修学旅行生の団体を見るのは毎度のことです。一方私の住むウィーンでは、子供たちが学校で先生の話を傾聴する機会には、椅子に座るか立ったままなのだそう。何でも先生の前で地べたに座るのは不敬に当たるのだとか。いずれにせよ、地面に座って背中を丸める機会は日本人より格段に少ない印象です。

 

 

■3.成長期の受験勉強(教育システムの違い)
子供の頃はのびのびと体を動かすのが理想ですが、日本に住んでいるとなかなかそうもいきません。輝かしい将来を目指して、貴重な成長期にただでさえ華奢な体で勉強机にかじりつき、ひたすら受験勉強に励みます。そして大学入学後は打って変わって遊ぶ人が多いのは有名な話です。

 

翻って私の住むオーストリアでは、13歳頃までは午前中(8〜12時もしくは14時)の授業のみ。帰宅して昼食を食べると、水泳、サッカー、スキーなど、各自でおもいおもいのスポーツクラブに通います。そして14〜15歳で午後の選択・専門科目が追加され、その後大学院卒業までの間に、心と体の成長とともに勉強時間が徐々に増えていくシステムです。日本とは随分対照的ですが、このように成長期を考慮した教育制度が、良い姿勢の形成にも一役かっているのではないでしょうか。

 

■4.長すぎる通学・通勤と労働時間
他の国よりもずっと通学・通勤時間の長い日本では、読書やスマホ操作などで首が前傾状態になりっぱなしの機会も多いことでしょう。また日本の職場では、短期集中型よりも長時間のデスクワークが主流であるため、体を乗り出してパソコンを覗き込む時間も必然的に増え、首・肩への負担が深刻化します。

 

■5.姿勢チェック機能の不在
オーストリアの夫の会社などでは、入社時に会社専属のドクターが新入社員のデスクを必ず訪問するそうです。デスクの背後に窓がないか(パソコン画面に陽の光が当たるのはNG)、社員の体に合わせた椅子の高さ、体と背もたれの角度、目の高さに合わせた適切なスクリーンの位置、目とスクリーンとの距離(自分の腕の長さ程度)など、細かな項目をチェックするのです。姿勢をはじめとする職場環境が、ロングスパンで健康と仕事の成果に多大な影響を及ぼすと熟知しての配慮でしょう。また学校でも、子供の通学かばんが重すぎないか、定期的なコントロール入るようです。

 

他方、私の学生時代などは、毎日重い教科書を全教科分持ち帰って勉強するよう担任から指示されましたし、職場でもデスクトップが体の真正面ではなく斜め前方にありましたから、日本では姿勢に対するプライオリティが低いと言って良いでしょう。

 

 

■6.着物の影響
日本へ帰国のたびに、下腹を前に突き出して立つ年配男性や、頭を前に出して歩く年配女性が非常に多いことに気が付きます。「昔の日本人は世界一姿勢が美しかった」とは小学校の恩師の口癖ですが、いったいなぜこうなってしまったのでしょう。

 

着物で体幹を圧迫すると背骨の自然なS字カーブが損なわれ、頭部の重さを体全体に分散させる機能が低下してしまうと聞いたことがあります。それに加えて、きつい着付けで締め付けていた時代には凛然とした立ち居振る舞いもできたのでしょうが、ひとたび着物という矯正器具を失うと、元々の筋肉量の少なさとも相まって余計に姿勢が崩れてしまったのかも知れません。

 

こうしてみると、決して「外国人は肩が凝らない」わけではなく、日本人よりも肩こりになりにくい土壌が整っているのだと思います。そして日本社会では上記の理由から猫背がすっかり生活に溶け込んでいますが、この状態に違和感を覚えないところにも問題がありそうです。

 

広く蔓延してすっかり国民的現象となってしまった肩こりですが、日常の姿勢や動作、デスクまわりの環境などに注意すると、つらい肩こりも軽減するのではないでしょうか。

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