辞任の福田次官、夜のお店でも「胸触らせて」はセクハラでは? 「言葉遊びを楽しむ」釈明を考察

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2018年04月19日 11:32  弁護士ドットコム

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「週刊新潮」(4月19日号)が財務省の福田淳一事務次官による女性記者へのセクハラがあったと報道した問題で4月18日、福田氏の辞任が発表された。同誌はネットでも、福田氏が「胸触っていい?」などと発言している音声データを公開。女性記者は嫌がっていたとされる。これらの報道を受けて財務省は4月16日、福田氏からの聴取結果を公表。その中で福田氏は女性記者に対するセクハラを否定していた。


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聴取結果によると、福田氏は「女性記者との間で週刊誌報道では、真面目に質問をする『財務省担当の女性記者』に 対して私が悪ふざけの回答をするやりとりが詳細に記載されているが、私は女性記者との間でこのようなやりとりをしたことはない」としている。


一方で、「お恥ずかしい話だが、業務時間終了後、時には女性が接客をしているお店に行き、お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある」「しかしながら、女性記者に対して、その相手が不快に感じるようなセクシャル・ハラスメントに該当する発言をしたという認識はない」とも回答したという。


この福田氏の発言に対し、「女性記者ではなく、キャバクラの女性に対してならセクハラをしてもいいのか」という批判が起きている。「女性が接客している店」が仮にキャバクラであるとして、果たして「胸触っていい?」や「縛っていい?」などの発言は「言葉遊び」の範囲なのだろうか、それともやはりセクハラに当たるのだろうか。南川麻由子弁護士に聞いた。


●女性記者でも、夜のお店の接客係でも、相手女性の意に反する性的言動はセクハラ

女性記者に対する「セクハラ」と、キャバクラで働く女性に対する「セクハラ」は違う?


「まず、セクハラの定義から考えると、相手の意に反する性的言動は、原則としてセクハラになります。例えば、男性が『胸を触らせて』という発言を親密な関係(胸を触ることが当然という間柄)にない女性に言えば、相手の意に反することになるので、セクハラとなるのが通常です。


一方、世の中には、女性が男性を接客する飲食店や風俗店などがあり、ある程度性的なやりとりを前提としたサービスが提供され、それに対して一定の対価が支払われているという実情があります。お店の業態・サービス内容は、単に会話を楽しむだけのお店から、性的マッサージ等が提供されるお店まで様々です。


そうした中、一定の性的言動のやりとりがサービス内容として予定されているお店では、その予定されている範囲内の性的言動であれば、セクハラにはなりづらいといえます。


例えば、世の中にはおっぱいパブというお店のジャンルがあるそうですが、『うちは胸触り放題です』と銘打ってるお店であれば、お店の女性に『胸触らせて』と言っても、それは予定された範囲内の性的言動ということになり、セクハラにはならないでしょう。逆に、『お触り禁止』というルールの店に行って、『胸触らせて』と言いながら手を伸ばしたら、それはセクハラと言われても文句は言えないでしょう」


●キャバクラや風俗業界のセクハラは構造的に可視化されづらいという問題

いわゆるキャバクラは、接待で遊興や飲食をさせる店として、風営法の「接待飲食等営業」(第2条第4項)に該当する。ここでいう「接待」とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」(第2条第3項)だ。


たとえば、福田氏がたまに利用するという「女性が接客している飲食店」がキャバクラだとした場合、接客についている女性に「胸を触らせて」「縛っていい」などと聞く行為は、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法」や「予定されている範囲内の性的言動」を超えているように思える。


「どこまでが『接待』の範囲で、どの程度の会話までが許容されるかは、個々のキャバクラや応対する女性によって様々でしょうし、『キャバクラだからここまではOK』とひとくくりにすることは難しいでしょう。


もしも、予定されている範囲を逸脱した、度を超した言動であれば、それが相手の女性の意に反した場合は、キャバクラなどの店でもセクハラとされることは十分ありえます。度を超した性的言動を繰り返し、店側からたしなめられてもやめなければ、追い出されて出禁になる場合もあるでしょう。


ただし、実際には、セクハラにあたるような行き過ぎた性的言動があっても、店の商売を成立させなければ給与をもらえない女性従業員はなかなか客に抗議しづらく、お店に相談しても、商売のために我慢しろと言われてしまいがちという実態もあります。


男女雇用機会均等法第11条は、事業主にセクハラの防止や適切な対応体制整備の義務を定めていて、これは飲食店や風俗店にも適用されますが、現実としては、構造的に、女性による接待や風俗の業界では、セクハラ・性被害が可視化されづらいのです。接客してくれている女性が笑顔で対応していても、『それはセクハラだよ』と内心思いつつもただ我慢してくれているだけなのかもしれないのです。


金を払っているからといって、どんな振る舞いでも許容されるわけではありません。例えば相手が明示的に嫌がって拒否をしているのに性的言動を繰り返すなど、限度を超えた振る舞いは、違法なセクハラ行為になり得ると考えます。当たり前ですが、夜のお店で働いている人たちも生身の人間です。相手の人格を尊重するという当たり前のことを忘れないで、利用していただくのがよいと思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
南川 麻由子(なんかわ・まゆこ)弁護士
インターネット・SNS関連や、離婚、相続、遺言、成年後見等を得意分野とし、民事・家事・刑事等幅広い分野に対応。ハラスメント等の研修、子どもや市民向け法律講座やLGBT支援などにも取り組む。Twitterアカウントは@lawyerMAYUZO。
事務所名:あおぞらの虹法律事務所
事務所URL:http://aozoranoniji.business.site/


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