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「戦略も必要。でも、実行はその何十倍も重要」スマニュー西口×チームラボ堺が語るマーケ視点の経営

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2018年06月14日 13:03  MarkeZine

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MarkeZine

写真チームラボ 取締役 堺大輔氏(写真右)スマートニュース 執行役員 マーケティング担当 西口一希氏(写真左)
チームラボ 取締役 堺大輔氏(写真右)スマートニュース 執行役員 マーケティング担当 西口一希氏(写真左)
 本連載では、スマートニュースの西口一希氏が経営者やCMOなどマーケティングそしてビジネスの最前線で活躍する人物を訪ね、「マーケティング視点の経営」についてディスカッションする。今回は、チームラボでソリューションビジネスを担う堺大輔氏がゲスト。後編では、経営側でありながら「具体的に話をすることが大事」「デジタルシフトを進めたいならプログラミングがお勧め」とする思考に迫った。


■プロジェクトをレビューして汎用化しておく



チームラボ 取締役 堺大輔氏(写真右)

スマートニュース 執行役員 マーケティング担当 西口一希氏(写真左)


西口:前編では、チームラボが「体験」の提供をどのように考えているかというお話から、各プロジェクトの運営の仕方、猪子さんや堺さんもフラットに現場に入って具体的に話をしていることなどをうかがいました。「滝」タグでソートしていちばん上にくる人がジャッジする、というのは新鮮でした(笑)。


堺:「滝」の専門家、「花」の専門家、センシングのこの部分の技術なら彼、プロジェクターのこれなら彼、といった形で各自が専門家なので、それぞれの判断が必要な場で誰にいちばん発言権があるべきか、おのずと皆がわかっているんですよね。で、よりクオリティを上げるにはどうすべきか、という軸で皆が動いているから、早い。


西口:自主プロジェクトのデジタルアートの制作とクライアントワークで常時相当数のプロジェクトが動いているそうですが、クライアントワークにしても、毎回ゼロから作っているとすごく負荷がかかりますよね?


堺:もちろん、そうですね。なのでパッケージ化やモジュール化はすごく重視しています。クリエイティブはゼロから作るものと思われがちで、確かにアナログな作品だとそうなることも多いですが、僕らの場合はデジタルなので、そこのロスは省きたい。


 また、レビューして汎用性を抽出しておくことで、クリエイティブの知見も蓄積されます。短期間でエグゼキューションに漕ぎ着けられるのは、その部分も大きいですね。


■「点と点をつなぐ」ことができる理由


西口:スティーブ・ジョブズの名言に「Connecting The Dots(点と点をつなげ)」という言葉がありますよね。プロジェクト運営のお話を聞いていて、それがパッと浮かびました。経営陣を含めて皆が点と点をどうつなげばいいかわかっているから、混乱せずにエグゼキューションまでたどり着ける。


堺:僕もそのジョブズの言葉、腑に落ちます。僕らの場合、エグゼキューションが最も重要で、アイデアベースで抽象的な話をしていても何の意味もない。それって他社さんだとブレストだったり戦略会議といわれたりするのかもしれませんが、実際、うちでそういう会議はあまりないんです。着想があったら、すぐに「どう実現できるか」「誰が/どの技術が必要か」といった具体的な話に入っていくので。


 ものを作る過程でいうと、アイデアの段階は本当に0.01%くらいしか前に進んでいなくて、残りの99.9%は具体的にものを作っていく過程の無数のジャッジによって進んでいく。そこでコストも体験も変わっていって、その積み重ねこそがクオリティの差になってくると思います。


西口:その0.01%でしかない最初のアイデアが「お客様にとって新しい価値として成立するかどうか」という、残りの99.9%を見通す判断、つまりクリエイティブの判断は、誰が、どの様におこなうのですか?


堺:それも、そのときの初期のメンバーでパッと決まりますね。おもしろいかどうかの判断は、やはり暗黙知的なものが大きいかもしれないです。皆がものづくりに携わっていて、同じ方向を見ているから、「だって絶対こっちでしょ?」というのはすぐに見出せる。


■全体を見通して具体的に判断することが重要


西口:なるほど……そこは一般的な会社だとなかなか真似しづらいかもしれませんが、経営陣も「具体的に話す」というところは象徴的で、大きなヒントがある気がします。


堺:経営側が具体をみていくのは、どんなビジネスでも重要なんじゃないかなと思いますね。たとえば店舗のデジタル化も、Amazon GOにしても話を聞く限り、一つひとつの技術はそこまで目新しいものじゃない。でも、その組み合わせがすごくバランスがいいんだろうと思います。


 ありものではなく組み合わせてソフトウェア化するのに、初期投資は必要でも、多店舗展開すれば収支が合う、そこまで見越して判断できる人が指揮しているのかなと思うんですね。別にプログラミングを書けなくても、実現までに膨大な判断があることをわかっている人がやっている。そんな感じがします。


西口:組織運営と併せてうかがいたかったんですが、そうやって各自が専門領域をもってフラットにプロジェクトに関わる場合、各人の評価制度はどうしているのですか?


堺: 毎月、役員と給与会議をしています。役員が5人いるので、ざっと100人ずつくらい。


西口:毎月ですか? けっこうな数ですね。


堺:確かに……。でも100人くらいなら、まだ直接かもう一人を介するくらいでそれぞれの顔や仕事がわかるので、評価の話し合いもできます。そこでも、今取りかかっている仕事とその成果、力の付け具合などを割と具体的に話して、調整していきますね。かえって半年や年1回だと時間もパワーがかかりすぎて、できないような気がします。


■一律のKPIではできない個々人の評価


西口:そのとき、共通の評価軸はあるんですか? たとえば「リーダーシップ指数」みたいな。


堺:いや、全然ないです。評価に関しては僕らも常に試行錯誤で、何かアルゴリズムがあれば採用したいんですが、今のところ僕らのメンバーに当てはめられる一律のKPIは見つかっていません。


 なぜなら「滝」タグと「花」タグとセンシングの何々の技術と、ECのUIと、採用部分のプレゼンテーションと…、といったばらばらすぎる専門能力を比べないといけなくなるから。それ、無理ですよね?


西口:無理ですね! そうすると、各役員の主観?


堺:そうなりますね。それが正解かはわかりませんが、今のところは。それに、リーダーシップ指数みたいなKPIも一応各社で定義しているんでしょうが、僕からみるとそれらもまあまあ抽象的です。だから、やらない。


西口:なるほど。確かに、いくつかのKPIで切ると、そこに分類されないものがどうしても間に落ちてしまう感じがありますね。


堺:そう。で、今どんどん人を増やしている最中なので、僕らの中のタグは刻々と増えている。そうするとますます一律のKPIでは測れない人たちが増えていくので、指標を持つのは難しいんです。


西口:ちなみに、今後そうやってどんどんスケールすると、猪子さんや堺さんが入らないプロジェクトも増えて、評価もますます難しくなりますよね。どういう展望を?


堺:プロジェクトに関しては、既に今も僕らに代わる“任せられるタグ”みたいなのを持つメンバーが出てきているので、彼らに預けています。評価は………そうですね、課題ですが、やっぱり一律の評価軸は僕らにはそぐわないような。何らかの形で、現状のような短いスパンの手作業を続けていくと思います。


■デジタルシフトが進まないのはなぜか?


西口:では、ここまでも抽象と具体という大きなテーマが挙がったと思いますが、改めてデジタル化に悩む経営者やマーケティング責任者に、こうしたらいいのではというアドバイスをいただけませんか?


堺:そうですね……具体的に考えるべきというのは本当にそうで、「デジタルシフトだ」と掲げるだけだとやっぱり絵空事になる気がします。でも、そう言うだけでは皆さんピンとこないと思うので、お勧めなのは、プログラミングをしてみてはどうかな、と。


西口:なるほど。ちょっとコードを書いてみましょうと。


堺:そう。プログラミングって、場合分けなんですよ。その場合分けに定義されないことは、例外処理になる。プログラミングをやってみると、今自分が定義したことがプログラムに落とせない、つまり具体化できないと気づいて、具体化できないと物事が進まないと実感するのでは、と思います。


西口:それは、ラボさんらしい発想ですね。


堺:たとえが具体的過ぎましたか(笑)。違う言い方をすると、デジタルシフトの題目を掲げるなら、自分たちはどういう状況で、具体的に何をすべきで、と全部分解していかないといけない。


 そこでその都度、何がいいのか悪いのかを判断しないと現場の人は動けないので、まずはこの分解から判断までを経営から現場へ共有し、事業や市況についても現場へ情報提供する必要があります。経営のほうが当然、知っている情報が多いですから。


 同時に、経営は現場からディテールの情報を仕入れないといけないと思います。お互いの情報量が均等になって、目線が合って初めて議論ができ、向かう先とそこに至る判断、今具体的に何が重要なのかの価値観を統一できる。だから、動けるんじゃないでしょうか。


■自分の体験に結びつけて考えよう


西口:とても腹落ちするご意見です。デジタルの細かい部分まで理解するのは難しくても、レイヤーに応じて「誰に聞けばわかるのか」をつかんでディスカッションし、実行レベルまでブレイクダウンしていくことはできるはずですよね。それが、点と点をつなぐということであり、経営はそこを軽視してはいけない。


堺:そう思いますね。もちろんストラテジーは必要ですが、その何十倍もエグゼキューションが重要だから、もっとコミットしてほしい。また、その重要性はたぶん今、どんどん増しています。だから、ストラテジーでコンサルティングしてきた複数の会社がそっち側にシフトしようとして、エグゼキューションの会社を買収しているじゃないですか。


 Uberにしても「時間がある人にドライバーになってもらえないか?」と発想することより、その実現のほうがずっと大変だっただろうことは、想像がつきますよね。そこに至る道のりにあるいくつもの細かい判断こそ、結果を左右する……と僕らも信じて、細かい部分を改善し続けています。


西口:今回も、名残惜しいのです……最後に、若手マーケターへ今後何をしていけばいいか、ヒントをもらえますか?


堺:やっぱり、具体的に考えることだと思います。自分の体験、自分の身の回りの不便を感じて、そこに結びつけて具体的に策を考えてみる。上の人たちは、もっと目線を上げろとか、戦略が重要だというかもしれませんが、お客さんや生活者には最終的に手にして体験するモノやサービスがすべてだから。


 一つひとつの分岐点での判断に、粘り強く向き合うと、エグゼキューションの精度を上げていく力がつくと思います。

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