増え続けるハラスメント、過剰な「ハラ・ハラ状態」の生きづらさ

「イマドキの若いヤツらはよー、セクハラ・パワハラ・モラハラとか、そんなことばっか言ってきやがってよー、オレっちなんか部下に一言話しかけるだけで“ハラハラ ” しちまうよ！」

  

はい！　座布団百枚!!　ってことで、「セクハラ（※「セクシャル・ハラスメント」の略。ちなみに我々世代にとって「セクシャル」とくれば桑名正博の「セクシャル・バイオレット」だった）」が約30年前の1989年に新語・流行語大賞の新語部門・金賞を受賞していて以来、いまだ増殖の気配が止まらない「ハラスメント」の大量発生状態に警鐘を鳴らす記事が、『現在ビジネス』に掲載されていた。

 

特定社会保険労務士でハラスメント問題に詳しい野崎大輔という人が上梓した著書『「ハラ・ハラ社員」が会社を潰す』（講談社+α新書）をベースとする構成であるのだが、とりあえずは記事内にあった、まさに百花繚乱な「〜ハラスメント」群の一部を、ゴメスのツッコミ付きで紹介してみよう。

 

・マタハラ（マタニティ・ハラスメント）：職場において妊娠・出産をした人が、業務上支障をきたすとの理由で精神的・肉体的な嫌がらせを受けること。ゴメス的にコレは良くないと思う。

 

・スメハラ（スメル・ハラスメント）：香水・体臭・口臭など、自身が発する強い匂いで周囲を不快にさせること。てっきり私は、体臭や口臭がキツイ人を「くさ〜い！」と詰る行為のことだと勘違いしていた。きつすぎる香水やら三日間風呂に入らないケースやらはともかく、そこそこ清潔を心がけていてもおのずと身体から発する匂いをハラスメントと断罪することこそ一種の肉体差別だとも思うのだが？

 

・カラハラ（カラオケ・ハラスメント）：本人の意思に反して無理矢理カラオケを歌わせること。たしかにコレは面倒かも。でも、いちいちハラスメントと騒ぎ立てるほどのことでもないと思う。

 

・オワハラ（終われ・ハラスメント）：企業側が採用したい学生に対し、内定を条件に就職活動を終えるように強く、あるいは遠回しに迫ること。この不景気のなかで、それだけ「期待されている」ってことの裏返しなので、むしろ喜ばしいことなのでは？　

 

・テクハラ（テクノロジー・ハラスメント）：IT知識の高い人が低い人に対し、意図的に専門用語を連発したりの不遜な態度で接すること。コレって、単なる嫌なヤツだろ？　そーいうヤツとの付き合い方くらい、自分で考えろってことだ。

 

・ブラハラ（ブラッドタイプ・ハラスメント）：人格や行動を血液型で決めつけて、相手を不快にさせること。「やたら几帳面だと思ったら、やっぱりＡ型だったか」なんて軽口もハラスメント扱いされる、らしい。そんだけで？　もはやインネン以外の何物でもない。

 

すき焼きを囲んだときに牛肉ばかり食って、他のみんなには野菜しか残さない輩を「ギュウハラ（牛肉・ハラスメントの略。牛ハラミの略ではない）」と糾弾してみたり、「絶対気持ちイイから今度一緒に走ろうよ！」と誰彼かまわず執拗にハーフマラソンとかに誘ってくる輩を「ランハラ（ランニング・ハラスメントの略）」と陰口をたたいてみたり……なんて遊びは、それはそれで面白かったりもするのだが、この過剰な「ハラ・ハラ状態」が今後、仕事上にまでもっと及んでくるのなら（※現時点で厚生労働省が公式サイトで定義しているのは、セクハラとパワハラとモラハラだけなのだそう）、それはそれでマジうっとおしい……と、私は懸念する。前出の野崎さんも、「なんでもかんでもハラスメントと騒ぐ、その発言こそハラスメントです！」と断言している。

 

私は、昨今の草食系男子現象も、たしかに「メディアの進化による“オカズ”の多様化・上質化」「若者の潔癖化」「男子の精子量がここ数十年で激減している」……ほか、さまざまな原因が指摘されているけれど、この“ハラスメントな風潮”にも少なからずの一因があるとさえ考える。ちょっとモーションをかけただけで「セクハラ」だ、口説いただけで「モラハラ」だ、壁ドンしただけで「パワハラ」だ、などと騒がれた日には、そりゃ「とっとと家に帰って、ネットでタダで鑑賞できる○○○○ちゃんの無修正ＡＶで×××しとこ」ってことになってしまうではないか。「女子をオトすときはチョット強引なくらいのほうが◎！」といった恋愛マニュアルが適用できなくなるのだ。

 

もはや、日本中を席巻するハラスメント旋風に歯止めをかけるのは無理だろう。が、今の若い男子たちの草食ぶりを真剣に嘆くのなら、これ以上“新しいハラスメント造語”を量産するのは……控えたほうが無難なような気がする。