「2年連続最多勝」はむずかしい

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2018年04月26日 11:41  ベースボールキング

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沢村賞投手・菅野も苦戦(C)KYODO NEWS IMAGES
◆ スタートでつまずいた菅野

 待ちに待ったプロ野球の開幕から間もなく1カ月。各チームが20試合前後を消化し、それぞれのチームにおける「良い誤算」「悪い誤算」が徐々に見え始めてきた。

 開幕直後に心配の声が集まったのが、巨人の大黒柱・菅野智之である。昨季は最多勝と最優秀防御率の二冠に輝き、自身初となる沢村賞の栄誉に輝いた日本球界を代表する右腕であるが、今年は開幕戦で7回5失点の大誤算。2戦目でも6回5失点(自責は4)と立て続けに打ち込まれ、まさかの連敗スタートとなった。

 ここ2戦はらしい姿を取り戻し、8回1失点と9回2失点の好投で連勝。2勝2敗と星を五分に戻したが、防御率はまだ3.60。出遅れを取り戻す戦いはつづく。

 近年の球界で悪しきジンクスのようになりつつあるのが、「最多勝投手の苦戦」。同じ投手タイトルでも最優秀防御率や最多奪三振は過去10年で見ても2年連続で獲得している投手が複数いるのに対し、最多勝を2年連続で獲得したのは2011年・2012年の内海哲也(巨人)だけ。かなり高いハードルとなっているのだ。

 防御率や奪三振は自分との戦いとなる部分が大きいが、勝利となると打線の援護が不可欠。どんなに好投をしても打線が点を取れなければ白星はつかないし、逆にどれだけ打たれていても味方打線の頑張り次第で白星が転がり込んでくることもある。加えて、自分の後を受けるリリーフ投手が打たれてしまうと先発の勝利も消えるため、いわゆる“運”が占める要素も大きい。


◆ 反動に注意

 今回は近年の最多勝投手の“翌年”に注目。直近5シーズン(2013年〜2017年)の最多勝投手の翌年のシーズン成績と、開幕直後の4月終了時点での成績をまとめてみた。

 まずはパ・リーグの歴代最多勝投手を見ていこう。


【2013年】
▼ 田中将大(楽天)
[2013年] 24勝0敗1セーブ 防1.27
[2014年] 13勝5敗 防2.77
[2014年4月] 3勝0敗 防御率2.55
※2014年はメジャーリーグでの成績

【2014年】
▼ 金子千尋(オリックス)
[2014年] 16勝5敗 防1.98
[2015年] 7勝6敗 防3.19
[2015年4月] ※登板なし

【2015年】
▼ 大谷翔平(日本ハム)
[2015年] 15勝5敗 防2.24
[2016年] 10勝4敗 防1.86
[2016年4月] 0勝2敗 防2.27

▼ 涌井秀章(ロッテ)
[2015年] 15勝9敗 防3.39
[2016年] 10勝7敗 防3.01
[2016年4月] 5勝0敗 防2.59

【2016年】
▼ 和田 毅(ソフトバンク)
[2016年] 15勝5敗 防3.04
[2017年] 4勝0敗 防2.49
[2017年4月] 2勝0敗 防2.08

【2017年】
▼ 東浜 巨(ソフトバンク)
[2017年] 16勝5敗 防2.64
[2018年] 1勝2敗 防5.49

▼ 菊池雄星(西武)
[2017年] 16勝6敗 防1.97
[2018年] 4勝0敗 防4.03


 渡米した田中将大に関しては何とも言えないが、ご覧のように軒並み前年よりも白星を減らしていることが分かる。

 なかでも2014年の最多勝・金子千尋は肘の故障の影響で4月中の登板が叶わず、2016年に日本球界復帰1年目にして最多勝に輝いた和田毅も、開幕3戦目の登板前に肘の負傷を訴え、2017年はわずか8試合の登板に終わっている。

 この二人に共通しているのは、ともに30代でタイトルを獲得しているという点。もともと故障がちなタイプではあったが、フル回転の活躍を見せた翌年にその反動が来てしまったという格好だ。金子は出遅れながらも7勝を挙げ、和田も離脱前は2戦2勝という良い滑り出しを見せていただけに、余計に悔やまれる故障になった。


◆ 最多勝翌年にワースト2位の黒星

 続いて、セ・リーグの投手たちを見てみよう。

【2013年】
▼ 小川泰弘(ヤクルト)
[2013年] 16勝4敗 防2.93
[2014年] 9勝6敗 防3.66
[2014年4月] 3勝1敗 防2.66

【2014年】
▼ ランディ・メッセンジャー(阪神)
[2014年] 13勝10敗 防3.20
[2015年] 9勝12敗 防2.97
[2015年4月] 2勝3敗 防4.85

▼ 山井大介(中日)
[2014年] 13勝5敗 防3.21
[2015年] 4勝12敗2セーブ・5ホールド 防3.92
[2015年4月] 2勝2敗 防2.85

【2015年】
▼ 前田健太(広島)
[2015年] 15勝8敗 防2.09
[2016年] 16勝11敗 防3.48
[2016年4月] 3勝1敗 防1.41
※2016年はメジャーリーグでの成績

【2016年】
▼ 野村祐輔(広島)
[2016年] 16勝3敗 防2.71
[2017年] 9勝5敗 防2.78
[2017年4月] 1勝1敗 防2.42

【2017年】
▼ 菅野智之(巨人)
[2017年] 17勝5敗 防1.59
[2018年] 2勝2敗 防3.60


 パ・リーグの投手たち以上に、いまひとつな成績となっているのがセ・リーグの最多勝投手たちだ。

 前田健太が前年以上の白星を挙げているが、これはメジャーでの成績。その他の投手は最低でも勝ち星を3つ以上減らしている。どの投手も特に出だしが苦しく、最初の月で勝ち越したのは2014年の小川泰弘が唯一だ。

 また、30代で最多勝に輝いたメッセンジャーと山井大介は大きな故障こそなかったものの、成績的には奮わず。山井に至ってはあまりの不振からローテーションを外れるなど、最多勝の翌年にシーズンワースト2位の黒星を記録している。

 近年は苦戦が続く「最多様投手の翌年」。今年も菅野と東浜がスタートでつまずいており、菊池も4戦4勝とはいえ防御率は4.03とらしくない投球が続いている。

 果たして、彼らはシーズンが終わった時にどんな成績を残しているのか。内海以来となる2年連続の最多勝投手は誕生するのか。注目だ。


文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)

このニュースに関するつぶやき

  • 最多勝は打線との兼ね合いもあるからな。ある意味、味方次第。
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