ホーム > mixiニュース > コラム > 北原みのり「男の下駄、もう黙りたくない」

北原みのり「男の下駄、もう黙りたくない」

38

2018年08月11日 16:02  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は、日本社会にはびこる「男の下駄」について。

*  *  *
 東京医科大学が数年にわたり女子受験生の点数を一律に減点していた。報道によれば「女子は3割以内におさえるべき」という方針で、その理由は「女性は離職する率が高いから」とのことだった。どうせ辞めちゃうのだったら、そもそも育てない、ということだ。関係者は「必要悪」だと言ったという。

 このニュースを聞いたのは、友人数人と朝ご飯を食べているとき。牛乳がしっかり染みてなくて残念だわ、と文句を言いながらフレンチトーストを食べてる友人が「そうそう、このニュースが酷い」とスマホを見せてくれた。口に入れていた卵サンドの味が消えた。女性の点数に0.8、または0.9をかけて計算という生々しい証言に、周りの音が消えた。数秒おいて、私たちは一斉に怒りだした。

「来るところまできた」「実害出てる、賠償しろよ」「そもそも男に下駄履かせすぎなんだ」「女性の人生を、なんだと思ってる?」「狂ってる!!!!!」。怒りは尽きず、怒りを出せば悲しさが溢れてきて、こんな悔しさをいつまで女に強いるのかと悔しくて。そしてひとしきり怒った後に私たちは、はっきりと思う。「東医大だけじゃないよね」と。

 うすうす気がついていた。いや、はっきりと聞いたこともある。医大ではなく普通の会社の「入社試験の点数だけだと女が多くなるから男女同点なら男を採る」という理屈。女は激務に耐えられないし、子ども産むし、辞めちゃうし、と。医療の現場も一般企業の現場も、ジェンダー意識は変わらない。それは男性に高い下駄を履かせて守り、女性の人生をないがしろにする。下駄の高さも「実力のうち」だと、女の声を封じながら。

 東京医大の報道後、ネットでは「激務は女性には耐えられない」と「医大側にも一理ある」という声があがっているが、「だったら働き方を見直せばいい」というシンプルな反論一つで十分だ。それができない経営側の能力不足を、医師免許を目標に勉強してきた若い女性たちに負わせる発想がまかり通ってしまうことがおぞましい。だいたい、同じ職場の看護師の激務はどう考えるのだろう。「女性はすぐ辞めるから」と、看護師の男性率を調整するだろうか。

 ただ意外だったのは、医師の友人が「ずっとやってきた公然の秘密だよ。医学は激しい勢いで進歩するから、子育てなどでキャリアを中断する女性医師は復帰できない。だから東医大にも一理ある」と言ったことだった。驚いて「男性医師全員が医学の進歩についていってるとは思えないけど、っていうか先日もやぶ医者に遭遇したわよ! 治療しながらも寝てるか起きてるかわかんない爺先生だったよ!」と叫ぶと、はっとしたように「ああ、医療現場の人間が、そういう理屈で現実を理解しようとしてただけだね」と言ってくれた。

 内側にいればいるほど、内側の理屈でうまれる暴力も差別も狂も見えにくくなるのかもしれない。日本社会の「男女平等」は、男の下駄と女の沈黙で成立している。もう黙りたくない。

※週刊朝日  2018年8月17-24日合併号

【おすすめ記事】【医学部別合格率ランキング】東京医科大「医師国家試験」欠席者が目立つ理由


このニュースに関するつぶやき

  • エロ玩具売りの婆がなんか喚き散らしてますがw松沢病院に誰かぶち込んであげてくれませんかねw
    • イイネ!2
    • コメント 0件
  • あんたが首突っ込むと余計にややこしくなるからやめてくれ 感情論でかき乱してくれるな(=-_-)
    • イイネ!30
    • コメント 7件

つぶやき一覧へ(28件)

あなたにおすすめ

前日のランキングへ

ニュース設定