中学受験は母を狂わせる!? 「名簿にいない子が入学式にやって来る」騒動はなぜ起こるのか?

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2018年03月18日 21:43  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

Photo by Photography from AC

“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 中学受験は“親子の受験”とも呼ばれているが、現実的には “母子の受験”という要素が強い。中学入試は難関校になればなるほど、驚くほどの高難度な問題が出題されるため、普通に公立小学校の授業を受けているだけでは、とても太刀打ちできないことが多い。それゆえ、中学受験を志望する小学生は新4年生になるタイミングで専門塾に通塾し、丸3年をかけて受験対策をしていくことが一般的な世界なのだ。当然、子どもは11歳前後であるから、まだまだ親(主に母)の手助けが必要になる。

 その手助けとは以下のようなものに代表される。

 塾の送り迎えや自宅学習の時間管理、塾に持って行くお弁当作り、模試の付き添い、大量のプリント管理、学校説明会への参加、成績の分析、人によっては我が子に勉強を教える……などなど。

 やるべきことが多岐に渡るので、母の頭の中は“中学受験”で覆われがちだ。

誰かが“入学辞退”の電話を――

 これだけでも大変なことなのだが、さらに母を悩ます“ヒエラルキー問題”が出てくる。中学入試には、塾がランキングした偏差値というものがあり、母たちは偏差値が高ければ高いほど、“難関大学合格実績が良い人気の中学”という意識に囚われやすく、簡単に洗脳される。つまり、偏差値が1ポイントでも高い学校が良いと思い込み、子どもの偏差値が1ポイントでも落ちると「もうダメだ!」と心配し、嘆き悲しむ人が続出するのである。

 受験とは非情な世界だが、中学受験もご多分に漏れず、全員が同じように勉強しているため、思うように成績は伸びず、気を抜けば、すぐに落ちる。塾によっては、成績でクラスは元より席順までもが明確に決められる。そんな環境だけに、子どもよりも母の方が成績に一喜一憂してしまうのだ。

 しかも入試には定員がある。極端な話、隣の子よりも1点でも高い得点を取らなければ“合格”という切符はもらえないのである。母たちは否応なく、このことを意識しながら、年端もいかない我が子を、時にはなだめ、時には励まし、時には叱り、時には褒めということを繰り返し、受験本番まで持っていくわけで、その苦労は、自分自身の受験とは比べ物にならないほど、楽ではないことが普通なのだ。

 という前提があることをご理解いただいた上で、こんな話をしてみたい。

 先日、筆者は私立中高一貫校の先生方が大勢集まる席にいたが、その懇親会の席上、今年もこういう話が出た。

「入学式に名簿に載っていない子が来て、慌てた」と。

 つまり、考えられるのは、こういうことだ。同校に合格したA君の保護者に成りすました誰かが、学校に“入学辞退”という電話をかけて、合格を取り消した。先生方によると、こういったケースは「もちろん多くはないが、なくはない」といい、学校側も防衛策に乗り出している。“入学辞退”の電話は必ず、学校からかけ直して、本当にそのご家庭の“意思”なのかを確認しているのだそうだ。

 他人の合格を取り消そうとするまでの親の執念……それは、私の取材によると、主に2つの要因で生まれている。

 1つは、“妬み”という歪んだ感情。他人の幸せが許せないという気持ちに覆われた時に、人は時にとんでもない行動に出てしまうのだろう。もう1つは「どうしても子どもを合格させたい!」という気持ち。繰り上げ合格を願うあまりの行動というわけだ。

合格したのに「負けた」と呟いたワケ

 入試説明会の会場でも、“ちょっとしたこと”は頻繁に起こる。そんな例をご紹介しよう。

 学校によっては、ご親切にも入試問題の傾向と対策を教えてくれるところもあるのだが、それは大抵、学校説明会の席上で伝えられる。ある学校は、とりわけ親切で、わざわざ「この分野を出題する」というプリントを配布していた。某小学校の同じクラス、同じ塾の6年生仲良し3人組のママたちも、その学校説明会に一緒に参加しようとしていたが、1人が所用で行けなくなったため、 「学校パンフレットと願書を自分の分も取ってきてほしい」と参加するママ2人にお願いしたという。

 当然、参加した2人のママは快諾し、不参加だったママのために「学校パンフレットと願書」をもらって無事に渡してあげていた。ただし、その“何を出題するか”を書かれたプリントを除いて。2人のママには、“頼まれたもの”は“滞りなくお渡し”したのだから、何の問題もないという論理が働いているのだろうが、このエピソードは、“母たちの心を時として、黒く染め上げてしまう”という中学受験の一面を知ることができるのではないだろうか。

 もう1つ、こんな話を聞いたことがある。同じ小学校で同じクラスの女の子2人組がいた。仮に愛ちゃんと紗季ちゃんということにしておこう。2人とも中学受験生である。特に子ども同士は仲が良くも悪くもなかったのだが、愛ちゃんママは紗季ちゃんママへの対抗心が湧き出てしまい、どうしようもない気持ちに襲われていたという。娘である愛ちゃんを使って「紗季ちゃんの偏差値」「志望校」「勉強方法」を探らせては一喜一憂していたのだ。

 やがて紗季ちゃんがF女学院を熱望校にしている情報をつかんだ愛ちゃんママは、共学志望だった愛ちゃんを、F女学院志望とするように誘導。そして、紗季ちゃんママと会うたびに、こんなことを言うようになったという。

「知ってる? 今、F女学院って内部で問題が多いらしくて評判が悪いみたい」
「今年はF女学院の倍率が高くなるって……」

 また、紗季ちゃんママの「あら、愛ちゃんもF女学院志望なの?」という問いかけに、

「とんでもない! ウチは紗季ちゃんのように頭良くないから〜! 無理無理!!」

と答えるなど、紗季ちゃんママを油断させるようにも仕向けていったそうだ。

 そして、6年生の冬。入試が終わった合格発表の会場には、勝ち誇る愛ちゃんママの姿があった。校名入りの封筒を持って無邪気に喜ぶ愛ちゃんの元に、手ぶらの紗季ちゃんが駆け寄り、

「愛ちゃん! すごいよ!! 私はダメだったけど、愛ちゃん、おめでとう!!」

と。そして、傍に来た紗季ちゃんママが愛ちゃんママにこう語りかけたらしい。

「おめでとう! 良かったね」

 そのまま、2人が校門に向かって去っていく様を見ながら、愛ちゃんママは、人の幸せを喜べる紗季ちゃん母娘に対して、「負けたなぁ……」と呟いたそうだ。

 中学受験は“母と子の受験”。それは時として、残酷なまでに己の“黒い思い”を鏡のようにして、自分自身にも見せてしまう。そんな“黒い思い”が、中学受験終了後に霧のように晴れる人もいれば、子どもの大学受験に至るまで持ち続ける人もいる。

 我が子の“受験”というものは母にとっては、自分自身の生き様やら本当の人柄が如実に出てしまう、ある意味、とても怖い物なのだ。
(鳥居りんこ)

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  • うちの娘の看護学校合格したんを入学自体の電話を入れたやつが居ててすごく困った事件を思い出したわ����ʴ򤷤��������ʴ򤷤��������ʴ򤷤����犯人は誰か解ってるけど����ʴ򤷤��������ʴ򤷤��������ʴ򤷤����
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