相思相愛だったはずの夫との仲を義母に引き裂かれ、2人の息子を連れ去られた

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2018年05月25日 18:03  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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OLYMPUS DIGITAL CAMERA『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?

第16回 有井なみさん(仮名・30代前半)の話(前編)

「自分で言うのもなんですけど、私の人生って激動すぎると思いません? 『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)が全然、鬼だと感じない。“私の姑の方が鬼だったよ!”って言いたいです」

 マジシャンの有井なみさんはそう話す。現在、9歳と6歳の2人の息子と一緒に暮らしているが、一時は、その子どもたちを連れ去られ、ひとりぼっちになっていたという。そんな有井さんが“激動すぎる”と話す体験を伺う前に、まずは元夫との出会いについて話してもらった。

「関東のやや郊外にあるベッドタウンで育ちました。美術大学卒業までは、ずっと実家住まい。マジックは小さいときからやっていて、美大に通っていたときのバイトも新宿のマジックショップでした。元夫のHはバイト仲間でした」

■最初は相思相愛のラブラブカップルだった

――Hさんは、どんな方ですか?

 温和な性格で、怒ったところを見たことがなく、行きたいところややりたいことを私に押し付けてきたりもしない。それどころか私の好みをくみ取って、先回りして選んでくれる。そんな彼を、私は好きになっちゃったんです。相思相愛。周りから見たらベッタリくっついてるラブラブのカップルって感じだったんでしょうね。

――完璧な関係じゃないですか?

 ところが、付き合っているうちに嫌な部分が出てきた。1つは誰かに依存したい体質だってこと。あともう1つは、彼がマザコンだということです。母親と毎日とりとめのない内容のメールのやりとりをしていていましたし、半熟のゆで卵の作り方をわざわざ電話して聞いてみたり、母親に耳かきをやってもらってるっていう話を自分からしたりするんです。

 Hさんと2年付き合った頃、有井さんは妊娠していることに気付く。それを機会に2人は結婚し、関東の郊外にある賃貸マンションで同居を始めた。今から10年前のことだ。

――子どもが生まれたらどうするかといった気構えはあったんですか?

 ベビー用品をそろえたり、育て方を本やネットで調べたりしました。2人して話し合ったりもしましたよ。それで生まれる直前になって、彼はこんなことを私の両親の前で言ったんです。「洗濯とか掃除は、昼空いてる私が全部やります」って。

――頼もしい約束ですね。彼は昼の時間が空いているんですか。それで実際、やってくれたんですか?

 いいえ。赤ちゃんが生まれても、朝から夕方まで寝てて、何もしてくれないんです。というか、約束したこと自体忘れてるんですよ。

――それはひどいですね。

 赤ちゃんが全然おっぱいを飲んでくれなくて、毎日夜泣きしてたんです。昼は昼でお世話をしなきゃならない。だから私、その頃は慢性的な寝不足でした。一方で、彼は昼間ずっと寝てて、掃除や洗濯はまったくやらないんです。だから結局、私がやってました。そんな感じでずっと寝不足のまま、育児も家事もすべて私がこなしてたせいか、心身共に追い詰められちゃって、「離婚」という言葉が頭に浮かびました。

――では、全然、子どもの面倒は見てくれなかったのですか?

 家に友達が遊びに来るとか、そういう人目があるところでは、オムツを替えてくれたり、抱っこしたり、あやしたりしてくれました。だけど、普段、家では家事や育児を全然やってくれなかったです。

――3年後には2人目の男の子が生まれたんですよね? その頃、上のお子さんはどこかに預けたりしたんですか?

 私も彼も、日中は家にいて夕方から仕事ということが多いため、保育園だとほとんど一緒に過ごす時間がなくなってしまうと思い、上の子は幼稚園に入れて、下の子は仕事のある日だけ、区の一時保育を利用していました。

 2人の子どもを育てたり、家事や仕事をこなしたりと、有井さんは日々奮闘した。一方でHさんは、そんな彼女に、恋人時代のような気遣いを見せることができず、2人は徐々に親密さを失っていく。さらに彼らの仲を決定的に引き裂いたのは、義母の存在であった。

――お義母さんに何かされたのですか?

 3カ月に1回とか、ひどいときなんか毎月、お金の無心をされました。それに応じてHがお金を貸すんですが、一度も返してもらったことがありません。それどころか義母はまったく悪びれずに、「お母さんがパチンコで勝ったお金で、全部リビングを模様変えしたのよ」とか「はい、これプレゼントよ」などと平気で言うんです。

――金遣いが荒そうですね。

 金銭感覚が普通じゃなかった。自己破産をしたことがあり、“パチンコ狂い”なんです。親戚から借金しまくっていて、返してない。私たちの結婚式に親戚が来てくれなかったのは、借金踏み倒しが原因だってことは式の後に知りました。

――その後も、お金を貸し続けたんですか?

 下の子が2歳になった頃。さすがに堪忍袋の緒が切れまして、Hにはっきり言ったんです。「これ以上、私に無断でお金を貸さないで。このままじゃ、破産しちゃう。もし次、勝手にお金を貸したら離婚するよ」って。「わかった、もうしない」とHは言ってくれました。ところが1カ月後、またお金を貸しちゃったんです。「こないだ約束したのに!」って怒りながら、記入してあった離婚届を彼に渡しました。すると、1週間後に、彼が家からいなくなりました。

――ダブルショックですね。

 急性ストレス障害になってしまいました。記憶はなくすし、眠れないし、気力が湧かない。しかも人間不信。もちろん最低限の子育てはするんですけど、無気力で無感情になってしまったんです。子ども2人抱えて、彼は消息不明。もう茫然自失です。たまたま彼のSuicaが出てきたので、履歴を確認しました。すると、特定の駅とマジックのレッスン場との間を往復してることがわかりました。彼は浮気してたんです。

――では、彼は家を出て行ってから、浮気してる女の家にいたんですか?

 いえ。いたのは実家でした。振られちゃったみたいで、義母がかくまっていたんです。それで私、子どもたちを連れて、車で義父母が住んでいる茨城県西部まで行きました。すると到着した途端、義母に罵倒されました。「子どもを殺す気か! この人殺しが」って。そのとき、私、睡眠薬や安定剤を飲んでいて、本当は車を運転しちゃいけない状態だったんです。でも心配して、薬を調整して必死になって会いに行ったのに、あんまりじゃないですか。だからそのとき、「これはもうない。離婚しよう」って心の中で決意したんです。

――そこからすぐに離婚とはならなかったんですか?

 いや、それどころかHから「別れたくない」ってメールで連絡がありました。

――意味がわかりません。

 愛人に振られちゃったから、私とはやっぱり別れたくないって思ったみたいです。つまり彼は、どこかに居場所があればいいし、一緒にいられれば、誰でもよかったのかなと思います。

――その後は、彼とよりを戻したのですか?

 子どもたち2人が、自宅マンションから連れ去られました。有利に離婚を進めるため、義母が入念な計画を作り上げて実行したんです。

――連れ去られたのにシングルマザーって、話がつながらないですが……。順を追って話してもらえますか?

 茨城県西部の義実家から帰ってきてしばらくしたある日の深夜、義母から電話がかかってきたんです。「おじいちゃん(Hの祖父)が亡くなったから、お通夜に来なさい」って。どう答えていいいのか困っていると、「あんたは来なくてもいい。今すぐに、子どもたちだけでもこっちによこせ」って。「絶対行きません」と言って私、電話を切りました。

 その後、しつこく何度も電話がかかってきましたが、出ませんでした。お葬式はおじいちゃんのことを思うと心苦しかったけど、結局出ませんでした。連れて行ったら最後、子どもたちと離ればなれになるかもしれないって思ってましたから。

――それから、どうなったんですか?

 1週間後、義母たちが突然やってきました。私たち母子が住んでるマンションに。ほかにHや義兄夫婦も一緒という大所帯でした。それで来るや否や、部屋の入り口で、義母がひとりわめき始めたんです。「お前は統合失調症だ。子どもたちがかわいそうだから連れていく」って。ちなみに、統合失調症というのは根も葉もない大嘘です。「私は子どものことを愛してます!」って興奮して言い返しました。すると「そんなふうに怒るから、息子(H)だって家にいるのが嫌になったのよ」って、私が何か言うたびに、怒らせようとして揚げ足を取るんです。

――その間、義兄夫婦は何をしていたんですか?

 私が義母とやり合ってる間に、子どもたちを連れ出していきました。義兄たちに息子2人は懐いていますから、全然警戒はしません。そのまま、ついていったんです。「やめてください。子どもたちを無理やり連れていくとか、本当にやめてください」って叫んで抵抗しようとしたんですけど、義母に突き飛ばされてしまって。その隙に、子どもたちは連れていかれました。

――Hさんは、どうしていたんですか?

 外で私と義母が揉めている間に、家の中で、私の通帳やら銀行印やらマンションの権利書や現金、車の鍵といった大事なものを物色して、かばんの中にどんどんと詰め込んでいたようです。

――その後、有井さんは、どういう行動を取られたのですか?

 翌日、警察へ相談に行きました。すると警察は、「まだ離婚していないんだから、盗難ではありません。一切何の犯罪でもありません」って言うんです。そんな警察の対応を夫側は百も承知の上の犯行だったんです。ひどいでしょ。しかも、私が警察に行っているその日のうちに、子どもたちの住所変更などの手続きを済ませてしまったんです。車もいつの間にか持っていかれて、気がついたときには、すでに名義変更されていました。

 用意周到な義母たちの仕打ちによって、有井さんは大事なものすべてを失ってしまった。その最たるものが、2人の息子たちであった。

(後編へつづく)

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  • 日本で結婚する層は、こういう韓国的な傾向がある世帯か、余裕があるハイスペック層に二極化するので、この手の事例は増えるはず。そういう例が目立つと結婚のネガティブイメージが増すので、さらに非婚化する。
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