年度途中で辞めても「有給休暇」は全部もらえる 会社を一蹴したツイッター民が話題

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2018年07月22日 10:12  弁護士ドットコム

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年度途中で退職した場合、年次有給休暇(有休)は何日付与されるのでしょうか。この論点をめぐり、7月11日にあるツイートが話題になりました。


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投稿者のむぎ(@MUGI1208)さんは、この8月で会社を退職します。そのことで、このほど上司と有休について相談をすることになりました。


その場で、上司から提示されたのは、有休の「按分」でした。むぎさんには、今年4月に20日分の有休が付与されていましたが、「年度の途中で退職するのだから、8日分しか認めない」と言うのです。


これに対し、むぎさんは、「会社の希望に過ぎない」と一蹴。だったら、今までに消滅した有休分も休むと応酬しました。やり取りを報告するツイートは4000回以上RTされ、胸のすくような切り返しに賞賛が集まっています。



上司と退職前の年休交渉をしました。「今年度分は4月に20日付与されたけど退職が8月なので、按分すると取れる日数は8日だね」と言われたので、「それは労基法とか社則に書かれてなかったので、あくまで前例で会社としての希望ですよね。それを言ったら今まで消えていった有休分休みます」と言いました


— むぎ (@MUGI1208) 2018年7月11日
●途中で辞めようが、もらった有休はもらった分だけ使う権利がある

法律的には、むぎさんが主張する通り、有休の按分は認められません。もしも、むぎさんのような状況になったら、どんな根拠で会社に反論したら良いのでしょうか。大久保修一弁護士は次のように解説します。


「有休は、労働基準法39条に定められている労働者の権利です。使用者は、(1)6カ月間継続して在籍していて、(2)契約上、出勤しなければならない日のうち8割以上を出勤した労働者には、10日(勤続年数に応じて最大20日間)の有休を与えなければなりません。


この『有休を与えなければならない』というのは、労働者が有休を使うことを妨害してはいけないという法律上の義務を、使用者が負うことを意味しています(国鉄郡山工場賃金請求事件・最判昭和48・3・2、全林野白石営林署未払賃金請求事件・最判昭和48・3・2)。



むぎさんのケースでは、今年の4月には20日分の有休を使う権利が、法律上付与されているということだと考えられます。


『年度の途中で退職するのだから、8日分しか認めない』という主張は、むぎさんが20日分の有休を使うことを妨害することに他なりません。これは、会社が守るべき法律上の義務に違反する違法行為です」


●残った有休もちゃんと使える根拠がある

労働基準法という法的根拠があるので、仮に会社の就業規則等に記載があっても按分はできません。しかし、有休があっても退職までに使えないと意味がありません。この点はどうでしょうか。


「有休の趣旨は、休憩や休日とは別に一定期間の余暇を保障することで、労働者の健康や家族・友人との豊かな生活を確保することにあります。在職中に適宜、自由に有休を利用させることが大切なのです。


先ほども述べたように、会社は要件を満たした労働者には、有休を与える義務があります。労働者が残っている有休を退職前にまとめて消化しようとしても、会社はこれを拒否することはできません」(大久保弁護士)


会社からすれば、途中退職する従業員に1年分の有休を付与することは不満かも知れませんが、その発想がそもそも間違っているということです。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
大久保 修一(おおくぼ・しゅういち)弁護士
2014年弁護士登録(第二東京弁護士会)。旬報法律事務所所属(弁護士27名)。ブラック企業被害対策弁護団副事務局長。日本労働弁護団東京支部事務局。著書に「まんがでゼロからわかる ブラック企業とのたたかい方」(共著佐々木亮、まんが重松延寿、旬報社)がある。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/labor


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