【ブログ】めったに見られないホンダF1の前線基地『HRDミルトンキーンズ』を訪問

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2018年07月17日 14:21  AUTOSPORT web

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写真
今回、ムッシュ柴田氏がイギリスにあるホンダF1の拠点『HRDミルトンキーンズ』を訪問してきました。施設の中にはマクラーレン・ホンダ時代の名残も……。

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今回はホンダF1のヨーロッパ前線基地『HRDミルトンキーンズ』の内部を、特別公開しましょう。



シルバーストンサーキットまで、クルマで20分ちょっとという好立地。ミルトンキーンズ周辺には他にもレース関係の企業がそこかしこにあり、いわばイギリスのモータースポーツ産業の中心地です。ちなみにレッドブルのファクトリーも、偶然ですがここからすぐ。レッドブル・ホンダが誕生する来年からは、いっそう緊密にスタッフの行き来ができるわけです。



ホンダF1の日本における開発拠点HRDさくらまでは、5862マイル(約9400km)。物流が発達し、TV会議も頻繁に行われているとはいえ、ヨーロッパから日本はやっぱり遠い。だからこそ、このファクトリーの重要性がいっそう増すわけです。

正面玄関を入ってすぐのロビーには、ホンダF1の歴史を物語る数々の写真とともに、第3期のV8エンジンが展示されていました。



シリンダーブロックには誇らしげに、『メイド・イン・UK』の刻印が。生産はあくまで日本で、イギリスでは組み付けるだけだと思ってたんですが、そうじゃなかったんですね。知りませんでした。



去年までのマクラーレンとの3年間を思い起こさせるような展示は、さすがにないのかなとブラブラ歩いていると……。ひとつだけ、ありました!



当時のホンダ側の総責任者だった長谷川祐介エンジニアへの、マクラーレンからの寄せ書きです。

「親愛なるハセガワさん。マクラーレン・ホンダへのあなたの多大なる貢献に、大いなる感謝の意を表します。いっしょに仕事ができてとても楽しかったし、その思い出が消えることはないでしょう。あなたはマクラーレンの、終生の友です」

幸せな形で終えることはできませんでしたが、少なくともマクラーレンの現場エンジニアたちと長谷川さんとは、技術者同士の信頼関係で結ばれていたように思えます。

このファクトリーの主な役割は、ふたつあります。ひとつがパワーユニットをテストベンチにかけ、レース週末のコンディションにできるだけ近い形でのシミュレーションを行うこと。今回そのテストベンチ、見学はできましたが、残念ながら撮影禁止でした。




他にもファクトリー内は、立ち入り禁止区域多数。面積やスタッフ数も、秘密です。それを公表すると、研究開発の規模がライバルに推測されてしまうから、なんだそうな。その代わりといっては何ですが、内部にはホンダF1の歴史をうかがわせる、ちょっとした表示があちこちにありました。



会議室やオフィスには、ホンダF1エンジンの歴代の型式番号が付いてました。

田辺豊治テクニカルディレクターのオフィスです。



モニターにはホンダレーシングの公式サイトが映ってますが、普段の田辺さんがこんなものを見てるわけはありません。最初は何やら走行データみたいなのが表示されてたんですが、「あ、これマズイ」と、撮影用にこちらに切り替えたのでした(笑)。

そしてこのファクトリーのもうひとつの役割は、バッテリーパックの設計開発、生産までを一貫して行うことです。バッテリーは衝撃で爆発する危険があり、事前の厳しい検査を通す必要がある。それを日本でやっているとレースに間に合わない恐れがあるため、エンジン本体やMGU-H、MGU-Kなどと違って、バッテリーパックだけはここで作っているわけです。



その部門のリーダーである根来昌樹さんと福島忠広エンジニア。彼ら以外はほとんど、外国人技術者だということです。で、レース用バッテリーのスペシャリストというのは、世界中でも200〜300人ぐらいしかいないそうで、それをF1参戦中の4メーカーが取り合ってる状態なんだそうな。



ホンダも毎週のように新しい人材をリクルートしており、オフィスも次々につぎ足されて行ってます。この写真手前の青い仕切りだけのあるデスクも、この日に置かれたばかり。ここで明日から、新たな転職エンジニアが働くのです。

そんな彼らが昼過ぎに、どやどやと社員食堂に集まりました。ここだけ見ても、日本人スタッフの少なさがわかりますよね。




彼らの集まった理由は、



ピエール・ガスリーとブレンドン・ハートレーが訪問するから。F1ドライバーがここに来るのは、今回が初めてということでした。マクラーレン・ホンダ時代、誰も来なかったんですね……。



ふたりは挨拶もそこそこに、詰めかけたスタッフたちと和気あいあいとやり取りを始めました。エンジニアからはパワーユニットに関してかなり専門的な質問も飛び、「え、そんな話、部外者の僕が聞いていてもいいの?」というような貴重なコメントをふたりは返してました(あとからやっぱり、「ここでの話は、絶対書いちゃダメ」と言われました……)。

それにしてもこの二人、こういう席で軽妙かつ説得力のあるスピーチがさらっとできるのが、素直に凄いなと思いました。最後にはふたりのサイン入りキャップやTシャツの抽選会も開かれて、大盛り上がり。



レース現場で田辺さんの片腕として活躍中の本橋エンジニアも、Tシャツを射止めてご満悦でした。



そして最後は、皆で記念撮影。次にここに来る時は、『優勝記念の凱旋』だといいな〜。

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