新ドラマ『高嶺の花』石原さとみ相手役に抜擢! 峯田和伸、“役を素に引き寄せる”演者としての魅力

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2018年06月25日 10:32  リアルサウンド

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 6月18日月曜の夜、つけっぱなしのテレビに突然、石原さとみと一緒に峯田和伸が出てきて、「うわ、峯田が! 石原さとみと!」と、びっくりした。『しゃべくり007』(日本テレビ系)次週予告で、7月11日にスタートする野島伸司脚本のドラマ『高嶺の花』の主演ふたりが番宣でバラエティに出ます、という、ごくごく普通なことなのに。


 ただ、逆に言うと、これだけ映画やテレビドラマにひっぱりだこ、朝ドラも出たし来年は大河ドラマにも出る俳優になった今でも「石原さとみと並んでゴールデンの地上波に出てくると、どうしうようもなく違和感をまきちらす」というあたりが、やはり峯田だなあ、とも思う。


 たとえばこれ、同じくミュージシャン兼俳優のハマケン(浜野謙太)だったら、もはやそんなに違和感ないでしょ。俳優としてのキャリアのスタートは、峯田よりも全然あとなのに。ハマケン、確か、星野源主演・大根仁監督・原作せきしろの深夜ドラマ『去年ルノアールで』(テレビ東京系)に、星野くんと一緒に出たのが演技仕事の最初だったと思います。2007年。


 で。考えたら、俳優峯田和伸の仕事を、わりとちゃんと自分が観てきていることに気がついた。


 基本、俳優の仕事に関しては、峯田本人は、別に自ら進んでやりたいわけではない、オファーがあるからやっているだけだ、ということを、昔も今も公言している。事務所も同様みたいで、銀杏BOYZのオフィシャルサイト、「NEWS」のところで「映画に出ます」「ドラマに出ます」という告知はしているものの、これまでの出演作品をまとめたページすらない。作りなさいよ。いないよそんな俳優、これだけいっぱいでかい仕事していて。やむを得ず、映画・ドラマの全出演作を確かめるためにウィキペディアを見ました。


 峯田は映画『アイデン&ティティ』(2003年)が初出演作。もう15年になるのか、役者のキャリア。とりあえず、自分が観ていないのは、映画では『USB』(2009年)、ドラマでは『恋仲』(フジテレビ系/2015年)と『世にも奇妙な物語’17秋の特別編』(フジテレビ系/2017年)くらいだった(これを書いている6月21日時点で公開前・放送前のものを除きます)。


 あと、演劇の項目がないじゃないか、ウィキ。2014年の夏に三浦大輔作・演出の舞台『母に欲す』に、池松壮亮とのダブル主演で出ています。東京と大阪で公演があって、東京の、今はなきPARCO劇場に観に行きました。誰か足しといてください。


 俳優・峯田和伸の何がそんなに魅力的なのか、なんでこんなに求められるのか、については、これまでいろんな演出家や劇作家が語ったり書いたりしてきているが、とりあえず僕に関しては、最初に『アイデン&ティティ』の試写を観た時も、いちばん最近観た『素敵なダイナマイトスキャンダル』(2018年)でも、峯田の演技から受けるショックは、ずっと同じだ。


 普段の峯田にしか見えない。


 ということだ。と言ってもプライベートな付き合いがあるわけではないので、インタビューなどの時しか知らないが、その時の峯田と同じにしか思えないのだ、いついかなる役の時でも。


 『色即ぜねれいしょん』(2009年)で峯田と共演した(同じシーンには出ていなかったが)くるりの岸田繁も、観たら、びっくりするほど「普段の岸田」だったので、田口トモロヲ監督ってそういう演出がうまい人なのかな、と最初は思ったが、峯田、他の監督の作品でもそうだ。


 べつに同じような役ばかりやっているわけではないし、「これ峯田に近い人物造形だなあ」という役ばかりなわけでもない。『素敵なダイナマイトスキャンダル』の、主人公=末井昭(柄本佑)の心の友・近松さんなんて、もの静かで、穏やかで、もののわかった男だし。


 でもそこで「ああ、峯田、こういう役もできるんだ」というふうには見えないのだ。「峯田ってこういう奴でもあるよなあ」というふうに見えてしまうのだ、なぜか。というか、そもそも「峯田ってこういう奴」というふうに決めつけられるほど、峯田のことを知っているわけではない、僕は。にもかかわらず、そう思えてしまう。


 なんだろう、この「素が役に引き寄せられる」のではなく「役が素に引き寄せられる」感じは、と、作品のたびに思う。特にそれを痛感したのが『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(2010年)の主人公、田西敏行。素人童貞でダサくてあかぬけなくてみっともなくて不器用でまっすぐな田西というキャラクターは、一瞬峯田っぽく思えるけど全っ然違う、というのはファンなら一目瞭然だと思う。なのに、終始「峯田が走っている」「峯田が泣いている」「峯田がボコボコにされている」ようにしか見えなかった。


 とても不思議だと思う。で、その僕が感じているような不思議さと同じなのか違うのかはわからないが、そんなような、「これまでの役者には決してなかった感じ」に惹かれるから、いろんな演出家が峯田にオファーをかけるんじゃないか、とも思う。(文=兵庫慎司)


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