華原朋美が持つ、「不安定さ」というスターの特性――彼女が引退をすべきではない理由

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2018年07月20日 00:03  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「私は私の幸せを考えたいな・・・華原朋美としてではなく」華原朋美
(華原朋美インスタグラム、7月15日)

 確固たる地位を築いた芸能人が、「芸能界を辞めたい」と漏らすことは時々ある。例えば、とんねるず・石橋貴明の妻である女優の鈴木保奈美は、“トレンディードラマの女王”と呼ばれていた頃、雑誌のインタビューで、繰り返し「スーパーと家の往復で幸せになれるタイプ」「辞めたい」と話していた。そして保奈美は、石橋との結婚で本当に芸能界を引退してしまう。あれだけの売れっ子でありながら、大々的な引退興行は行わないまま引退しただけに、「無理やり辞めた」印象が残った。

 3人の子どもを出産、育児に専念していた保奈美だが、10年後に再び芸能活動を開始している。保奈美だけでなく、引退を表明した芸能人が臆面もなく戻ってくることは多い。なんのかんの言っても、芸能人というのは「人に見られないと死んでしまう病気」に近いものにかかっているからではないだろうか。

 芸能人の誰もが、見られたい、前に出たいと思うからこそ、諍いが起きる。精神的なストレスも相当なもので、神経の細い人に向かない職業とも言える。が、不安定な人だけが持つ華も、人々を魅了すると思う。例えば、『スター誕生!』(日本テレビ系)史上、最高得点で合格した中森明菜。3枚目のシングル「セカンド・ラブ」でオリコン1位を獲得するなど、トップアイドルとして上り詰め、デビュー前からファンだったという近藤真彦と交際を始めるも、関係がこじれて自殺を図る。ここから長い低迷が始まるのだ。

 明菜の旬は、デビューした1982年から89年、テレビに出まくっていたおおよそ7年間。その後、テレビで姿を見ることも少なくなり、新曲も定期的に発売されることはなくなって現在に至る。数字だけで言えば、歌手として沈黙している時間の方が長いのに、ファンは愛想を尽かさない。明菜がディナーショーを開くとチケットはすぐに売り切れるというのが、その証拠だ。不安定さや不器用さで愛されるのもスターの証拠である。

 華原も明菜と同じく、不安定さやダメさが魅力の芸能人ではないだろうか。深夜番組ではしゃいでいたB級アイドルが、時代の寵児的な大物プロデューサー・小室哲哉に見初められ、トップアイドルへ。しかし、いい時は長く続かず、小室の心変わりによりポイ捨てされたといわれている。自殺未遂、薬物依存など絵に描いたような転落を経験し、2009年に事務所を解雇。番組名は失念してしまったが、華原がボイトレと称して、カラオケボックスで一人練習する姿はまるで素人のようで、全盛期を知る身としては切なかった。

 しかし12年、華原は事務所と再契約して、ライブを開けることになり、その様子を『NEWS ZERO』(日本テレビ系)が密着していた。会場に足を運ぶのは、往年のファンはもちろん、“ご新規さん”も結構な数含まれていたという。そのうちの1人である女性は、「自分も華原さんと同じ年で、就職難とかいろいろ経験してつらい思いをしたので、応援したくなった」などと話していた。華原の姿や歌声を自らの人生と重ね合わせたということだろう。その女性は、不安定な華原を否定しないし、不安定さを直してほしいとも思っていないようだったし、華原を応援することで、自分を励ましているようにも感じられた。明菜も華原も、活動が安定しないという意味でファンを裏切っている。しかし、ファンはそのあたりを織り込み済みなような気がする。裏切りが最大の絆になる。これもスターの特性だろう。

 音楽業界全体が厳しいので、その活躍ぶりは全盛期とは比べようがないものの、華原は全国ツアーができるまでに復活を果たした。めでたしめでたしと言いたいところだが、そこで“裏切り”を忘れないのが、またスターらしい。「フライデー」(講談社)が、華原の不倫疑惑を報じたのだ。相手は、30歳年上の一部上場企業会長で、華原のコンサートのスポンサーも務める人物。妻帯者なので、恋愛関係であれば不倫にあたる。

 相手が70代男性ということもあって、盛り上がることはなかったが(これが30代の妻子あるイケメン俳優が相手だったら、大バッシングされたことだろう)、華原はインスタグラムに意味深なメッセージを寄せた。スタッフやファンに支えてもらい、応援してもらい、幸せだと書いた上で、「でも・・・そろそろ・・・私は私の幸せを考えたいな・・・華原朋美としてではなく」と結んだのだ。芸能界引退を暗示していると解釈することもできるこの発言の後、華原がTwitter、インスタグラムなど自身が持っているSNSを閉鎖することを発表。活動休止、もしくは引退説が濃厚になってきた。

 “華原朋美が華原朋美を辞める”、つまり芸能界を引退して一般人になるということだが、無理だと私は思う。冒頭で述べた通り、芸能人は「人に見られないと死んでしまう病気」にかかっているように思うからだ。華原の言う「私の幸せ」が何を指すかわからないが、死ぬよりつらいであろうどん底を味わいながらも、芸能界と縁が切れないところに、華原の芸能界との相性の良さを感じるのだ。

 本人は気づいていないだろうが、不倫相手とされた会社会長が、華原を“応援”してくれたのだって、彼女が芸能人だから。社長が華原のスポンサーとなったのは、転落した歌姫を救うタニマチ的な行為にプライドをくすぐられた可能性はある。何が言いたいかというと、芸能人は芸能人であることを辞められないのだから、自分から引退など言い出さない方がいいと、私は思うのだ。

 ミリオンセラーを飛ばさなくてもいい、テレビでいつまでも未練がましく元カレの話をしていてもいい。ヤバくなったら、休んでもいい。華原の芸能人としての仕事とは、不安定を隠さず、歌い続けること。健康的に病む姿をファンに見せてほしい。壊れそうで壊れない、華原の繊細さや意外な強さが、彼女の最大の魅力なのだから。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

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