中谷美紀がユースケ・サンタマリアに大爆発! 『あな家』が描いた現代女性の叫び

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2018年04月21日 06:01  リアルサウンド

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「女に一体いくつの役割押し付けるんだ! できるもんなら、そっちがやってみろ!」


 金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS系)、第2話にしてまさに大波乱。妻は本音をぶちまけ、夫は秘密を重ねていく。なかでも今回のハイライトは、佐藤真弓(中谷美紀)が、モラハラ&セクハラ男・茄子田太郎(ユースケ・サンタマリア)に啖呵を切ったシーンではないだろうか。


 一人娘の中学進学を機にキャリア復帰し、旅行代理店での仕事にも慣れてきた真弓。だが夫の秀明は、太郎の妻・綾子(木村多江)と関係を持った翌日から、掲示板サイト『発言小町』で見た浮気チェックリスト通りの怪しい行動を取り、真弓の不信感は募る一方だ。罪滅ぼしのように真弓をデートに誘った秀明だが、それも綾子の呼び出しによりすっぽかされる。何かがおかしいとモヤモヤしているときに、偶然にも太郎の担当に。2組の夫婦が接近した。


 勤務時間外にも関わらず太郎に呼び出された真弓が向かった先は前回、秀明が泥酔した太郎行きつけのスナックだ。太郎は、不躾に男性から見た性的に惹かれる女性の順位を示した「一盗二婢三妾四妓五妻」という言葉を説き出す。1番は他の男性の女性を奪うこと。2番は使用人を抱くこと、3番は愛人を囲うこと、4番は商売の女性を買うこと、そして妻は最下位だ、と豪語。そして、女の“現役復帰“が叶わなかった真弓の神経を逆なでするように「そんな可愛げないの顔ばかりしてると、旦那に抱いてももらえないよ」と言い放ったのだ。


 これには真弓も「ふざけんな!」と大爆発。「家事と仕事に駆けずり回って、24時間休みなしでお母さんやって、それでも疲れた顔をするな? 手を抜くな? 料理をやれ? それでいて旦那に浮気されないように、若い女に負けないようにキレイでいろ? 笑顔を絶やさず女でいろ? そんなことできるか、できるわけないだろ!」と反論し、掴みかかったもんだから、太郎も大慌て。綾子がいつだって「幸せなのはあなたのおかげです」と自分を立ててくれていた太郎にとって、真弓のこのキレっぷりは予想外のものだったはず。


 真相はまだわからない。だが、太郎の様子を見ていると、どうやら綾子と秀明の不倫を知っているように思える。「幸せだけど寂しい」「奥さんなんて呼ばないで」と潤んだ瞳と艶っぽい仕草で訴える綾子は、もしかしたらもともとそうした性分があり、不義密通の相手も秀明が初めてではないのかもしれない。太郎は、そんな綾子をあえて泳がせ、他の男と通じさせることで妻でありながら「一盗」を感じられるようにしているのではないか。そして使用人のような扱いをして、親の居る家で身体を重ねることで「二婢」を味わう。さらに、次々と若い女性にセクハラを繰り返すのは束の間の「三妾」、贔屓のスナックは「四妓」気分に浸る場……。太郎にとって、女性は自分に対して何らかの利益をもたらしてくれる役割を持った存在なのだろう。勝手に相手の役割を見出して、その枠にハマっていないと「ダメなやつだ」と威圧していく。それが、ハラスメントを生んでいる。


 きっと、そうした思考回路を持つ太郎自身も、自らの存在を役割で認識し、その役割を全うすることに人生の意義を見出そうとしているのかもしれない。社会的にいい仕事とされる教師となり、専業主婦を養うだけの稼ぎがあるいい夫となり、両親と二世帯住居の家を立て直すいい息子となり、我が子に何不自由をさせないいい父であること。彼の言動には迷いがないのは、世の中にはいろいろな考えの人がいることなど、想像もしないからだ。役割はすでに決まっているもの。キッチンの数が家族に1つと決まっている、と言い張るように。その呪縛が、知らず知らずに視野を狭め、人望を失っていることにも気づけなくさせる。


 完成披露試写会で、太郎を怪演しているユースケ・サンタマリアは「(太郎は)人を殺してそうでしょ(笑)」とジョークを披露して笑いを誘ったが、あながち間違ってはいないかもしれない。太郎の言動は接する相手の、そして自分自身が持つ個人の自由な考え、つまり人格を殺し続けているのだから。不変的な不倫ドラマの筋書きの中に、100名の既婚女性への取材から見えてきたリアルが散りばめられている本作。第2話から見えてきたのは、社会に多くの役割を求められて疲弊する現代女性の叫び。役割は、注文住宅のように個性を活かしてカスタマイズしていくものだ。2018年の今、このドラマが描かれるのは、いつの間にか凝り固まってしまっていたそれぞれの役割を、改めて見つめ直す時期にあることを意味しているのかもしれない。(佐藤結衣)


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