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元巨人、横浜の駒田徳広 「独立リーグ監督」と「バーマスター」の二刀流

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2018年04月17日 16:02  AERA dot.

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写真球団直営のバーでマスターを務める高知・駒田監督(写真提供:喜瀬雅則)
球団直営のバーでマスターを務める高知・駒田監督(写真提供:喜瀬雅則)
 2018年4月2日。

 高知市のメーンストリートともいえる帯屋町から、歩いても10分足らず。鏡川沿いに位置する高知市野球場で、プロ野球・独立リーグの四国アイランドリーグplusに所属する高知球団は、ソフトバンク3軍との試合に臨んでいた。

【写真】バーの店内に展示されている有名選手たちのユニホームはこちら

 ナイター開催だった一戦は、高知が3―1で逆転勝ち。その試合を終えた駒田徳広監督が向かった先は、帯屋町の一角にある雑居ビルだった。

 ユニホームを脱いだ指揮官には“もう1つの顔”がある。

「KOMA'S HOUSE」

 高知の名所・はりまや橋から、徒歩数分。帯屋町のアーケード街に面した中央公園のすぐ脇にあるビルの3階。

 3月23日にオープンしたばかりの店は、駒田監督自らがプロデュースしたバーだ。

 カウンター9席に、10人程度が座れるテーブル席が2つ。自らの名前を店名に掲げた駒田監督は、自らカウンターにも立って、お客さんと会話も交わす。

 つまり、4月2日は、駒田監督は2時間36分の試合を采配した後、そのまま店に向かい、バーのマスターとして“延長戦”を戦っていたというわけだ。

 プロ野球の監督が、バーのマスターになる。これを提案したのは、なんと、駒田監督自身だった。梶田宙球団社長が、開店に至る経緯を明かしてくれた。

「単純に、駒田監督の思いからできたんです。球団のこともすごく考えてくれて、ちょっとでも収益になるだろうと。球場に来てくれたファンの人たちが、試合が終わった後にも、そのまま高知の街に行って、楽しめるような場所を作りたい。そういう思いからですね」

 昨年のオフから、駒田監督は梶田球団社長に「やろうよ」と、バー開店の提案を何度となく持ちかけてきたという。巨人、横浜(現DeNA)の主砲として活躍、2000安打も達成して名球会にも名を連ねている名選手は、現役引退後に横浜スタジアムにほど近い横浜・関内で、バーを開いていたこともあるという。

「こういうの、好きなんですよ。苦にならないかって? いやー、全くそういうのはないね」

 試合後、そのままカウンターに立つ監督を目当てに、球場からそのまま駆けつけたファン、試合終了を見越して監督に会いに来たファンが、ひっきりなしに店を訪れる。


 “酒どころ”の高知。駒田監督と、杯を酌み交わしたい。それもファン気質だろう。指揮官は返杯も一切断らず、豪快に飲み干していく。それがまた、ファンにはたまらない。

 駒田監督は、70年代、80年代の歌謡曲のマニアでもあり、店の棚には、酒のボトルとともに、自宅からわざわざ運んできたCDが数百枚、ぎっしりと積まれている。

「これでも、厳選してきたんだよ」

 そのコレクションからお気に入りの曲を選び、自ら、プレーヤーにかけて流し、時に口ずさむ。

 店内には、現役時代の名シーンの写真パネルや自らのユニホームなど、お宝グッズもずらり。2015年に高知でプレーした藤川球児(現阪神)や、昨季プレーしたマニー・ラミレス(元レッドソックス)に、高知で10年間プレーし、その背番号1が永久欠番となっている梶田球団社長のユニホームもつるされている。

 もちろん、野球談議もありだ。試合中の裏話はもちろん、現役時代の裏話。「まあ、ここだからいいか」と前置きして話してくれる逸話は、目を見開くようなものばかり。

 野球ファンの“聖地”のような場所でもあるのだ。バーは、球団が賃貸料を払っている。

 だから、れっきとした球団の一事業でもある。居抜きだったこともあり、トイレを和式から洋式に改造した程度で、開店資金には「100万円もかかっていない」と梶田球団社長はいう。ヨーロッパのパブのような、アンティークな雰囲気に「ちょっと良すぎるよ」と駒田監督も、物件を初めてみたときに驚いたほどだった。

 帯屋町といえば、官公庁、高知城、はりまや橋に、高知の英雄・坂本龍馬にまつわる博物館や資料館からもほど近い。そうした目抜き通りですら、このように空き物件が増えている。それが、地方経済の現実でもある。

 リーグ4球団が本拠を置く四国は、都市圏に比べても少子高齢化、人口減少の進行度が早い。高知県でも、他府県に比べて「10年早く少子高齢化が進んでいる」といわれる。

 高知県のHP上で公開されている「高知県のすがた2018」の人口データによると、高知県の人口は、2015年の72万8276人から、2040年には53万6514人にまで減少すると予測されている。

 高知は昨年、元メジャーの大物スター、マニー・ラミレスがプレー。そうした話題性もあって、1試合平均で昨年比229人増の740人の観客動員を集めた。それでも、県の人口が減少傾向にある中で、観客動員数がさらに好転していくことは、なかなか期待できないだろう。


 そうした状況の中で、いかにして、地域のプロスポーツが生き残っていくのか。その切実な課題は、近い将来に、待ったなしで迫ってくる。

 高知は四国IL4球団の中で、最初に単年度黒字化を果たした球団で、2014年から4期連続黒字決算も達成している。独立リーグ球団は、年1億円の予算規模。その中で「バー経営」という新規事業の規模を、100万円前後と概算しても、その1%。決して小さな割合ではない。

 開店から、約1カ月。梶田球団社長によると「赤字ではないですが、今のところはとんとん」と順調な出足だという。

 高知球団の北古味鈴太郎オーナーも「球場から繁華街へリアルに人が流れていく、そうした“ライン”ができたらいいなと。そのためには、球団直営の形がいいかなと思ったんです」と語る。

 球場で生まれた熱気や活気を、そのまま“夜の街”へとつなげていく。それが、沈滞化しつつある地方の経済を活性化することにもつながる。球団という公共財には、そうした起爆剤になるだけの力を秘めているのは間違いない。

 高知はこれまでも、地元の農業高校から子牛を購入して育て、肉として販売したり、農業事業部を作って選手に農作業をしてもらい、作った作物を県内で販売したりと、ユニークな事業を展開し、その成果を上げてきた。

 地域にしっかりと根を下ろし、地域の人たちとともに、地域で生き続けていく。球団は、その“シンボル”として、かけがえのない存在になっていかなければならない。

 そうしたコンセプトを踏まえて考えれば、監督自らがマスターとなるバーを、球団が経営することに、なんら不思議な点はない。

 むしろ、こうしたアイディアこそが、これからの地域のプロスポーツの経営においては、必要不可欠な要素になってくるのかもしれない。

 だから、駒田監督は“二刀流”もいとわないのだ。(文・喜瀬雅則)

【KOMA'S HOUSE】
高知市帯屋町1丁目10―20 浜田ビル3F
営業時間 午後8時から午前0時 不定休

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ〜産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。

このニュースに関するつぶやき

  • 名作映画「ミスター・ルーキー」の助演男優ぜよ。げにまっこと。
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  • 横浜に移ってファースト守ってた時、ヘルメット被って守ってたな MLBのオルルッドを参考にしたんだろうね (´∀`)
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