加藤シゲアキ、原作とは異なる“正義感”を発揮 『ゼロ 一獲千金ゲーム』人間ドラマの生々しさ

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2018年07月16日 12:42  リアルサウンド

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 日本テレビ7月期の日曜ドラマ『ゼロ 一獲千金ゲーム』が7月15日に始まった。原作は福本伸行の人気コミック『賭博覇王伝 零』(講談社『週刊少年マガジン』)だ。『カイジ』や『アカギ』などで有名な福本作品のひとつであり、ギャンブルゲームの仕掛けや謎解きのエンターテインメント性の高さが魅力である。


参考:小山慶一郎、増田貴久、手越祐也の過去を描く 『ゼロ 一攫千金ゲーム』スピンオフ、Huluで配信


 今作の主人公・宇海零を演じるのは加藤シゲアキ(NEWS)だ。加藤シゲアキはアイドルグループ・NEWSの活動の他、小説『ピンクとグレー』を2012年に発表して以降、小説家としても活躍している。主なドラマ出演作は『時をかける少女』(日本テレビ系)、『嫌われる勇気』(フジテレビ系)など。ゴールデン・プライム帯の連続ドラマでの主演は初となる。


 第1話では、原作との変更点に着目した。特に加藤演じる零は、そのキャラクター設定の変更だけでなくサバイバルゲームにかける情熱に違いが感じられた。


 原作の零は17歳の少年だ。頭脳明晰だが、どこか少年らしいあどけなさが残っている。印象的なのはその表情だ。自殺系サイトで知り合った3人の青年に「義賊」になることを持ち掛けるシーンでは、「どうせ死んじゃうならさ…その命…くれないかな…と思って」と彼らにヘラヘラと笑いかける。キレ者の表情と「ニコッ」という笑顔の対比が、どこか彼にただならぬ雰囲気を与えている。


 一方、加藤が演じるドラマ版の零は、非正規教員という設定に変更されている。義賊の設定に変更はないものの、原作のような少年らしさ、無邪気な雰囲気はない。ドラマ版では「義賊」としての信念、現代社会の中で苦しむ弱者たちを救いたいという「正義感」が強調されている。ゲームを勝ち抜くことへの情熱ではなく、「ゲームを勝ち進み社会的弱者を救う」という情熱が強調されているのだ。


 このサバイバルゲームにかける情熱の違いからか、ゲームの謎解きシーンにも原作と違いが生じている。原作の零は、謎解きを声に出して行う。そんな零の解説を聞き、他のゲーム参加者が感嘆の声をあげるのが印象的だ。一方ドラマ版では、その解説シーンが彼の1人語りに変更されている。ゲーム参加者たちが混乱に陥る中、たった1人で冷静沈着に謎解きを行なうのだ。『賭博覇王伝 零』に登場するサバイバルゲームはエンターテインメント性が高い。そのため零の自信ある表情を心待ちにしていた人にとっては物足りない演出かもしれない。しかしこの演出こそ、加藤演じるドラマ版・零の「正義感」を表しているのではないだろうか。その明晰な頭脳を、目の前のギャンブルに勝つことではなく、救うべき弱者たちのために使っているという表現に。


 原作との変更点は、零のキャラクター設定だけではない。原作では、このサバイバルゲームを取り仕切る役目を在全グループの幹部・後藤利根雄という男性が担うが、ドラマ版では小池栄子が在全グループの秘書・後藤峰子としてその役割を担う。小池栄子はコメントにて、「ゼロたちがゲームで右往左往する様子を高みから楽しんで眺める立場です。こういう役をいただいて、私も男性を転がす立場になったんだなと(笑)」と答えており、今後彼女の目力に圧倒されるゲーム参加者の姿が目に浮かぶ。(参考:間宮祥太朗、小関裕太、加藤諒ら出演 加藤シゲアキ主演『ゼロ 一獲千金ゲーム』追加キャスト発表)


 またドラマ版では、大金を目の前に翻弄される人間の性が強調されている。『賭博覇王伝 零』は1つのエピソードにかける話数が少ないのだが、そこで描かれなかった生々しい人間模様が、ドラマでは密に描かれている。第1話は30分拡大で放送されたこともあり、少々間延びした印象もあった。しかし今後は、役者陣の演技によって、大金や命をかけたゲームを目の前に冷静さを欠いていく、生々しい人間ドラマが展開されるのではないだろうか。(片山香帆)


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