昨年はSNS映えするスタイリッシュな写真を発信することが流行りました。そもそも美しい写真を撮るのは楽しいこと。周囲の人に“いい瞬間”を見てもらえることもあり、多くの人が夢中になっていたように感じます。「インスタ映え」は昨年の流行語大賞を受賞し、インスタ映えを意識したスポットや食品なども人気となりました。
ところが今年は、むしろ見栄えのよくない「インスタ萎え」が流行っているのだそう。カッコイイ写真より、やや残念な写真が好まれる背景について考えてみました。
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■美しい投稿には裏欲求が透けて見える?
キレイに見える角度で撮影し、加工で修正した自撮り写真。テーブルクロス、花などをセッティングした凝った手作り料理。SNSで流れてくるそんな写真を見たとき、皆さんはどんな印象を抱くでしょうか。単純に素敵だと思うことが多いと思いますが、少しネガティブな印象を抱くこともあると思います。
特に画像から、自分をよりよく見せようとしていることが感じられた場合、ネガティブな印象になりやすいはずです。「よく見せたい」というのは誰もが持つ感情ですから、他人の投稿の裏にある「よく見せたい」という感情にも気づきやすいもの。人の投稿を見て「頑張り過ぎだな」「アピールしすぎだな」と感じた体験は皆さんも一度くらいはあるのではないでしょうか。
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嫉妬しているわけではないのになぜか人の投稿を素直にいいと思えないことがある。そんなあなたは、投稿された画像から透けて見える自己宣伝や承認欲求を敏感に察知できてしまう人なのかも知れません。
■美しい「#インスタ映え」投稿にあえて「#インスタ萎え」をつける人たち
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気合いの入ったインスタ映えの対極とされるインスタ萎え。どれだけ脱力した画像なのか「#インスタ萎え」で検索してみました。しかしながら、出てくるのは決してクオリティの低くない写真がほとんど。注意深く探すと動物のブサ可愛い写真や生活感あふれる写真はあるものの「風景」「仲良しショット」「料理」など、なかなかの写真が多いと感じました。
画像のクオリティにそれほどの差がないように見える「#インスタ映え」と「#インスタ萎え」。その決定的な違いはどこにあるのでしょうか。
■「#インスタ萎え」投稿を調査整理してみたところ…
インスタグラム上で「#インスタ萎え」のついた投稿を整理してみたところ、以下の3つの傾向があることがわかりました。
1. やや残念だけれど微笑ましいタイプ
ちょっぴりユニークで思わず人にも見せたくなるような好感度の高い投稿です。
例)ブサイクな表情をしてしまっている赤ちゃん
2. 頑張った感じを出さないタイプ
気取りのない自然体な感じの写真。狙っている感じもなく共感されやすい投稿です。
例)キレイに撮れてはいないがみんなとの楽しい雰囲気が伝わる記念写真
3. 普通にキレイだが「#インスタ萎え」をつけているタイプ
発信用に選んだ“自信の一枚”にも、あえて「#インスタ萎え」をつけている感じがします。
例)自分が作った料理の写真に「#インスタ萎え」
写真を整理してみて「できればユーモアがあったほうがいい」「気取らない感じを大切にしたい」「自慢と感じられないよう予防線をはりたい」といった投稿する側の気持ちを感じました。自己宣伝よりも謙遜のほうが受容されやすい日本において、インスタ萎えはセルフブランディングという観点からも好まれるのかも知れません。
■すでに「#インスタ萎え」の意図も見透かされてる? SNSは気楽に楽しもう
インスタ萎えが浸透してくると、SNSでの投稿は今よりテクニカルになりそうです。例えば、自分の写真を投稿したいときには「髪切りました」という報告を装う、料理上手をアピールしたいときには「今日は失敗!」とインスタ萎え風に投稿するといった具合にです。でも、そこはかとなく漂う計算は、やはり周囲から見透かされそう。
そうこうしているうちに「これ買いました! 嬉しい!!」といったストレートな投稿が評価されるようになるかもしれません。SNSでの評価基準は時代の空気感とともに変遷しています。どう見られるかに心を砕くよりも、今目の前にある楽しい瞬間をしっかりと噛みしめ、気楽に投稿を楽しんだほうがよさそうです。