磁気ポリマーでワインの味が大幅改善!? 気になるテイスティングの結果は

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2018年06月20日 17:42  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

「ピーマン臭」の原因物質を除去


赤ワインのカベルネ・ソーヴィニヨンに含まれる、ワインの味を落とすとされる物質を取り去るのに、磁石が有効だということが、このほど明らかになった。



ワインにはさまざまな物質が含まれており、これがワイン特有の味や香りになっている。適量であれば「良い香り」となるが、多すぎると「不快なにおい」、「雑味」となってしまう。



カベルネ・ソーヴィニヨンには、アルキルメトキシピラジン(MP)と呼ばれる物質が含まれている。植物系の香りのもととされるが、この含有量が高くなると、フルーツ系やフローラル系の香りを邪魔してしまい、ワインの味を「葉っぱっぽい」とか「ピーマン臭い」と感じるものになる。



このMPは、早いタミングで収穫されたぶどうや、寒い天候のもとに育てられたぶどうで作ったワインに多くみられるという。またテントウムシによる被害(テントウムシ汚染などと呼ばれている)を受けた場合も、MPが多くなる。



しかしオーストラリアのアデレード大学のデイビッド・ジェフリー准教授率いるチームは、もともとのワインの風味を損なうことなしに、この物資を取り去る新しい方法を見つけ出した。科学雑誌ジャーナル・オブ・アグリカルチュアル・アンド・フード・ケミストリーに発表された実験結果を、英紙ザ・タイムズや科学系ニュースサイトのサイエンス・デイリーなどが報じている。



分析値もテイスティングも結果は良好


研究チームは、南オーストラリアのバロッサ・バレーで収穫されたぶどうカベルネ・ソーヴィニヨンを大量に購入してワインを作った。その際、ぶどうを潰した後にMPの一種である3-イソブチル-2-メトキシピラジン(IBMP)を加え、さらに磁気ナノ粒子をポリマーに付着させた磁気ポリマーもそこに入れた。



従来的には、MPを除去する方法として活性炭やベントナイト、プラスチック・フィルムなどを使うのだが、研究者たちは、IBMPが磁気と結合し、除去できるのではないかと考えたという。


Vesnaandjic-iStock


できあがったワインをガスクロマトグラフィーや質量分析法を用いて分析したところ、従来的なプラスチック・フィルムを使用した方法よりも、磁気ポリマーの方がIBMPを多く除去できたことが分かった。プラスチック・フィルムで除去できたIBMPは18%だったが、磁気ポリマーでは74%を除去できたのだ。



研究チームはさらに、大学内にいるワインのエキスパート8人を集め、できあがったワインを含む複数のカベルネ・ソーヴィニヨンのフレーバーについて、さまざまな観点から評価した。その結果、他のカベルネ・ソーヴィニヨンと比べ、磁気ポリマーを使用したワインは「ピーマン臭」、「葉っぱっぽい味」などの評価が著しく低かった。


将来的には他のワインでも


ジェフリー准教授はオーストラリアのニュースサイトNews.com.auに対し、ワイン製造工程でこの方法の使用が許可されるようになるにはまだまだ改善が必要だと説明したが、他の種類のワインにも適用できる可能性もある、と話している。MPは例えばソーヴィニヨン・ブランなどにも含まれるという。



准教授はまた、今回はカベルネ・ソーヴィニヨンに含まれる「ピーマン臭」を特に対象にしたが、山火事からの影響によるスモーク・テイント(煙による汚染)や、ブショネと呼ばれるコルク汚染など、ワインの香りを損なう原因となる物質は他にもあり、ポリマーを使ってこうした物質の除去もできるようになるはずだ、と期待を語った。



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松丸さとみ


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