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Business Insiderのアドフラウド対策とは?海外プログラマティック広告の最新動向を紹介!

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2018年04月17日 08:02  MarkeZine

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MarkeZine

写真アタラ合同会社 コンサルタント 高瀬優氏
アタラ合同会社 コンサルタント 高瀬優氏
 「MarkeZine Day 2018 Spring」2日目の3月9日に行われたセッション「透明性、AI、プログラマティックTVの現在とこれから」は、プログラマティック広告の現状と将来像を示した興味深い内容になった。運用型広告の分野で多彩なサービス提供を手がける企業でコンサルタントを務めるかたわら、積極的に海外カンファレンスへ足を運んでいるアタラ合同会社の高瀬優氏がスピーカーを務めたセッションの様子をレポートする。


■プログラマティック広告のエコシステム



アタラ合同会社 コンサルタント 高瀬優氏


 セッションの冒頭、自己紹介を兼ねてアナウンスされたのが高瀬氏の著書『海外カンファレンスの歩き方 MarkeZine Digital First』(Kindle版)だ。3月3日に出版されたのこの本は、海外11のカンファレンスについて広告業界・IT業界のキーパーソンたちがその特徴や魅力をレポートする内容になっている。


 スピーカーの高瀬氏はアタラ合同会社でコンサルタントを務めている。同社は運用型広告全般のコンサルティングなどが主力事業だが、その主要メンバーとして活躍するかたわら定期的に海外のカンファレンスに参加。そこで得た最先端のトレンドや知見、課題や将来像の共有を目的とした情報発信にも積極的に取り組んでいるということだ。


 セッションでは、毎年4月と10月にアメリカ・サンフランシスコとニューヨークで開催されている『PROGRAMMATIC I/O』に参加した内容をもとに、プログラマティック広告の最新トレンドと課題・将来像などについて紹介された。プログラマティック広告の最新動向を掴むにはもってこいのカンファレンスだ。


 「『PROGRAMMATIC I/O』はプログラマティック広告関連では世界最大規模のカンファレンスで、毎回1,500人超の参加があります。2017年10月25・26日に参加したセッションから、私なりに気づいた点や課題、将来像などを紹介したいと思います」


 ここで高瀬氏から、プログラマティック広告の全体像について説明があった。通常の広告は「広告主」を起点に「広告代理店・コンサルティング」を仲介として「メディア」を通して「ユーザー」へと発信されるのが一般的だ。


 これに対してプログラマティック広告の場合は「広告代理店・コンサルティング」と「メディア」のあいだに「広告プラットフォーム・DSP」、そして「アドエクスチェンジ・SSP」が介在する。


 「広告主からユーザーへと発信されるすべてのプロセスでどう透明性を確保していくのか。そして『広告主』から『広告代理店・コンサルティング』『広告プラットフォーム・DSP』までのプロセスにAIを導入・活用していくことのメリット。さらにユーザーの視聴環境の変化に伴い必要性が増しているプログラマティックTVの現状と将来像について、『アドエクスチェンジ・SSP』『メディア』のセルサイドの視点を中心に紹介していきます」


■JPモルガン・チェースのブラックリスト&ホワイトリスト戦略


 プログラマティック広告の現場で透明性を確保していく課題解決の一例として、バイサイドの「ホワイトリスト戦略」について紹介があった。



ホワイトリスト:広告の配信先として安全と見なした対象(メディア)を列挙したリスト。そこに載っていないものには広告を配信しないことでブランドセーフティを保つ。

ブラックリスト:広告の配信先として除外する対象(メディア)を列挙したリスト。そこに載っているものへの広告配信を除外することでブランドセーフティを保つ。


 「JPモルガン・チェースのプログラマティック広告バイイング最高責任者から2017年3月に手がけたホワイトリスト戦略についてプレゼンテーションがあったので、その内容を紹介します。


 JPモルガン・チェースではホワイトリスト戦略を実施する前から、次の4つのブラックリスト戦略を適用していました。


JPモルガン・チェースが実施していたブラックリスト戦略

(1)ブラックリストに該当するドメインを除外

(2)コンテンツフィルターによる自動除外

(3)キーワードフィルターによる自動除外

(4)アドベリフィケーションツールのブランドセーフティ機能の活用


 しかし、10万超のドメインで2か月間のインプレッション数が10以下と極端に少なく、クリックやコンバージョンのないドメインも全体の約75%にのぼり、さらに不正インプレッションやフェイクニュース、不適切なコンテンツを含むWebページへの掲載が多かったという事実が明らかになりました。


 これを受けて同社は、下記の図に記載されているプロセスを経て、独自の『ホワイトリスト』を構築し、『ブラックリスト』戦略から『ホワイトリスト』戦略へ切り替えました。この結果、アドフラウドが約47%減ってビューアビリティは約5%増加。リーチ数も減ることなくスケールできたということでした」


 プログラマティック広告を手がけるバイサイドでは、まず広告の配信先をホワイトリスト化していく戦略が必要なことが実感できる内容だ。一方で、セルサイドである「メディア」がブランドセーフティに成功したエピソードの紹介があった。


 「プログラマティック広告の現場では、いわゆる『なりすまし』=ドメインスプーフィングへの対処が大きな課題になっています。Business InsiderというアメリカのWebメディアのデータ戦略責任者から興味深いエピソードの紹介がありました」



ドメインスプーフィング:悪質なサイト運営者などが、故意に広告掲載先のドメインを偽ることで、不正に広告収益を得ようとする「なりすまし」によるアドフラウドの手口の一つ。「Falsely Represented」という名称。




■Business Insiderがads.txtを導入した経緯


 先にも触れたが、プログラマティック広告が配信されて消費者に届くまでには、「広告プラットフォーム・DSP」や「アドエクスチェンジ・SSP」が介在する。


 高瀬氏は、Business Insiderが「ads.txt」を導入するきっかけになった、ドメインスプーフィング=なりすましが発覚したエピソードを紹介した。


ads.txt:偽造広告枠や不正インプレッション販売を防止するツール。「ads」とはAutorized Digital Sellers(公認されたデジタル販売者)の略。「ads.txt」自体はテキストファイルであり、これを通じてパブリッシャーは公式に販売を許可している広告システムを宣言できる。DSPはその宣言を読み取ることで、なりすましではないサイトであることを確認し、安心して広告枠を入札をすることができるという仕組み。


 「DSPを介して『プライベートオークション』でBusiness Insiderの広告枠を購入している広告主から、『オープンオークション』で同社の広告枠をより安価なCPMで大量に購入できているという連絡がありました。


 しかし、Business Insiderが調査したところ、この広告主が購入している広告枠はわずか97ドル分だったことが明らかになりました。同社はさらに調査をすすめ、パートナーシップを結んでいる複数の広告主から広告リクエスト先のリストを共有してもらったところ、取り引きのないアドエクスチェンジ/SSPが散見されたとのことでした。すなわち、Business Insiderがドメインスプーフィングを受けていたことが判明したのです」


 「これを受けて同社は、ads.txtの導入に踏み切ったとのことでした。ads.txtに準拠した買い付けにDSPが対応している場合、ads.txtに記載のないアドエクスチェンジ/SSPベンダーは基本的に入札対象から除外されるため、ドメインスプーフィングの被害を減らすことができるのです」


 「バイサイドのJPモルガン・チェースとセルサイドのBusiness Insiderのケースから、プログラマティック広告の現場では今後、量よりも質が重視されていくと考えています。オープンオークションで大量の広告枠を安価に購入できることがプログラマティック広告の革新的な部分でしたが、普及していく過程で歪みも発生し、質の問題が浮上してきました。特に大手のブランド・パブリッシャー間の広告取引においては、一定の質を担保するプライベートオークションの比率が大きくなっていくことが予想されます」


 このエピソードからは、日本のプログラマティック広告の現場においても、大いに学ぶべき教訓が含まれている。


■AIをいかに導入・活用していくべきか?


 続いて高瀬氏が「PROGRAMMATIC I/O」のセッションから紹介したのは、デジタルマーケティングの現場でのAI活用に関する2つのパネルディスカッションだ。参加者は計5人。AIマーケティングプラットフォームを提供する企業のCEO3人とAIの開発を手がける企業のCTO、そして広告代理店の役員によるパネルディスカッションからの発言が紹介された。


 「デジタルマーケティングの現場でのAI活用で、一番のメリットとされているのが膨大な既存顧客のデータをスピーディーに解析して関連性などを正確に導きだせる点です。しかし、データが部門ごとに分断されているケースも散見されます。つまり、データを分断、すなわちサイロ化させないことが活用のポイントとなります。


 一方でデジタルマーケティングの現場では、やがてマーケタ―の仕事がAIに奪われてしまうのでは? という危惧がありますが、参加メンバーからはこれを否定する意見がありました。


 現時点で、AIよりも人間のほうが優れているとされる資質や能力について『想像力を発揮できる』『ブランド戦略をゼロから立案できる』という意見がありました。さらにAIを導入することで、『仕事がより楽しくなる』『AIに得意な業務を振り分けることで、マーケタ―は誰にどんなメッセージを届けるかという重要な仕事に集中できる』といった意見もありました」


 「マーケタ―はブランド戦略の立案をはじめメッセージづくりやターゲット設定などプロセスに応じて幅広い業務を手がける必要があります。


 このディスカッションの内容に基づいて考えると、AIを有効活用すれば、このうち『メディアプランニング』や『ターゲティング設定』『広告配信』、そして『結果分析・最適化』のプロセスは過去の事例をデータセットとしてAIに学習させることで効率化・迅速化が図れるというメリットがあります。その分、マーケタ―はより高度なブランド戦略の立案や効果の高いメッセージづくり、メッセージを届けるターゲット選定により多くの時間を活用することができるでしょう」


■「プログラマティックTV」の現状とは?


 セッションの最後に高瀬氏から紹介があったのが、「プログラマティックTV」の現状と将来性に関するレポートだ。


 「とくにアメリカでは、次世代のプログラマティック広告の配信手法として『プログラマティックTV』の普及・定着に期待が集まっています。セルサイド、バイサイド双方が協力する体制ができればさらに需要が高まっていくという指摘がありました」


 これを踏まえて高瀬氏は、プログラマティック広告先進国のアメリカの現状について解説した。



「US Programmatic TV Ad Spending, 2015-2019」

eMarketerによれば、2017年のプログラマティックTV広告費は前年比75.7%増の11.3億ドル、2019年には40億ドル近くになるという。


 「アメリカではとくに18〜34歳の若い世代と35〜54歳のミドル世代では、テレビ放送よりもデジタルコンテンツに時間を費やす傾向が高くなっています。また、動画コンテンツの配信プラットフォームや視聴する機器も増加し、オリジナルコンテンツも2016年までの6年で71%増と急増しているそうです。


 一方で、ストリーミングサービスやWeb TV、スマートTVなどサービスやデバイスが乱立し、ユーザーの視聴環境が必要以上に多様化しているという課題があります。


 マーケティングを手がける側は、オーディエンスの視聴環境が多様化している状況下でも効率よくターゲットにリーチできることが望ましいわけです。これを背景に、今後はプログラマティックTVの普及がますます進んでいくと予測されています」


 カギを握っているのはマスメディア、テレビ業界の動向だ。高瀬氏は最後に、アメリカのテレビ業界がプログラマティックTVをどうとらえているかについて紹介した。


■加速するプログラマティックTV活用へのシフト


 高瀬氏が紹介したのは、アメリカ・ニューヨークに拠点を置くCoalition for Innovative Media Measurement(CIMM)のCEOによるセッションだ。CIMMはテレビ局、エージェンシー、広告主、プラットフォーマーなど、プログラマティックTVのエコシステムを形成するプレイヤーがメンバーとなっている団体で、テレビやプラットフォームをまたいだオーディエンス計測に革新を起こすことを目的としている。


 「プログラマティックTVの普及・定着には、オーディエンスにリーチできているかという『計測』技術の確立が不可欠という話がありました。この分野でもアメリカは先進国であり、数多くのシステムやソリューションが提供されつつあります。


 そのうえでテレビ業界は、正確なオーディエンスターゲティングやOne to oneマーケティングができ、在庫管理が自動化できるといったメリットをよく把握しているということでした。現状のテレビ放送とプログラマティックTVとで相反するメリット、デメリットを把握したうえで少しずつ移行を始めているというのが現状のようです」


 たとえば理想としてはファーストパーティデータやサードパーティデータをオーディエンスへのターゲティングに直接活用したいが、現状ではターゲティングの「最適化」に活用している状況だ。One to oneマーケティングも「限られた世帯単位」でのターゲティングを進め、在庫管理についても一部を自動化するといった取り組みが行われているという。


 「テレビ業界・広告業界では、(1)オーディエンスベースで購入できる広告枠を増やす、(2)データセグメント名とその分類の標準化、(3)MVPD(multichannel video programming distributors)によるアトリビューションモデリングのための広告データ開示、(4)業界内での提携による番組や広告識別子の標準化、などを進めていきたいとのことでした。


 プログラマティック広告の現場ではバイサイド、セルサイドの双方でクリアすべき課題があることを紹介してきました。透明性の課題は、プログラマティック広告のエコシステムが『量』から『質』を重視する大きなきっかけとなっています。バイサイドでは今後、一層のAI活用とマーケタ―による高度な戦略立案と良質なインプットが求められます。またセルサイドには、オーディエンスベースでのプログラマティックTVの有効活用を進めるために業界全体での取り組みをさらに加速していく必要があるという見解です」

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